忍者ブログ

絶望への共鳴 // ERROR

深層心理へのアクセス。結城七夜の日々。徒然日記。 裏; http:// lylyrosen. xxxxxxxx. jp/ frame/ water. html

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

IF DREAMS CAME TRUE // girl ' s butler 22





これはハヤテが歩んだもう一つの『IF』の物語――の、執事編。













 その巨大な建造物は、一夜の内に現れた。全く、資産家とはやる事全てが金が掛かるものである。その金を、もう少し別の所に使うと云う思考が無いからこそ、この世界は駄目なのかも知れない。資産家の資金は全て、自らの為に使われるのである。
 一夜の内に、白皇学院のグラウンドに造られたのは、巨大なドームであった。元々、グラウンドの地下に小さなドームが存在していたのを増築したのだと云う。一夜の内にドームが現れたのも、恐らく、地下にあったドームが突然出て来たからなのであろう。
 しかしこの増築に一体どれ程の資金が掛かっているのであろうか? ――東京都に存在しているプロ野球の本拠地、東京ドームを建設するのには、数百億の投資がなされているのである。それに匹敵するこのドームを増築したとなると、相当の資金が掛かっていると云う事は誰でも解る。
 はぁ、と感歎の溜息を吐きながら、東宮康太郎はその増築されたドームを眺めている。たかが、生徒会長一つ決める為に執事同士を戦わせると云うイベントを開き、それだけではなく、その為に元々存在していた地下ドームを改修するとは思わなかった。康太郎の隣に存在している野々原楓も、あくまで微笑を崩さないままでも、つくづくこの学校の臨時理事長が行なう行動の奇怪さには、苦笑していた。
 ――また厄介な事になりそうである。生徒会長を選別する大会……この大会の優勝者には、生徒会長の座が渡されると云う。加えて、副賞として、賞金二億円、そして学校の授業百単位と云うものが本日追加されたために、これで参会者は更に増えるであろう。
 そもそも、周りの人間にとっては、生徒会長と云う役職よりは、単位の方に目が眩んでいるのであろう。元々資産家の子息が集る学院である、金はある、だが金で単位は買えないのである。
 かく言う康太郎もまた、単位目当てであったのだが、今この場で、桂ヒナギクの手助けをする事が出来れば、生徒会長の座を守る事が出来れば、自らに対する負のレッテルを剥がし、好感度を上げる事が出来るのでは無いのだろうか、と考えたのである。加えて、楓の考えは最初からそちら側にのみ向いており、男たるもの、頂天を目指せ、等など、先日から言われ続けているのである。
 今回のこの執事同士の戦闘では、主の方にも様々な事柄が試される。何せ、相手側は態々執事を狙わなくても、主を狙う事が出来るからである。そう考えれば、今回この東宮康太郎を鍛えると云う事柄に正当性が付くと、楓は思っていたのである。
 故に、今朝早くからこの場に居る。まだ生徒が登校してくる前から、このグラウンドで走っていたのである。既に、三時間が経過している事から、まだ夜が明けない内からこの場に居るのである。康太郎に関しては、今直ぐにこの場に伏っして寝てしまいたいのだが、そうすれば楓の竹刀が飛んでくる事になる。
「坊ちゃん?」
「……」
 本を呼んでその場で胡坐を掻いていた楓は、横にある竹刀を取り上げ、振り被った後に、まるで野球の投手の様に、見事なオーバースローで上から竹刀を叩き付けた。
 乾いた音が響いて、その場に康太郎の叫びが響いた。
「ごらぁあああッ! 誰が寝て良いっつたぁッ! 起きろォッ!」
 襟を掴み、立ち上がらせる。自らの執事の剣幕に、眠気は一気に飛んだ。目をはっきり開けて、楓に対して頷きを返す。
「よろしい」
 収まった様である、胸を撫で下ろし、精神統一を始める。正直、只精神を統一する事に何が意味あるのか、と思っていたのであるが、走るよりはましである、このまま目を瞑り、無心でこの場に居るだけで、問題ないのである……
 ――が、睡魔とは、時に、一度覚めてしまった体を再び誘惑するものである。
 そうして、本日十三回目の絶叫が響く事になる。



