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絶望への共鳴 // ERROR

深層心理へのアクセス。結城七夜の日々。徒然日記。 裏; http:// lylyrosen. xxxxxxxx. jp/ frame/ water. html

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ALICE / drive ACT 2 2/3





2/3











 
 
 今頃、二ノ宮リンは授業中であろう。裸で自室に籠もっている千裕は、手にチューハイを持ちながら、外を眺めていた。この場所からだと、外の光景は、遥か下に街が存在しており、車が行き駆っている光景のみである。
 ……退屈だ、先程からの自慰行為にも限度がある。ベッドシーツが濡れてしまった為に、先程業者に渡した。今は、ベッドの上には何も敷かれていない状態である。寝転ぶと、肌に、ざらついた感覚が肌を刺激する。
 この場所から出たいのであるが、昨日からギルバートに部屋にロックを数十にも掛けられてしまい、開けられない状態である。元々、彼女自身の魔法は呪いが主である、破壊をする事など殆ど会得していない。加えて、あの扉はギルバートお得意の魔法石製の扉である。破壊出来ない事は解っている。
 既に、魔力も尽きている。……これで、数日は、魔力の充電で動けないであろう。
 この場所から出る、と云う事柄は叶わないと云う訳である。確かに、リンに会いに行くと云う事柄もあるのであるが、女性の用品を買いに行く事が出来ないのである。それに関しては、幾らギルバートであろうと、買って来て貰う訳には行かない。と、言って、エリザベスに頼む事も出来ない――あの女性は自分に対しての接し方が本当に悪い。嫌われているのであろう。
 部屋は確かに広い、娯楽用の用品も、この庭園に配属されて、この部屋を渡された時に色々と買った為にあるのであるが、矢張り、人間あろうもの、愛情表現程楽しい事柄は無いと思っているのである。
 唯一の楽しみであるそれを奪われていると云う事は、苦痛以外の何ものでもない。今直ぐにもあの少女を陵辱したい、今直ぐに■■■してやりたい……体と体を重ねて、擦り合わせたい……その様な思考しか今は思いつかない。
 ――成る程、好きな食べ物を、預けられていて、苦労してそれを手に入れた時の味は格別である。それと同じだ、焦らされれば、焦らされるほど、そのディナーは極上に仕上げられる。舌で乾いた唇を濡らしながら、時を待つ。
 そう考えれば、この待つと云う事柄も、嫌な事ばかりではない。楽しみが逆に増えると云う訳である。
 シーツも着けられていないベッドに体を預け、もう一眠りしようかと思った所で――乾いた音が、部屋に響いた。それは、扉がノックされた音であった。
 一体誰か……と思い、扉の目の前まで来たまでは良かったが、扉が開かない事を思い出した。開かない事を相手に伝えようにも、防音まで着けられてしまっているのである。何でも、自らの発する言葉自体が耳障りだと言う。この謹慎が終わるまでは暫らく声を聞かせるな、とは理屈である。
 だが、この様に客人が来たらどうしたら良いのか……ギルバートはその辺は考えていなかったのであろう。さて、如何にした物か、と思い仕方なく服を着て、相手を迎える準備をしたのであるが、如何せん、開かなければ意味が無い。
 ――そろそろ向こう側も諦めるであろう、と思い、服を脱ぎ始めようとした辺りで、鈍い音がして、後ろの扉が何か、開いた様な感覚がした。
 振り返ると、倒れた扉の向こう側に――将軍が立っていた。成る程、客人は自らの師匠であるマカロニ将軍であったのか、それならば、このギルバート製の魔法石扉を破壊出来たとしても不思議では無い。
 一体何の用事であろうか、用事も無く自らの師匠が部屋を訪れる事は無い。何かあったのか、それとも、何処かに出掛ける際の助手を任せたいのか、どちらかである。
 さて、その理由を問う事にする。この場に居る理由、そしてこれからの行動に関して――それを述べてもらう事にする。その為の準備は……魔力は尽きているが、何とかなるであろう。まじない程度なら、呪いを行使する事は出来そうである。
 千裕の問いに、マカロニ将軍は口を開いた。
「……任務だ。この町に、随分前から庭園が追っている『グリン・キャット』が現れたらしい……約、十年ぶりにな」
「つまりー、討伐任務ぅ?」
