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絶望への共鳴 // ERROR

深層心理へのアクセス。結城七夜の日々。徒然日記。 裏; http:// lylyrosen. xxxxxxxx. jp/ frame/ water. html

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汚れ切った奇跡を持って、この世に正義を成す



今さら感がありますけど、Fate/Zeroが始まりましたねー。

自分の作品を見ている方はご存知かと思いますけど、Fate/Zero―――もとい、虚淵先生に受けた影響の節々が自分の小説にはあります。……特に戦闘シーンとかは影響を一番受けていますね。銃とかの表現とか、書き込みとかもそうですね。

内容物としては……凄いですね。
さすがは映画と同じクオリティと制作者が言うだけあって、確かにそうでした。満足の映像、満足の展開―――凄い完成度です。やっぱりFate/Zeroは凄い。今回、映像化に伴ってFate/Zeroの凄さを再認識しましたね。しいてはFateの凄さも再認識しました。

これからどこまで忠実に進めて来るか、そしてアドリブを入れて来るか、楽しみにしています。

……Heavens Feelルート映像化まだですか?←


例の如く、『ALICE』のキャラクターページのイラストを変えようでヒナさまを描いていたんですけど……ちょっとバランス悪かったかなァ、と思いつつもこれ以上が出来なかったので、これで終わりにしました。特に足元が違和感を感じているんですけど、これ以上弄っても違和感が拭えなかったので、一番無難なところで止めておこう! と言うことでこれでアップしたいと思います。

もうちょっと全身を描き込むのを上手くならないとだな……とにかく、前進あるのみですな。


以下ハスミさんへの小説ですー。
原作を知らない方は、是非サイトのリンクページからハスミ林檎さんのサイトに飛んで見てくださいな。その世界観に温かい感覚的なサムシングを感じてください←





