
一人で叫ぶ彼女に対しての祈りの叫び。
結城七夜です。
毎日のように暑い日々が続いております、如何にお過ごしでしょうか?
オレ? いやいや、言うほどではありませんよ。…………部屋にこもって、小説を打つ生活ですよ。外に出るのはもっぱら散歩か、学校に行く為ぐらいですよ。
いやね、夏になるとどうにも小説が進む病が発症するんですよ。自分夏と相性良いみたいで、快適空間で、小説を打っております。進みは良いです、本当に。
この前だって、『ALIVE CODE』がまさかこんなに早く0.5が完成するとは思わなかったんですよ! まぁ、1.0以降は、ちょっと今書けないんですけどね! コラボである以上、色々とあるのでまだ次の方は書いていません。
……それはそうと、またハヤテの小説を更新しまして、このサイトを視てくださっている方には、え? と思う方も多いと思います。
「オリジナル中心のこの男が……二日連続でハヤテの小説を打つだと……?」
と、思っている方が多いと思いますが、何せ、アンケートでこれが一位でしたからね、やらないわけにはいきませんよ。頑張って執筆して、今日のうちに何とか一日の更新分を書く事が出来ましたよ。
まぁオリジナル片手間でしたけどね、こればっかりは譲れない。まだ終わっていない他様への小説もあるわけですし、それに、改訂版『ALICE』も、もうそろっと更新しないと……音沙汰なしでもう三カ月以上経過しているわけですから。がんばって打っていますけど、終わりそうな小説があるのでそれが優先。
……そして、ようやく上の画像の話をします。
TYPE-MOONエースが発売になったので、学校の空いている時間に本屋に行って買ってきました。
いやね!! タペストリーがすごすぎて、今部屋に飾っています! 有珠可愛いよ、有珠! 七夜は全力で有珠を応援します!!
本当に有珠は自分のツボをついてくる、本当に一目ぼれのキャラですよ。有珠の事を知りたい方は、TYPE-MOONエース、買ってね!(なにそれ宣伝?
内容としてもいつもと同じように面白いマンガとか……性転換とか性転換とかあって本当に面白かった。読んでいる間は外部の音が全く気にならなかったと云うか、無音に聞こえました。
九月三十日に魔法使いの夜は発売だそうです。本当に楽しみです。
さて、……………今日は、昨日上げ損ねた『リルぷりっ』小説が存在しています。
製作秘話と云うか、まぁ、先週だったような、先々週だったような、俳句の話がありまして、色々と考えた結果―――俳句と言ったらかぐや姫、かぐや姫と言ったら名月、名月と言ったらリョク×名月と云う、マジカルバナナ的な現象が起こりまして、急遽書きあげたものです。
それを今日はあげます。
それでは、続きから。
藤森家はもはや三人の少女と三匹の魔ペットのたまり場である。勿論、藤森家の人間すべてがそれを受け入れているからこそ、三人とも気軽にこの家に立ち寄るのである。両親が忙しい為に、満足に子供の相手をする事が出来ない為に、逆に毎日のように少女の友人が家に来るのはありがたいとも思っていた。
今日は休日。学校に行かなくても良い二十四時間フリーの日である。午前中と午後、色々とあり過ぎて体中が披露して、三人―――藤森りんご、高城レイラ、笹原名月は、りんごの部屋で横になっていた。
迷惑な話――と云う訳ではなく、ただ、彼女たちに仕える魔ペットの一人、小鳥のセイが恋をしてその為に様々な場所を歩きまわり、走り、踊り、と腰が痛い状態になっているのだ。汗だらけで、シャワーを浴びたいところだ。
しばらくすると、一階から店の手が開いているときを見計らって、りんごの母親が顔を出し、頼んでおいた風呂が沸いたとの言葉を受け取る。礼だけを述べて体を起こす。
「服とかどうしよう?」
脱衣場でふとレイラが口にする。
「……リルぷりっに変身して―――――は、ダメよね」
名月の提案に、脱衣所の外で待機しているリョクが大きな声で駄目だ! と叫んでいる。
「その辺は私のモノを貸すけど……下着はちょっと……」
「だよね」
「うん。じゃあ下着はそのままで、服だけ借りようかな」
「明日返してくれれば良いから――――セイちゃん、良いよー」
バスタオルで体を巻いたりんごが声を出すと、セイとダイが入ってきて、名月が、え、と声を上げる。
「皆で入ろーよ」
『えーーーーーーーーーーーーーっ!』
名月とリョクが絶妙のタイミングでシンクロして声をあげた。レイラは知っている事から、自分たち二人にだけ――片方は一匹だが――話が聞かされていなかったようだ。まったく肝心な所を言わない二人だとはわかっている事なのだが、十中八九、りんごがレイラに話すように言って、レイラが持ち前の忘れっぽさを発動したのだろう。