「本当に良いんですか?」
「うん。それに、執事大会に出るって事は、私の執事として認識されないと行けないわけだから」
 ……今、ハヤテはヒナギクの鞄を持ちながら、その様な会話をしていた。
 昨日の話により、桂家の執事として、生徒会長を決める大会、執事vs執事 NEXT Plusに参加する事になったハヤテは、今日からその当日まで、白皇学院に通う事になったのである。無論、授業は受けずに、只休み時間や、様々な時間、ヒナギクの手伝いをすると云うものである。
 元々、白皇学院には、執事と共に在学する人間も居るが、そうで無い執事も存在しているのである。その為に、白皇学院在学生徒の執事と証明出来れば、白皇学院内を自由に闊歩しても問題ないのである。
 その手続きは、先ず、生徒会長の了承――これは、今現在隣に居る少女こそが、白皇学院の生徒会長である。
 次に警備に当たっているSPの人物達への紹介。彼らはプロである、大体の人間は覚えていられる。それに、監視カメラにデータを入れる事によって、不審者と認識されないと云う手段を取る事が出来る。
 其々の手続きをするのに、役三十分程、その後に、ハヤテとヒナギクは、白皇学院の校舎に入る事になる。
「うわぁ……これが時計塔ですかぁ……」
 噂では――と、云うより、白皇学院の時計塔は様々な学校、教育機関で有名な場所である。ハヤテ自身も、一度はこの時計塔の頂上から街を一望してみたいと思っていたのである。その願いが今叶おうとしているのである。
 が、少し思ったことだが、先程からヒナギクの様子がおかしい。何か、何時も見せるヒナギクの調子では無いのである。しかし、それに対してはあくまで少し、の話であり、別段気にも留めていなかったのである。
 巨大エレベーターに乗り込み、パネル操作で一番上まで行く。……この一階から最上階の生徒会室までの間の階にも、授業教室は無論存在しており、体力の無い生徒への配慮と、生徒会の人間が態々頂上まで会談で行くのにも色々と面倒だからこそ、このエレベーターが設置されたのである。
 轟、と、鈍い音を立てながら、流石最新技術を使用しているエレベーターである、独特の下からの違和感も無く、そのまま一気に、気付かぬ間に頂上へと辿り着いていた。スライド式の扉が開き、部屋が明らかになる。
「うわ……」
 そこは、本当に高校生の生徒会の部屋とは思えぬ場所であった。地面には白皇学院の紋章である鳥の絵図、高級ソファーに、部屋の端には巨大システムキッチンが存在しており、冷蔵庫には様々な高級食品、食材が所狭しと置かれている。此処で料理でもするつもりであろうか?
 そしてハヤテが楽しみにしていたその街を一望出来る光景も凄まじいものであり、流石は白皇学院の時計塔、噂に違わぬ眺めである。夜になれば、素晴らしい夜景を演出してくれるであろう。
「凄いですよ、ヒナギクさん!」
「え、ええ……」
「こんなに街が見渡せるなんて……予想以上ですよ!」
「そうね……」
 ――返って来る言葉が安直だ、ハヤテは漸く不思議に思い始めた。
「ヒナギクさん? 具合でも悪いんですか?」
「だ、大丈夫……よ?」
 だがそうには見えない、どうみても、青ざめている。この場所は風が通り抜けており、それで体を冷やしたであろうか、急いで扉を閉めた。折角システムキッチンがあるのである、紅茶でも淹れ様と思い、隣の部屋へと歩を進める。
 しかし、どうも気になる。そういえば余り気には留めなかったが、この部屋に入ってくる前、エレベーターに乗る前にも相当気が滅入っているような気がしていた。この部屋には何かあるのであろうか……

「だーれー?」

 ……さて、空耳であろうか……ハヤテは耳の中を弄る。今何か、今頃生徒会長の席で座っている筈の少女とは全く違った声のトーンが聞こえた様な気がしたのである。しかも、このキッチンの、この棚の中から。
「だーれー?」
 二回目。
 ――空耳は確信へと変わる、この中に誰かが存在している。何が出てくるか、少し緊張しながら、ハヤテは棚の扉を勢い良く開いた。
「う、うわぁああああああッ!」
「ひゃああああああああッ!」
 そこには、一人の少女が存在していたのである。この白皇学院の制服に身を包み、頭を抱えて、声を上げた。流石にその声に気付いたのか、何事かと、ヒナギクが姿を現した。
「泉、何やってるの……?」
「ご、ごめんなさ~い……」
 泉と呼ばれた少女は、笑顔のまま、ヒナギクに謝罪した。それだけ見ていれば本当に謝罪しているのか謎のところであるが、本人はそれが素なのであろう、ハヤテは直ぐに看破した。
「えーとねー、かくれんぼ」
 成る程、それでこの場所に隠れていたと云うのか……何故この場でかくれんぼをしているかどうかは謎のところであるが。
「嘘ね」
 その納得の理由に対して、ヒナギクはそう言い放った。
「ほ、ほんとだよぉ……~」
「貴女が嘘付く時、声の語尾が何時もよりも伸びるわよねー」
「――」
 なんとも容赦の無い……しかし、この泉と呼ばれる少女は一体何者なのか……
 腰に手を当てて、ヒナギクが口を開く。
「この子は瀬川泉。この白皇学院生徒会のメンバーの一人よ」
 ふぅ、と溜息を吐きながら、そう紹介する。それに対して泉は笑顔でよろしくねー、と言葉を掛ける。
「えーと……」
「あ、ハヤテです。綾崎ハヤテです」
「――ハヤ――太?」
「いえ、ハヤ“テ”です」
「よろしくねー、ハヤ太くーん」
「……あのだから……ハヤテ、です」


 ――執事 vs 執事 NEXT Plus開催まで、残り、二五時間三分――


               < / - to be continued - / >


感想等をお待ちしています。
意見等も遠慮なく。
リンクから本家のほうへ行くか、右にあるWEB拍手から送ってもらえるとありがたいです。

拍手[1回]

PR

Comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

Trackback

この記事にトラックバックする

Copyright © 絶望への共鳴 // ERROR : All rights reserved

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]

管理人限定

プロフィール

HN:
殺意の波動に目覚めた結城七夜
HP:
性別:
男性
自己紹介:
小説を執筆、漫画、アニメを見る事を趣味にしている者です。

購入予定宣伝

ひだまりたいま~

カウンター

最新コメント

[05/13 Backlinks]
[01/09 WIND]
[12/20 WIND]
[12/18 WIND]
[12/12 WIND]

最新トラックバック

バーコード

カレンダー

08 2024/09 10
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30

ブログ内検索

アクセス解析

アクセス解析

本棚