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絶望への共鳴 // ERROR

深層心理へのアクセス。結城七夜の日々。徒然日記。 裏; http:// lylyrosen. xxxxxxxx. jp/ frame/ water. html

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IF DREAMS CAME TRUE // girl ' s butler 24






これはハヤテが歩んだもう一つの『IF』の物語――の、執事編。












 
 
 走らせる筆は、何時もより軽快ではある。理由は不明であるが、何か、何時もと違う環境の中で居ると云うのは気分が少し良い時もあるのである。――ヒナギクにとっては、今日は何時もと少し違い、そして何か気分を良くする要因でもあったのであろう。
 今日、学校に居て何時もと違う事は一つ、綾崎ハヤテが存在している事である。無意識の内に、頬が緩んでいたのである。
 無論、理由は不明であるが、あの少年が同じ学校に居ると云う事情に、何か、安心感に似た何かを感じているのである。今まで、あの少年と共に家に居た時は全く感じない。只、学校に共に居るだけだと云うのに、何かを感じるのである。
 このままの状態だと、鼻歌でも歌って授業を受ける様な気分なのであるが、流石にそうは行かない。授業は真面目に受ける。この学校の授業と云うモノは、やるべき事全てに意味があるのである。これからの人生、一度も使う事が無いとしても、小さな事を知っている事と、知らない事では全く違うのである。
 そう考えると、勉学をすると云う事は満更でもない、と思っている。世の中に勉学を苦手とする理由の一つは、大体はネガティブな思考をさせる様な教え方や、勉学と云う物のはっきりとした意義、そして楽しさを教えていない事にある。
 ――此の世は、ゲーム等の娯楽の楽しさを教えて、勉学と云う、知ると云う事柄の楽しさを教えていないと云う事が非常に嘆かわしい事である。それが現状なのである、忌々しき事態である。これが日本の水準を下げているのであれば、直ぐに変えるべきである。喩え、もう遅いといえども、努力はしなければならないのである。
 桂ヒナギクとは、勉学の楽しさと必要性、両方を知っている数少ない人物なのであろう。故に、成績も、そして人格の構成も良く出来ているのである。この育て方は、彼女の姉である桂雪路を褒めるべきか、それとも引き取ってくれた義母を褒めるべきか……
 現在、目の前で授業をしている人物は、先程まで共に居た泉のクラス担任であり、そしてヒナギクの姉でもある雪路その人である。何時もの時は、だらしなく、酒にのみ金銭を使うと云う余り宜しくない状況の彼女であるが、授業となれば違う。如何にすれば、生徒達に解り易く、且つ、楽しく授業を受けられるか、と云う思考をしているのである。
 その結果が、様々な人気を呼んでいるのであるが……如何せん、性格に問題がある為に、男性受けは余り良くは無い。尊敬出来るか、と云う問いに対しても、頷く事は先ず躊躇うであろう。その様な人物である。
 しかし、解り易い事に変わりは無い。授業は通常よりも速いペースで進む。
「――んじゃまー、早いけど終りねー」
 チャイムがなる、十分前には、既に授業は終わっており、出ては行けない教室を出る生徒も見られたが、流石にそこまで五月蝿く注意はしない。生徒会長とはいえども、この学院の生徒である。それなりの信頼関係が必要なのである。加えて、廊下で走って、五月蝿くする訳でもないのである。
 教科書を仕舞い、ノートも閉じて、垂れている髪を上にかき上げる。まだ一限目が終わったばかりである。時刻はまだ九時五十分を挿している。これから十分の後に、再び二限目の授業が始まるのである。
 ふぅ、と一つ溜息を吐く。
 ――ハヤテは一体何をしているであろうか? 授業の邪魔をしなければ、この校内を見て回っていても問題ないと言っていたので、校内を回っているのであろうか。それとも、生徒会室でゆっくりとしているのか……
 しかし、今気にした所で確認のしようがない。この場所から時計塔の中に存在している生徒会室を眺める事は出来ない上に、喩え先程の話が、前者だとしても、此処から眺められるのは、グラウンドの様子だけである。何時の間にか増築されているドームの周りを、体育であろうか、生徒達がアップの為に走っている。
「ヒーナちゃん」
 後ろから、声を掛けられた。誰だかは解っている、泉だ。呆と、外を眺めていた視線を離し、話し掛けて来た泉の方に視線を向ける。
「あら、ちゃんと授業には出たの?」
「ちゃーんと出たよぉ。虎鉄君に念を押されたからねー、にゃははー」
 なら良し、ヒナギクは微笑する。どうも自らの友人は、成績が余り宜しくない上に、この様にさぼり癖と云う物が存在しているので困っているのである。教師の間でも、泉、そして残りの二人に関する成績の問題を言われているのである。一番近くに居て、話が解る存在が生徒会長である自らしか居ないと言うのである。
 その為に、去年の夏頃から、その三人に関しては補修、解らない所の質問を答えるなどと云う特別授業を行なっていたのであるが、全く成績が上がる気配が無い。――尚、その様な補修を行なった夏休み後の成績は、その三人は下から三つを独占していたとは、雪路より聞いていた。
 そんな前科がある為に、泉が授業に出る事を確認しなければならないのである。
「……それで? 何か用なわけ? 此処に、しかも十分休み来たって事は、何かあるんでしょう?」
 その問いに、うん、と泉がそのままの表情で答えた。
「あのねー、美希ちゃんもリサちんも授業に来なかったよー」
 ……成る程、泉に頼んでおいて正解だったといえる。先程別れる際に、同じクラスであるその二人が授業に出るかどうかを見る様に頼んでおいたのである。それが正解だったのであろう、見事にその二人は、授業には現れなかったと云う事である。
 先程吐いた安堵の溜息は、今では呆れ半分の溜息となっている。本当に落第してしまうのではないのだろうか?
「……解ったわ。あの二人には、ちゃんと私から言っておくから、貴女はちゃんと授業に出るのよ?」
「にゃははー、りょーかィー」
 敬礼をして返す泉に、若干の不安もあったが、一限に出たのである、大丈夫であろう。あの二人と違い、何気なく、あの泉と云う少女は素直なのである。
 さて、教室から出た泉の背中が見えなくなった頃、ヒナギクはもう一度だけ、溜息を吐く。あの二人は本当に如何し様も無い。と言って今直ぐ探しに行く事は出来ない。先も述べた様に、まだ一限目が終わったばかりなのである。自由に出来る長い休み時間は、昼休みのみである。
 仕方が無い、ヒナギクはそう心で呟き、今始まろうとしている授業の準備を整える。
 
