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絶望への共鳴 // ERROR

深層心理へのアクセス。結城七夜の日々。徒然日記。 裏; http:// lylyrosen. xxxxxxxx. jp/ frame/ water. html

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IF DREAMS CAME TRUE // girl ' s butler 21






これはハヤテが歩んだもう一つの『IF』の物語――の、執事編。












 事情を兎に角訊いてみる事にした。何も事情無しに、目の前の「完璧超人」と云う四字熟語が似合う少女が生徒会長の座を引き摺り下ろされる事は先ず無いであろう。それは一番、少年自身が解っている事柄である。叱責を受けている場面など、一度も見た事が無い。
 今、生徒会長の座から引き摺り下ろされようとしているヒナギクは、腕を組みながら、溜息を吐いている。一体何があったと云うのか……
「実はね、今居る理事長は理事長の代理の人で、その人の行いが色々と問題があると言うか何と言うか……兎に角、今の理事長にとって、色々とやることを邪魔する私が凄く目障りなんでしょうね――これ」
 そう言って手渡されたチラシを眺めると、この様な事が書かれている。

 ――生徒合同、真・生徒会長決定戦。
 執事vs執事 NEXT Plus――

 はぁ、と相槌を打ちながら、ハヤテは眺める。どうやら、その理事長と云う、理不尽な行動を取る人間を邪魔するストッパーがヒナギクであり、それを生徒会長と云う座から降ろす事が出来れば、ヒナギクは理事長に対する意見の顕現を失う事になる。――地位とは理不尽なものである。
 要約すれば、邪魔者退治である。全く、迷惑極まりない事柄である。此処の巧妙なところは、ヒナギクには執事を雇っていないのである。詰まる話、何も出来ずに、そのまま不戦敗となり生徒会長の座を退く事になるのである。
 成る程、良く考えられている。相手側は流石に此方側の弱点を知っていると窺える。
 呑気にそう考えるハヤテであるが、実際、生徒会長の立場から考えると、笑っている場合ではない。このまま見す見す生徒会長の座を明け渡せば、白皇学院の未来は暗黒である。あの理事長のやる事全ては奇怪。希に真面目な事をやったとしても、その裏には何かが見え隠れしているのである。矢張り、油断は出来ない。
 このまま生徒会長の座を守る方法は只一つ、この執事vs執事 NEXT Plusと呼ばれるモノに優勝する必要性があるのである。
 話を繰り返すようであるが、桂家には執事は存在していない。誰かが代役をしなければならないのであるが……

「ですよねー」

 綾崎ハヤテ。結局は不幸な目に会うのである。しかし、恩人であるヒナギクに頭が上がる訳も無く、何も言う事無く、この執事vs執事に参加する事になる。

     ■■■

 ……執事vs執事に参加するには、先ず、その家の執事である事が第一条件である。白皇学院に所属してなくとも、その家の執事ならば、参加する事は自由である。無論、参加の為には、他にも、執事服が必要である――執事たるもの、身嗜みには気をつけなければならないとの事で、自由に服を着ている執事も、このバトルに参加する時だけは執事服の着用を求められる。
 更にルールである。戦闘は一対一の変則バトルで行なわれる。フィールド上には執事と、その主が上がることになる。その上でバトルが行なわれ、勝敗は――
 一つ、相手をフィールドアウトさせる。
 二つ、相手をノックアウトする。
 三つ、ネクタイを取る。
 四つ、主によって撤退を進言された時。
 五つ、主がフィールドアウトした時。
 以上の五つが勝利条件になる。
 加えて、反則行為などによって判定負けと云うものが存在している為に、そちら側にも注意が必要である。尚、兵装を使う事は、刃物、銃器、等々強力な殺傷能力のある物以外は可となっている。竹刀、木刀、他にも、使う人間は居ないだろうが、ピコピコハンマー等々も可能である。
 以上がルールである。このルールを遵守して、白皇学院内での執事、そして主の最強を決め、頂天を目指すのである。晴れて優勝した人間こそが、生徒会長の椅子に座る事が出来るのである。