 
 男はその異変を知る。そして同時に理解した。異変の正体に……
 そう、グールが次々と殺されて行く感覚だ。
 元々グールは死者故に殺されて行くと云う言葉は似合わないが、それでも元は生者であったモノ―――彼らに死の概念が存在しているかどうかは解らないが。
 何にせよ、あれ程大量に作ったグールが突然殺され始めたのだ。何事とも思ってしまうだろう。
 先日数体倒されたが、まだ許容範囲内であった。恐らく、何者かが大群を引き連れて来た―――その何者かが、大方解ったような気がしたが……まぁそれは良い。
 確かにここまで早いとは思っても見なかったが、まだ想定の範囲内だ。そもそも、彼らと一度戦闘を行い、あそこまでの力量の違いを見せつけたのにも関わらずこうして再び現れた事―――それは確かに予想外の展開であった。
 ……しかしそれが……思ってはいけない事だと解っていても〝嬉しい〟と感じたのも、また事実であった。
 あの時現れた両眼異色の魔術師と―――自らと剣を交えたあの少年とは、もう一度、戦って見たいと心の底では思っていたのは事実なのだ。
 故に、グールを消滅させている人物が誰かは解らないが、理由の無い、根拠の無い直感で彼らだと、何故か思ってしまった。そしてその勘を、信じて見ようと思ったのだ。
 彼らが再び現れた。グールを倒し、そして自らと戦う為に現れた……なるほど、相手がどう思っているかどうかは解らないが、自らにとっては嬉しい話だ。
 ―――本来、述べたように魔族は争いを好まない。強過ぎる力が争いを呼ぶのを解っているからだ。人間と調和して生きていた日々こそが、彼らにとっては至高であり、そして現代の人間の性格や習性を考えればもう二度と出来ない生活だとも解っている。だからこそこうして人気の無い、プレザンスの森の奥地で住んでいるのだ。
 だがしかし、魔族の中には稀に、戦いの中にこそ死を……そして生きる意味を求める部族が存在している。それを東洋の言葉を借りて『武士道』。
 そのような武士道魔族が存在しているのもまた、魔族の中の事実だ。
 戦いを好まぬ種族。しかし、真剣勝負の中にこそ存在している極限の代物―――生きざま。ここに生きていると実感出来る時が存在している。人間よりも優れた身体能力、力を持っているからこそ、強い力と力同士がぶつかり、互角の戦いを生む仕合の中に、生きる道を見出した種族もいたのだ。
 男は彼らと戦う自分を抑えて、冷静に対処する。再び戦うのはあとでも問題無い。この戦いが終わってからでも全く問題は無い。しかし現在の状況を左右するのは自分の行動だと云う事も忘れては行けないのだ。……そう考えると、不思議とその心を冷静にするのが可能であった。
 ここでむやみにあのグールを蹂躙する人間たちの中に行ったとしよう。もしこの騒ぎを知っている者が他にも居たらどうする……? 例えば、『クラス』を盗んだ人間が居て、この騒ぎを聞きつけたとしたら……?
 ここにはもう無いと解っていたとしても、他の宝具の在りかを知る為に襲うかも知れないのだ。森は焼け、そして戦いは戦いを呼ぶだろう。
 冷静に対処しなければならない立場に存在している。一旦心を落ち着かせて、この場でしばらく待機する。
 死するのは許されず、かつ、引く訳にも行かない。
 ……息をゆっくりと吐いて、男は再び腰を木の枝に掛けると、他にもこちらに向かって来ている使い魔を待つとした。彼らがもしかすれば他に有力な情報を持って来るかもしれない。それを待ってから次の行動に移ったとしても、遅くは無いだろう。
 問題があるとすれば、使い魔がこちらに来る前に、敵がグールを突破して来る事だ。そうなれば、こちらも戦わざるを得ない。そして情報を手に入れて、応じて行動に出るのもままならないだろう。
 ここはグールに思念を飛ばすとする。
 内容は―――こちら側に近づく全ての敵を抹消せよ―――だ。
 目的の為に全てを犠牲にすると云う理念は、人間が持ち得る理念である。魔族が持っている理念とは異なる代物である。……が、こちらも命が、そして自らの種族の存続が掛かっている。向こう側とは重みが違う。
 それに、全力を持って抹消の支持を出さなければ、相手もまたそれなりの実力者だ。何も出来ずに、足止めすら出来ずに消滅してしまうのも居るだろう。せめて、相手に一振り多くさせてでも足止めさせる。その為には全力を持ってグールに戦って貰わなければならない。……グールなら、替えが効く。
 思念を飛ばして、数秒。しかし、相手の直進して来る力は変わらない。どれ程持つか……少し焦りつつも、使い魔の帰りを待つ。
 残りの使い魔は少ない。そう時間は掛からないだろう。長く見積もって、十分弱。その間グールで抑えられればこちらも何とか行動に打って出られる。
 だが万が一もある。もしグールでは抑え切れず、使い魔が来る前に敵がこちらに来てしまった場合の最悪―――その場合は、自身で立ち向かうしかない。
 男は目を瞑って、再び開くと、そこには狩りを行う―――魔物のような目があった。そして刹那の内に体中を纏う膨大な魔力と、長く伸び始めた爪。……戦う為の準備を、彼も始める。
 だがあくまでこれは準備……戦う前の準備であり、現状は戦いに自ら赴く必要性も無い。ただ時を待つだけで良い。自らが本当に行動しなければならない時を、その場で待ち続ける。
 待つと云う行為もまた、戦いの戦略の一つでもあるのだから……
 