「そうなるな。……見たところ、ギルに謹慎を食らっているらしいな……魔力も著しく低下している」
 このマカロニ将軍と呼ばれる男は、本来解る筈の無い、相手側の魔力の残量を、その微かな漏れと、酸素に溶け込む容量、全てを頭の中で計算して、如何程のモノかを掴む事が出来る奇異な才能を持っているのである。その将軍が言う事は確かである、昨夜の件、そして先程までこの扉を破ろうとして「呪い」を行使し過ぎた。
 空になった魔力を補うのは、時。であるのだが、例外として、性行為と呼ばれるモノが存在している。……無論、唾液から、若しくは血液から、と云う人物も存在している。――そして、千裕は、唾液、そして血からも魔力を吸い取る事の出来る数少ない人間でもある。
 ……否、血から魔力を吸い取れる例は、現在の所、吸血鬼、死徒しか存在していない。つまり、この川崎千裕と云う人物は……
「……良い人を紹介してくれるってのなら……良いわよ、食べてあげるから」
 ――死徒、川崎千裕。
 彼女は、性行為、そして吸血、唾液からの魔力の吸い取りをする、半死徒、半吸血鬼の異例ハーフである。全く持って、何故この様な人間なのかは解らないが、只一つ言える事は、死徒、若しくは吸血鬼と性交した人間もまた、死徒、吸血鬼に変貌すると云う事である。基本的に、吸血、又は口付けによる接触では、死徒化、吸血鬼化はしない。手段としては、死徒、吸血鬼との性交が必要となるのである。
 無論、死徒になろうと云う人間など、居る訳も無い。ごく希に、その様な人間に恋をした人物が、半不老不死を求めて死徒になると云う人間も存在しているが……
 しかし、今まで千裕が、死徒になってから性行為をした事は無い。求めたとしても、結局は拒まれるのである。……つくづく、どうしようもない。その様な行為を求める異性は大量に居ると云うのに、どうにも、その様な人物の中に、自らの好みは存在していない。いっその事、同性に求めようと思い、こうして、男だろうが、女だろうが求めているのである。快楽を臨むのであれば、どちら側でも良い。相手を如何にこの手で玩び、壊し、そして自らのモノにするか……それが、彼女にとってはたまらない程の快楽なのである。
 ――この任務、受け様にも、受けられないのである。魔力が無い千裕にとっては、如何し様も無いのである。
「ねぇ、いっその事、ギルを連れてってあげたらー?」
「駄目だな。今回の敵は、ギルとは相性が悪い」
 ……グリン・キャット……聞いた事は無いが、一体どの様な能力の持ち主なのか。死徒か、それとも、吸血鬼か……どちらでも良い、名前で察するに、死徒だとしても、『アフター・セブンティセカンド』のメンバーではない。
 一体、何を行使する人間なのであろうか……グリン・キャット……つまり、アリスインワンダーランドでは、チェシャ猫である。笑っている猫、と云う訳である。アリスを招く、案内役である。
 微笑しながら、千裕は愉快、と言っている。彼女にとって、アリスインワンダーランドはかなり気に入っている物語の一つである。何ゆえ、その人物はそのチェシャ猫をモチーフにしたグリン・キャットと呼ばれる称号を渡されたのであろうか。――命名をする、庭園の人間に、少しの些事と、少しの怪訝を思いながら、微笑する。
 それに対しての答えは返ってこなかった。なら、この謹慎を解除されたら、訊く事にしよう……
「あ、そうか、扉ぶっ壊されたんだ。ならいーやー♪」
 ぴょん、と自らの口で擬音を叫びながら、部屋から飛び出た。一つ背伸びをして、辺りを見渡すと、人々は全く見えない。無理も無い、この辺りはエンペラーセブンと、その弟子や、秘書等が住まう場所なのである。一般の、末端の庭園の人間が居る訳無いのである。此処から数階下に降りれば、人が行き交う場所になるであろう。
 そんな事はどうでも良いとばかりに、目の前に居る将軍は一つ咳払いをした。それに気付いた千裕は、拳を作って頭を軽く叩くと、舌を出す。
「――で、どーすんのぉ? ギルと相性が悪いならさ、誰を連れて行くワケー? ……あ、そうか、だから私の所に来たのかー」
 悟ったか、と頭を掻きながら、将軍はそう呟いた。
「……まぁ良い、無理なら良い」
「え、いーのぉ? 本当にぃ? なーに、エリザベスとか、ニールとか連れて行くワケー?」
「いや……それにそろそろ、新作のカレーライスが完成する頃合だ。――食うか?」
「え、えんりょしときまーす」
「何を言う、お前に拒否権なんて無いんだぞ……我が弟子よ」
 ……師匠と弟子の関係とは、時にこの様な力を行使させられるモノである。
「ア―――――ッ!」
 
 
 