 
          ×          ×
 
 
 数日前、まだ年が越していない、クリスマスから数日の日の話である。一人の少女が誘拐されて、巨額の身代金を要求された。そして、その後の状況や、様々な事柄からにより、自らが片脚を入れてしまい、結局、助けたと云う形になってしまった事件である。
 その後の事は訊いてはいなかった。あの様な事に、もう一度脚を突っ込みたくはなかったと云う事もあったが、それ以上に、誘拐された身として相当のショックがあると思い、それ以降は何も言わなかったのである。
 後の話も、友人からの告白、他にも学院での出来事が色々と重なり、結局その少女とは会う事も無かったのである。家は、おぼろげに場所は解っていたのであるが、理由が理由なだけに、そのまま行く事もなかったのである。
 その少女が今目の前に存在しているのである――学院に通いたくないか? と云う問いと共に……
 最初は本当に何の事かは解らなかったが、今も流れている静寂の中で、色々と整理する内に、事の次第を理解した。
 つまり、目の前の少女は、自らにもう一度学院に通うチャンスを与えようとしているのである。もう二度と、通う事も無いと覚悟を決めていたその場所に、帰そうとしているのである。
 喉を鳴らして、唾を飲む。
「……えーと……」
「あれから考えたんだ。学校も行かないで考えたんだぞ」
「は、はぁ……」
 それはどうかと思ったのであるが、今はそれに対して意見を言う様な状況ではなかった為に、何も言わずに聞き流した。
「だから、私は、お前に学校に通ってもらおうと思ったっ。お前は、私の命を救ってくれたからな!」
 腰に手を当ててその様な事を宣言している三千院ナギに関して、色々と言いたい事があったのであるが、兎に角言いたい事が一つだけあった。
「――僕は別に、そんな凄い事をした訳じゃありませんよ……」
「何を言っているのだっ。お前は私を助けてくれたではないか。それに、ヒナギクだって……」
「確かにそうですけど、その中でピンチだった僕を助けてくれた、フォークの人を一番表彰するべきだと思いますけど……」
 その言葉に対して、先程までの微笑交じりの顔を、少し変えた。
「私がお礼をしたいと言っているのだ。人の好意を踏み躙る様な行為をするなよ」
「――はぁ……」
 一歩後ろに下がって、苦笑した。するとナギもまた笑顔になって、言葉を繋げる。
「――でな、色々と考えたんだけどな……お前が学校に行きたいと言っていた事は、私のSPが調べ済みだ。だからそれを叶える為に、思考した結果……」
「結果?」
 指を立てながら説明をするナギに向かって、首を傾げる。
 そして、最後、その立てていた指を、ハヤテに突きつけた。
「お前――私の執事をやらないか?」
 
 
                    </-to be continued-/>

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