                                  ◇
 
 爆音であったそれはもはや。凄まじい勢いで放たれる強大な魔力の塊は一つの爆弾のように轟音を響かせてその場に魔力の拡散、強大な魔術を展開していた。
 その光景を見て息を飲んだ。小隊一つは、その目の前で一騎当千の戦いをしている三人の魔術師、戦士を見て、息を飲んだ。まさに圧巻だ。
 ……そして同時に、そのグールの量にも驚きを隠せない。一面を覆うそのグールの量は、数えるのも莫迦らしいほど、そこで蠢いていた。
 誰もここは通させないと……近づくものは容赦なく排除すると……彼らのその無言で立ち尽くしている姿がそう思えさせるほどであった。
 そこに突入して行く三人の姿もまた、圧巻でもあるのだが……
 ……突入する前、そのグールの大群を最初に眺めていたグレイスとシャルルは、一体どうすればここまでの大群を用意出来るのか……そして人とはここまでも本能と欲望に溢れ、なれの果てとしてこうなってしまうものなのか……と、様々な思いを抱きながらその光景を眺めていた。
 しかし、同じくそのグールの大群を眺めていた筈のテレシアは違っていた。それらを目前にして平然とした表情で立っており、その姿を目に焼きつけていた。
 横目で見たシャルルは思った―――まるで彼女は、得物を目の前にしている蛇のような目つきをしている―――と。
 しかしそのような印象を今覚えている暇は無いと、思った。
「……行くぞ」
 冷たい目つきのまま、テレシアが静かにそう述べると、一同もまた我に返る。そして、応、と述べるのであった。
 突貫する―――三人を幕開けに、後ろの小隊の益荒男たちが剣を、槍を取り出して、目前に広がるグールの大群に突貫して行く。
 一見、一対一の近接戦闘を仕掛けるのは無謀だと思われる光景だが、最初にテレシア、グレイス、シャルルの全方位対軍能力を持つ人間が突入する事で、全てでは無いにしろグールに攻撃を加える。勿論それで倒れてくれれば一番なのだが、そう簡単には行かない。そこで、攻撃を受けても動けるグールに対して、後ろから小隊の人間が各個撃破する。……それが今回の対群戦略だ。
 当然、彼らの一撃に巻き込まれないように、後ろで最初は待機。その後、攻撃がひと段落したところから撃破を始める。
 爆散して行くグールの数は知れない。凄まじい量そこに存在しているのなら、殺されて行くグールたちもまた凄まじい量になのだ。
 
 突貫したテレシアは、白衣を翻して発明品を展開する。ここまで大群の中に入って乱戦をするのは彼女にとっては初めての経験だ。乱戦自身は経験に無い訳ではないのだが、ここまでの量はいなかった。
 ……彼女にとって、発明品のテストは、『鏡の国』でのマネキンとの戦闘以外では出来ていない。こうして、現実の世界で発明品のテストを兼ねた戦闘を行えるのはなかなか無い機会である。
 白衣の奥から現れたのは、円柱状の代物であった。しかも一つや二つでは無い。その数は数えられるだけで三十―――当然、それ以上存在していると思われる。
 歯をむき出しにして嗤うと、その円柱状の代物を強化した魔力で跳躍したあと、一気にばらまく。そうして、すぐにでも腕を動かして魔力を扱い……火の粉を作り出し散らす。
 すると、その円柱状の代物に火が灯る。小さなロープが円柱の真中より出ており、そこに着火―――それがロープを燃やし尽くし、円柱に届いた所で―――
 凄まじい爆発音が響いて、その円柱が宙を舞い、グールたちに直撃しては爆発する。そこには何も残らない……ただ、グールの残骸が無残に散り、粘着質なそれは血のように赤く、そして地面にばら撒かれる。
 その上に立ち、嗤いながら次の発明品を取り出して戦う彼女の姿は狂気―――まさに、マッドサイエンティストと言われるだけの事はある。
 さらに襲い掛かるは留まるのを知らない無数のグールたち。手前の数体を蹴り上げて上空に飛ぶと、魔術式を展開する。……彼女にとっては発明品だけが全てではない。両眼異色である彼女の体内に存在している魔力は、魔術でさえも作り出す。
 場に展開される小規模な結界は、すぐにでも姿を消す訳になるのだが、その小さな結界が一瞬でも展開した事により、それは発動するキーを得た。魔力を得た。
 鈍い音……機械同士が擦れ合う、嫌な音がその場に響くと、テレシアの背中より現れたのはまるで蜘蛛の如く大量に展開された腕、腕、腕、腕腕腕―――。機械で出来たそれらは、手に装着された剣を無差別に、一気に突き出してグールごと、地面すら抉って行く。
 彼女にとってのテストは、かなり良好のようだ。自身の発明した戦闘用の機械がどこまでやれるのか、それを知って尚、それを改良し先に進もうとする探究心は、彼女自身の存在意義。
 鈍、と鈍い音を響かせて、再びテレシアは地面に降り立った。魔術による浮遊で、落下の衝撃を防いだ彼女は、すぐにでも、背中の腕を展開して、落ちて来る所を狙った知性あるグールたちを串刺しにする。容赦は無い。全て脳天を貫く。―――そうしてしまえば、彼らは行動すら出来なくなる。本能で動く彼らも、思考能力を捨てた彼らも、破壊されば止まる。心臓も、脳も……
 突き刺さったグールを蹴って離すと、次の発明品を取り出す為に白衣を翻す―――彼女の戦いはまさに無差別なる殺戮―――
 