横目で、カーテンの向こう側を見つめると、いつまでもそこで立ったままで居るリョクの影が見える。カーテン越しの為にそれは仕方のない事なのだが。
二人は既に二匹を連れて風呂場まで入っており自分たちだけが入っていない状況だ。――と、いつまでもこうしている訳にはいかない。時期はもう初夏に差しかかろうとしているが、いつまでもバスタオル一枚だけで脱衣所に居る訳にもいかない。
……しかたがない。昨日今日でまた喧嘩する姿を皆に見せる訳にもいかない上に、そうしてまた心配を掛けるのもあまりにも酷な為に、名月はそのままカーテンを開いてリョクの小さな躯体を抱きかかえて、歩く。
「お、おぃぃぃぃぃいッ! 放せェッ!」
抵抗するリョクをそのままに、無言で、頬を朱に染めながら風呂場に入ると、二人が手を振る。
風呂の構造は簡単で、普通の薄い黄色いボードの床と天井、壁に囲まれている四角の空間に、一般大の湯船が存在している。大人が入るにはいささか狭いと感じるかもしれないが、小学生の少女三人が入るには丁度良い大きさかもしれない。
名月がタオルを取って中に入ると、流石に水は零れる。何せ三人に加えて魔ペット三匹だ。零れなければそれはそれでおかしい。
未だに抵抗するリョクを無理やり湯船に浸かせると、ようやく大人しくなったと安堵する。風呂の中で暴れられてはたまらない。それもわかっているのだろう。
三人とも湯船に肩まで浸かるとその温かさに体中の気分が良くなり、血行促進――言葉を失い、ただ三人とも風呂に浸かる気持ちよさに浸り、それは二匹の魔ペットも同じ事であった。
ただ一匹、リョクを除いては。
〝…………うぉぉぉぉおおおおおおおおおおおお…………っ!
拙い。いろんな意味で拙い〟
少し視線を下げると、そこには三人の少女の裸体が存在しているのであり、まったく気にしていない二匹の心中が知れない。加えて、この風呂は少し熱過ぎる。つまり二重の意味でリョクは相当参っていたと云う訳だ。
自らが尊敬するかぐや姫の生まれ変わり―――かもしれない―――少女がそこに居ると云うだけで参っているのだが、さらにこれは刺激が強過ぎる。思わず、本物のかぐや姫の姿と並べて考えてしまう。
月の世界にも当然入浴と云う習慣は存在している。人間の手によって作られた物語上、人間の習慣に沿って物語が進行するのは当然の事である。おとぎの国の、かぐや姫の世界―――つまり月の世界での入浴の習慣は楽しみの習慣でもあり、さらには気の抜けない習慣でもあった。
美しい人間のみが集う、月の都である。それを覗こうとする輩も多く存在していた。かぐや姫に仕える龍族は、覗きの輩を追い出す役目を入浴中は持っていた。全てが終わった後に、龍族が今度は入浴するのであるが……
「……」
「リョク?」
異変に気づいた名月が、顔を赤くして呆けているリョクを叩く。
―――龍族の弱点は、酒と風呂。つまり、〝熱さ・暑さ〟に弱いのだ。風呂に入る時は、基本水浴び程度で終わらせてしまうのである。かぐや姫にとがめられた時は、『龍珠』を使用して水を避けていたものだ……―――
「わ、忘れて居りましたぞ!」
頭に小さな手ぬぐいを乗っけていたセイが叫ぶと、レイラの腕の中に居たダイが泳いでリョクの場所まで行く。
「り、龍族であるリョクは熱いのが苦手で、特に風呂は……ッ! 拙いのです!」
抱えられて、沈みかけていたリョクは、セイとダイによって引き上げられる。……そんな豆知識知らない、と言わんばかりに、呆然とその光景を眺めていたのであるが、すぐに我に返って、三人はリョクを引き上げる。
☸
ある時、再び地上に降りる事を許されたかぐや姫は、龍の背中に乗り、久しぶりの地上へと降り立った。……あの時、爺婆に着せられた服を着て、町へと訪れた。リョクはその際、龍の姿から人の『化身』へと変わった。
しかし、その世界は全く変わっていた。自分が月の世界に戻っている間に、下界では数百年の時が経っていたのである。不老不死の薬を渡していたと云うのに、彼らは死に、世の中は江戸へと移り変わっていたのである。
―――どうして、目の前に永遠の薬があったと云うのに彼らは不老不死の薬を飲まずに死を選んだのか―――理解出来なかった。誰しも死が怖いと云うのに、どうして、どうして―――
不老不死の薬は、町の伝説によると「不死山」に落とされたらしい。気になって、龍の背中に再び乗り、その場所へと向かってみた。
視ると、そこには、溶岩が溢れており、熱い。灼熱のこの地獄では龍族は生存する事が出来ない為に、その場を後にした。それに、あれだけの熱さを誇っているのなら不老不死の薬も、跡形もなく消滅しているかもしれない。あれは、聖なる力をまとわせてはいなかった。
その夜、自らを育ててくれた老爺、老婆に対しての思いを、自らの都―――月を視て詠う。
『移ろう「時」―――心を過去に―――置いてきた』