     ■■■

 ヒナギクから渡された資料にはその様な事柄が書かれていた。頭の中にしっかりと叩き込んでおかなければならない。妙なところで反則を犯してヒナギクを失格にさせる訳には行かないのである。
 しかし、生徒会長を決める為に、態々執事同士を戦わせるとは、本当に現在の臨時である白皇学院の理事長は、気まぐれに、若しくは何かしらの陰謀を持ってこの様な事柄を平気で行なうのであろう。迷惑な話である。
 現在、ハヤテは渡された執事服に身を包んでおり、体を動かしている。矢張り、スーツに近いこの執事服である、動きづらい。この中で動き、戦い、感覚を研ぎ澄ませて、主を勝利に導かなければならないのである。――そして、それは執事の日常でもある。多くの外敵から主を守る……執事は日々、この様な緊張に晒されているのであろう。かなりストレスの掛かる職業である。
 今回の件に関しては、取り敢えず表向き、桂家の桂ヒナギクの執事として、綾崎ハヤテは出場する事になるのである。気を引き締めなければならない。
 ――この執事vs執事 NEXT Plusは、今日から二日後に行なわれる。残り明日の一日だけで、出来るだけ腕を磨き、そしてルールを把握しなければら無い。
 ルールの中に、主もフィールドに出ると書いてあったが……ハヤテはヒナギクの方に視線をやる。
 恐らく大丈夫であろう。この少女の実力は、学院中が知っている事である。今更何を危険視する必要性があるか。寧ろ、危険視するべきは、執事の方に存在している。
 確実に、この執事vs執事には、あの野々原楓や、冴木氷室――他にも様々な執事が出場するであろう。即席の執事である自らが、本業の執事に勝てるかどうか、それが一番問題なのである。二人の実力は、一度拳を交えている為に大体は解るが、他の執事は、戦闘能力は愚か、容姿すら見た事が無いのである。最初から本番である。
 一体どれ程の威力を含めているのか。楓に訊いた時は、氷室は相当の実力の持ち主と言われていた。つまり、冴木氷室と云う者を“上”の位にあげた場合、他にもあれ程の実力の人間が居ると云う事。
 兵装の持込は認められている。兎に角、無理だと判断した場合は兵装を使う事にする。選んだのは、ヒナギクが竹刀を持つと云う事から、木刀を持つ事にした。――しかし、木刀も充分殺傷能力がある様な気がするのであるが、その辺りは問題ないのであろうか……?
「大丈夫でしょ? 執事も、そんな致命傷を喰らうほど、駄目な人じゃないって事よ」
 致命傷を受けそうな気がしてならない、ハヤテは内心で溜息を吐く。突然本気の一撃を目の前にぶつけられたら、流石のハヤテでもそれを完全に避け切ることが出来るかどうか、心配になってきた。
「つまり、死ぬ気でやれってことですね、解ります。死ぬ気の炎は出ませんけど……」
 それが何なのか、ヒナギクには理解が出来なかったが、兎に角、死ぬ気でやれ、と云う訳である事は変わらない。死ぬ気でならなければ、この戦い、勝ち抜けない、ヒナギクを生徒会長の座に乗せる事が出来ないのである。
 ……しかし、ヒナギク以外にも、理事長を止める事の出来る人間が一人ぐらいは居るのでないのだろうか? そうなれば、万が一、ハヤテが敗北し、ヒナギクが生徒会長の座を引き摺り下ろされた場合の滑り止めにはなる。
「あ、それ無理。この白皇学院の資料とか、一般の生徒には色々と難し過ぎるのよ。それに、他の人間が理事長に上手く乗せられて従わせられるんだから、そんな、生徒が一斉に拒否出来れば、こんな事にはならないわよ」
 確かにそうだ。格差社会の典型的な例である。実際、学院ではこの様な上下関係がはっきりしている方が良いのであるが――近年の教育機関は、一つ、姿勢が低過ぎるのである。人生の先輩として、子供にモノを教えると云う支点では、少しは厳しくしても良いのであるが、これはどうしようもない。
 木刀を一旦地面において、休憩をする事にする。時刻はそろそろ十八時を回ろうとしている。夕食の準備も存在している。もう少しで、義母も帰って来る事であろう、その時に食事が無いのは些か寂し過ぎる。
 その旨を伝えて、ハヤテは一旦部屋に入り、一足先にシャワーを浴びる。そして着替えた後に、夕食の準備を行なう。――シャワーを浴びている間に、ヒナギクが既に下ごしらえをしておいてくれたらしい、楽になる。
「有り難う御座います」
「これくらいはしないとね。お願いね、執事さん」
 片目を瞑って、意地悪そうに言葉を放つヒナギクに対して、ハヤテは苦笑で答えた。……何か、この少女の執事にはなりたくない、と思ってしまった。

 ――執事vs執事 NEXT Plus開催まで、残り、六二時間二三分――



          < /- to be continued -/ >


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