 その別方向。三方向に別れた三人。テレシアとは別方向。
 襲い来るグールが、地面より現れた無数の槍のように鋭くなった瓦礫によって、突き刺されて機能を停止する。足を踏み入れた刹那に、その足の裏から現れたそれらは、鋭く、そして一気に脚の中を抜けて来て、心臓、脳を一気に貫くのだ。
 シャルルの土魔術だ。彼は土の属性を操る。勿論それ以外の魔術も扱えるのは言うまでも無い。ただ、今回これほどの量を相手取る場合は、補足した敵を一気に倒せる術でなければならない。
 相手の数は未知数。隣で猛威を振るっているテレシアのように、自らは科学技術を用いる事は出来ない。魔術で全てを解決する術しか持たない。
 故に、魔術でこの場に存在しているグールに対処する場合は、それこそ、使う魔術の使用魔力量や、レンジ、様々な情報を頭の中で蓄積、そして計算、統計して尤も効率的な魔術運搬をしなければならないのだ。特に今回のように果てが見えない戦いの場合は尚更だ。
 今回使っている土の魔術は、この場に存在している代物を効率良く扱うのに適している。それでいて、彼らは常に地面に足を着いている。攻撃範囲で捕捉されれば、すぐにでも魔術を展開出来る状況に持って行ける―――
 以上の理由から、土魔術を主に戦闘を行う事にしたのだ。
 シャルルは豪快な戦闘を好む。しかし、その豪快さの中に、派手さの中に、緻密な計算を交えるのもまた彼の特技だ。だからこそ、戦いの中でも、彼を信頼する人間は多いのだから。
 そんな土魔術を抜けて来る賢いグールが居たとしても、腰より抜かれた巨大な剣によって首は刎ねられ、すぐに後ろに待機している小隊の人間によってとどめを刺される。
 そんな豪快な戦闘は、人々を魅了し、引き付ける。まさに彼のカリスマは、戦いの中にこそ存在している代物と言っても過言ではない。戦いの中の頼もしさ、そして優しさ―――彼は戦場の中では常に人は平等に命が掛けられていると信じている。
 背中には様々な守るべき人間の命が存在している。それらが、彼を動かし、強くさせる。守るべきもの、人、場所が在り続ける限り、彼は戦いを辞めない。そして強くなって行く。
 際限なく湧き続けるグールの群れを、狩りをする人間の目で、容赦なくなぎ払って行く。
 当然、彼だけではここ全てを制圧するなど不可能―――それは等しく、凄まじい勢いでグールをなぎ倒して行くテレシアも、シャルルもまた動議。
 別働隊は、隣の戦友が排除してくれる。
 