 ――資料を整理しているエリザベスとニールは、互いに無言であったが、ふと、ニールの言葉で、その沈黙が破られた。
「……何か臭いませんかね?」
 その言葉に、エリザベスは眼鏡を上げる。
「女性の人を目の前にして、どの様な神経ですか?」
 あーはい、とニールは笑顔を苦笑に変えて、答えた。――しかし、そのエリザベス自身も、確かにその臭いは感じていた。加えて、この場に近付いて来る、足音にも気がついていたのである。顔を見合わせると、それが無言の合図になる。二人は、直ぐにテーブルの下に無理矢理入り込む。
 と、同時に、このマカロニ将軍有する書庫の扉が開く。そこには、暗い顔をした千裕を連れているマカロニ将軍が立っていた。目を光らせている、その場を見渡している……が、その場に人は居ない様に見える。只、本が無造作に整理の途中の様に置かれている。
 人が居ないと云う事は食事にでも出たか、と考える。確かに、時刻は既に昼を回ろうとしている。そろそろ昼時である。
 特に、散らばっている本を咎める事も無く、扉を閉める。
 ――居なくなった事を確認した、テーブルの下の二人は、部屋を眺める。どうやら、事無き得た様である。
「……間一髪でしたね」
「……ええ。
 それより、何時までくっ付いているつもりですか? 下郎」
 鈍い音を立てて、ニールの躯体が飛んだ。そして地面に落ちたニールが、笑顔のまま、横を見ると……
「――エリザベスさん」
「なんですか」
「こんな所に、将軍の肖像画なんてありましたっけ?」
 ……さて、とエリザベスは不思議そうにその肖像画を眺めると……目が動いた。
「――見つけたぞ……」
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああッ!」
 その絵の向こう側に空間が広がっており、そこから、窮屈そうに、マカロニ将軍が姿を現した。そういえば、最近将軍はメタボリックシンドローム症候群が進行しており、ダイエット中だと言っていた事を、叫びを上げたニールは思い出した。
 だからと言って、この様な場所に巨大な空間を作り、入っている事も無いであろうに。そもそも、先程現れた人物は一体何だったのか。明らかに、将軍本人の形をした人物であった。加えて、連れていた千裕も、実物だった様に見えたのであるが……
 空間から体を出した将軍は、ふむ、と言って、出口の扉を開ける。出て来た穴の奥からは、暗い顔をした千裕が姿を現した。安否は……確認する必要もない、恐らく、これから犠牲になる事に関して気が滅入っているのであろう。正直、見付かってしまった此方側も同じ気持ちである。
 入り口の向こう側に消えていった将軍が次に出て来たのは、ニールがそんな千裕を引っ張り出した頃合であった。親指を立てて、立っている。恐らく、来て見ろ、と云う合図なのであろう、三人は重い足取りで入り口まで来た。
 ――そこには、抜け道が存在しており、奥が暗い。この先に、先程の空間が存在しているのであろう。何を自慢げに、この目の前の男は笑っているのか。歳を考えて欲しいものである、秘書である美女は、眼鏡を上げながらそう溜息を吐く。
 だが今問題にすべきは、この人物が、何故整理をしているこの二人を迎えに来たか、と云う事である。……大方理由は解っているのであるが、解らない様にしたかった。そうしてそのまま、何事も無かったかの様に、帰って欲しかったのであったが、どうやらその望みは叶わないらしい。
 ニールに関しては、常に笑顔を見せながらも、流石にこの事態には、笑顔を苦笑に変え、しかも口の端を吊り上げざるを得ない。エリザベスも同様である、何時もと同じ無表情であるが、先程、ニールよりもいち早く状況を見抜き、隠れる様に促した事から考えて、通常ではないのであろう――少し、眉間に皺を寄せている。それは将軍に真先に連れてこられた千裕も同じである。
 さて、問題は、これからどれだけ犠牲者が出るかである。今までの戦績上、この三人が捕まるのは、全ての事柄に関して同じである。つまり毎回捕まっているのである。が、ギルバートだけは、毎回逃げ延びているのである。流石親子である、相手の事を良く解っているようである。
 何を感じたのか、今日のギルバートは公務として、授業の講師として、志願している。
〝……ギルバート……流石ですねー〟
 それは皮肉か、それとも些事か、どちらかは不明であるが、兎に角、彼の幸運と、そして実力には、毎回平伏させられる。
 喩え、ギルバートが居なくとも、将軍はこのまま事を続ける。……廊下にも立ち込めるカレーの臭いを嗅ぎつつ、三人は覚悟を決めた。
 
 
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