静かにそのような言葉を放った。たまらなくなって、その言葉について問うてみた。
「……下界で流行っている、詩と呼ばれるものだそうよ。心を、詩に乗せて呟いてみる。まだ、下手くそですけど……」
「いえ、素晴らしい詩でした――――では、私めも……」
龍は一つ、息を吸い込んで―――
『届かぬか―――月より澄んだ―――この想い―――』
静かに、不死山に響く、遠来の様な声の響きは、過去に忘れてきた想いを呼び起こさせる。出来れば、あのままの生活を、二人の育て親と共に過ごす平穏な日々を、あのまま続けていたかったと思う。
「……大丈夫です……何度も言いましたではありませんか―――」
――――あなたの美しさは、月すら嫉妬する……―――
☸
目を開けると、そこは先まで視ていた空間ではなかった。
焼けるような感覚が体中を襲っている。頭に熱がのぼっており、息も熱い。これからの季節で一番嫌な感覚…………熱さは今日一日の出来事を走馬灯のように振り返らせた。セイの為に走りまわって、使いたくもない頭を使い、詩を考えて……それが報われるかどうかは、明日わかる事だが、まぁ、無理だろう。
―――今日一日の出来事と共に、別の事も思い出した気がした。龍は転生する。子供となった自分が転生する前の話―――かぐや姫がまだ名月になっていなかった頃の、御伽噺の世界での出来事。
詩を作った。あの時。彼女に伝える想い―――それを思い出した今、無性に月が視たくなった。
目を擦って布団から出ると、ここは藤森家ではなく、笹原家の、名月の部屋だと云う事に気づく。ベッドを抜けて後ろを振り向くと、あどけない寝顔の名月が居た。
ため息を吐いて背中を向けて扉を障子の扉を開くと、木造りの廊下に出る。庭に置かれている庭石の上に乗ると、腰を掛ける。……曇っており、月は視えないが、問題ない。隙間から光だけが視える。
御伽噺の国では、月の輝きは、月の世界での繁栄の証と言われているが、この現実の世界では太陽の光が反射して、視えているとなっている。当然、月に世界など存在しておらず、真空空間が広がって人など宇宙服なしでは生きていけない死の世界だ。
昔の詩人は、輝く月を視て繁栄している世界となぞった。上手いものだ。自分が暮らしていた月の世界は、真空空間などではなく、確かに、昔の詩人が読んだように繁栄した世界だった。金品が溢れ、毎日楽しく過ごし―――時には、下界に行き、人間の生活を楽しむ。龍は踊り、女神を喜ばせる。
ああ、何て………………キレイな世界なのだろうか…………
この世界とは違う。今の御伽噺の国とも違う。そこには、今では滅亡してしまった別の物語が存在しているのである。消えてしまって、二度と戻らない世界が存在しているのである。思うと……儚いからこそ、人が夢視るのかもしれない。ひと時の、憧れとして。
『移ろう「時」―――心を過去に―――置いてきた』
……突然の後ろからの言葉に、肩がはねた。ついさっき、聞いた事のある言葉を再び聞いたのである。
振り向くと、そこには眠っていたはずの名月が寝巻姿で立っていた。
「お前、寝てたんじゃないのかよ」
「うーん…………目が覚めちゃって。変な夢も視ちゃったし」
「変な夢? もしかして、かぐや姫の夢か?」
「うん、そうだけど。良くわかったね、リョク」
「――――俺も視たから―――昔の夢―――」
「昔って、かぐや姫と一緒の夢?」
無言で頷く。途端、上を視ると、月が雲から端だけを出した。街頭の光が届かない家の庭には、月の光だけが差し込んで、二人を照らしている。
「詩、歌っていたね」
「そうだな」
「……とっても、恥ずかしいけど素直な詩だったね」
「……そうだな」
名月も廊下の端に座って、上を視上げると、そこには、大きな満月があった。端だけではなく、遂にその全ての姿を現したのである。地上に住んでいる、主の生まれ変わりに向かっての敬意だろうか? リョクは苦笑する。
「ねぇ、リョク……」
「ん?」
「……今の私に対して、詩ってみてよ」
拒否する訳でもなく、しばらく考えた後に、言葉を発した。
『まだ餓鬼だ―――かぐや姫様には―――及ばない!』
「むかーっ!」
『……ヒメチェンした……名月の姿は………………麗しい……』
怒りも、今の言葉でおさまった。自分自身でも、驚くほど素直に、怒りが消えていったのである。
逆に顔を赤くして、月を眺めたままこちらを向こうとしない彼の方は、動けないでいた。
―――素直じゃない、な。
名月は微笑しながら、立ったままのリョクを持ち上げて、部屋に戻る。
「いつか絶対に、追いついてやるんだから!」
…………さて、その時は一体いつになるのか…………
/ 了
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