 別方向は、グレイスが食い止めていた。彼の能力は、テレシアも、シャルルも、良く知っている。その実力も、グールに向けられている一撃の威力もまた、個人に使うには余る―――大群に使ってこそ効果を発揮する能力だ。
 彼はグールの目の前には姿を現さない。それは彼の戦い方を物語っている。
 果たして彼は、木の上に居た。とある一帯のグールを一望するのが可能なこの場所で、彼は陣取って、手のひらに構成した弓を構える。
 両眼異色―――巨大な魔力秘めた彼の目が輝くと、次の瞬間には別の手に、ひと振るいの剣が姿を現していた。……それは瞬時に光に包まれ、まるで矢のように、弓に掛けられた。
 それこそが存知、彼の戦い方だ。手のひらに構成する無数の武器。様々なジャンルの武器を連結し、作り出し、この世に存在を定着させる。しかし、それを手に握って振るうのではなく、弓に装着して掃射する―――それこそが、彼の戦い方だ。
 剣の光が消滅しない内に……その力が四散しない内に……収縮している内に……その力を解放する。
 指にはさまれた剣の柄を離すと、一気に、それはジャイロ回転しながらグールの大群の中に突っ込んで行く。
 ―――刹那、爆音。
 着弾した剣はその力を破壊力全てに転じて、その場を一掃する。大きな穴が開いたかのように、その場のグールが姿を消した。
 休んでいる暇は無い。次弾を作り出す。次は剣では無い、槍だ。真紅の槍は、その身に炎を纏っている。灼熱の槍―――それは勿論その槍の力の象徴であり、強みでもある。しかし炎を出すのはこの場所では得策ではない。
 故に、その炎の具現化を、全て破壊力に回す。光輝くそれが、炎から一撃必殺の力に変貌した時、再び弓からそれが掃射される。
 逃げられはしない。彼の魔力の干渉はかなりの腕だ。多少であれば当初の着弾位置をずらして、別の場所に着弾させる事が可能だ。細かい誤差修正をして、その後に着弾。……グールから距離を取って攻撃をしているのは、この細かい誤差を修正する時間が欲しいからである。
 それを絶え間なく、続ける。爆散しているグールの群れを見る事無く、別の方向を既に向いている。魔力なら尽きぬ……両眼異色の彼には、凄まじい量の魔力が保有されている。渇く事は無い。しかし問題なのは、その体がどこまで巨大な魔術行使に耐えられるか……
 そう、彼にとって戦いとは、目の前に存在している敵と戦う事では無い。グレイスにとって、戦いとは、己自身との戦い……己の体を蝕む巨大な魔術行使の中で、いつまで武器を作り続けるのが可能かどうかの勝負なのである。
 再び、剣を構成して、別の方角に掃射する。彼に小隊がついていないのは、こうして掃射する武器が爆散した時の衝撃に巻き込まれないようにした結果だ。それでなくとも、彼は強い。
 前者の二人―――テレシアとシャルルの一撃は、敵を生かす可能性がある。しかし、グレイスの一撃は全くそれが無い。それは爆散する勢いが二人に比べて凄まじいからである。
 両眼異色の能力を、全て戦闘特化へと回す。それこそが彼の戦闘スタイル。テレシアとは違い、一つに突き詰めている分、ずば抜けているのだ。
 際限の無い魔力を利用しようとする時、殆どの人間がその使い方を誤る。この国において、強い魔力は混沌を呼ぶ。……特に現状、魔術革新派と科学革新派が分かれているような時勢では、尚更風当たりは強いだろう。
 ―――テレシアは自らの欲望の為にその力を使う。幸か不幸か、それは世間に影響を殆ど与えない、自己満足の世界だからである。誰かに発表する訳でもなく、科学革新派に入る訳でもなく、魔術を極めようとも思っていない、そんな彼女のスタイルがあったからこそ、問題になっていなかった。
 ―――グレイスは自らの村を守る為に、一族を守る為だけにその力を戦闘のみに特化させている。元々脚を踏み入れる者の少ないプレザンスの森だ、たいした噂も出回らず、伝説にしかならない。彼もまた、そうして問題を回避して来た。
 ……爆散するグールを眺めて、グレイスは次の場所に移動する。この辺りのグールはほぼ消滅しただろう。先に進んで、さらに彼らの突破口を開く。
 
 
「派手にやッてるねェー」
 手を額の上にやって遠くを眺める仕草をしつつ、その爆音を耳にして、エリセはそう言った。向こう側には確かに、凄まじい爆破音と、飛び散る何かが見える。
 確かに凄まじい……戦いとはあそこまで一方的で、爆発音に溢れている代物だっただろうかと、シュタインは額の汗を拭う。やはり、あの三人の戦いは凄い。身近で見続けたテレシアもそうだが、グレイスも、シャルルも、かなりの腕を持っている。
 彼らの戦いを言うのであれば、まさに一人ずつが一騎当千の力を持っている。……まさに軍隊戦では格が違い過ぎる。
 こちらも負けていられない。彼らがグールを蹂躙している間に、何としても魔族の元にたどり着かなければならない。それこそが、こちら側の任務なのである。
 向こう側がグールを引き付けて、倒している間に、こちらが根本であろう魔族の方を叩く。それが作戦だ。
 後ろの方を見ると小隊がついて来ている。彼らもまた、向こう側に居る人間に劣らずの実力者たちだ。これほど心強い事は無いだろう。ついでにこの隣に教師であるエリセも居る。
「ついでッてのは酷いねェ」
「いや、でも先生、どちらかと言うと後方支援の人ですよね?」
「……まァ、そうだけど。それでも教師よ? 一応戦いの術は持ッているんだよねェ」
 不敵に笑う彼の顔。……確かに、武装されたグールを倒した腕は認めよう。戦いに特化したやり方も彼には出来るのだろう。
 しかし如何せんそのような光景をあまり見た事が無かった故に、彼が戦いを行うような光景が目に浮かんで来ないのだ。
 恐らく今回こちらの方に行動したのは、シュタイン一人だけでは心細いと思ったからだろう。バックアップの魔術を行えるのであれば、後ろに居る小隊にも力を与える事が出来る。……そんな魔族一体に対して軍隊を仕向ける戦闘方針だからこそ、このような構成になったのだろう。
 魔族の腕はそれこそ未知数。秘めている魔術の力、魔力量―――一度剣を交えたとしても完全には把握出来ない。彼は一体、どこまでの力を備えているのだろうか……
 それが解っていれば当然もう少し作戦も違っていただろう。今回はその内容が解らないからこそ、この構成で行くのだ。
 大丈夫だ。グールを駆逐したら、向こう側の三人もこちらに合流すると言っていた。何とかなるだろう。―――シュタインの心の中ではそのような考えがあった。
 こちらも一応油断は出来ない。はぐれたグールがこちら側に来る事もあるのだ。先程も二、三体はぐれたのか、出て来た為にシュタインが応戦した。エリセはシュタインの武器に強化を施しただけであった。
「言ッたでしょう? 僕はどちらかと言うと人の模造をした方が早いの」
 エリセの言い訳はそれだけだ。思い出せば、テレシアの魔術をアレンジして押し出していた光景を思い出す。
 破壊されたグールの死体の安否―――元々死んでいるのだが―――を後ろの小隊が確認して、OKの意思を示す。どうやら完全に活動を停止したらしい。それを見てから先に進む。
 周りの爆破音は相変わらずだが……いつまでも続いていると云う事は、それだけグールの数が多いと云う事だろう。
「急いだ方が良いですかね?」
「まァ、早いに越した事は無いでしョ?」
 それはそうだ。一同は先ほどよりも早足で先へと急ぐ。魔族が居ると思われる、森の位置口へと、急ぐ……
 ……先ほどから感じているのだ。異様な量の魔力を……殺気に満ちた、凄まじい量の魔力を。シュタインは彼と対峙した時のあの目を思い出す。テレシアとグレイスと同じ両眼異色の目を思い出す。強大な魔力を秘めている証拠であろう。
 その方角を辿ると、エリセの実験器具の活躍もあり、ゲーベル学院よりも少し手前の方角……プレザンスの森の入り口近くに居ると解ったのだ。
 問題は、戦闘の途中でゲーベル学院に被害が出ないかどうかの問題だ。現在時刻的には下校するにはまだ早い。ざっと、あと二時間ほど残っているであろうか……その間に魔族を見つけ出し、戦闘を挑み勝利するのはなかなか難しい。
 戦闘時は、なるべくゲーベル学院の方向に移動せず、かつ、森の方角にて相手を見失わないように戦わなければならないのである。何とも無茶苦茶な作戦であろうか。
 述べたように、相手の魔力は、本来感知出来ない不可思議要素であるそれを感じさせるほど強大な代物なのだ。そんな敵を相手に、どれほどやれるかどうか……先に勢いづいておきながらも、考えて見れば無謀な戦いを挑もうとしているのだろうか……
 数では圧倒的に勝っていても、勝利出来るとは言えない。それほどまでに相手のプレッシャーが凄まじい。
 不安はこの場に居る人間全てが同じだろう―――テレシアとエリセのような人間はどう思っているかどうかは謎だが―――。今は不安に思っていても、勝利の確信が無かったとしても、やるしかないのだから。
 グールの警戒をしてか、先から一同は戦う準備を万全にしている。
 魔術を扱える人間は脳内に発動する魔術のストックを用意し、武器を使う人間はその武器の準備をして柄に手を置き……勿論、シュタインも、エリセも準備だけは既に出来ている。
 いつグールが来ても良いように―――最悪、魔族が出て来ても良いように、こちらも万全の準備をしておかなければならない。突然現れ、準備も出来ず、抵抗も出来ないままにやられてしまえば、それこそ後悔するだろう。
 目前にいつ現れるか解らない脅威に毒される。息を、唾を飲んで、先に進む彼ら。エリセだけが涼しい顔をしている。彼は恐らくどこか歪なのだろう。このような状況下で涼しい顔をしていられるなど……考えられない。
 いや、もしかすれば彼も緊張しているのかも知れない。それを顔に出さず、涼しい顔をしているだけの可能性も捨て切れない。―――そうであって欲しいと、シュタインは思った。
 この渦巻く何とも言えない感覚。喉にへばりつく唾液の感触。喉が渇き、暑くも無いと云うのに汗が流れて来る。……それを自分で止めようと思ってもどうしようもなく、ただ拭い続けるしかない。奇妙な感触―――抑えつけられない感触を目の当たりにして、人は自らが不安と恐怖に押し潰されそうになっているのだと、思う。
 欠けている人間は恐らく、恐れを知らないのだろう。ポーカーフェイスと云う事もあり得るが、それはごく一部の人間だ。もしくは、この状況の中で恐怖し過ぎて、逆に冷静になってしまったのか……
 横のエリセをもう一度見るが、彼がそのようなタイプには見えない。どのような状況の時にも冷静さを失わず、涼しい顔をしているこの教師。恐怖のし過ぎで言葉を失うような性格ではないような気がするのだ。人の腹の内などは解らないが、とにかく、そんな気がした。
 そしてそれは彼に限った話では無い。自らが良く知る人物であるテレシアもまた、その類に当てはまるのである。
 彼女にもまたこのような恐怖が欠落しているように思えるのだ。……ただエリセと違うのは、涼しい顔をしている彼とは違い、彼女は顔を歪める。何か想定外の、愉快なものを見るかのような目で……楽しんでいるのだ。恐怖を。
 自らの予想の上を行く展開―――それにいかにして対処するのか―――それをどうすればそうなってしまうのかの考察―――全てが、彼女にとって娯楽になり得る結果だ。……それが真底楽しいのだろうか?
 常人はまず先に秤を作る。秤とは……自分自身の事を指す。その秤に、目の前の事柄と、別の事柄を掛けて、どちらを優先するかを考える。
 しかし、秤が壊れてしまっては意味が無い。この現実を測る事が出来なくなってしまう。故に、人間は誰よりも自身の身を案ずる。誰よりも、自身の身を大事にする。
 ……が、彼らは違う。テレシアも、エリセも、その秤を壊してでも、自分の命と、目の前の事柄を比べる。恐怖では無く、ひたすら冷静に、物事に向き合うのだ。
 それが悪いとは言わない。自己中心的な人間が身を滅ぼすのはよく解っている。しかし、ここまで自己中心にならない人間は、もはやどこかが壊れているとしか言いようがないのだ。
 天才とはそのようなものなのであろうか……? シュタインはそう思う。
 ……さて、当の本人であるエリセだが、果たして恐怖の感情は存在していたと言えよう。
 彼には確かに恐怖を測る天秤が存在している。そして、天秤自身が、自分だと思っている。
 欠けているのは……恐怖に対する感情そのものであった。
 天秤に危機が起こったとしても、それを守ろうとはせず、目の前の価値の秤を見続ける。喩えそれが自分の命を掛けた代物だったとしても、見続ける。そんな性格だ。
 だからこそこの状況でも、恐怖の中でも涼しい顔で目の前の出来事を冷静に判断する。……魔族と戦う自らたちと、それに抗うグールと魔族……その二つの価値を天秤に乗せて、考え続ける、測り続けるのだ。
 故に、シュタインが考えていたのはあながち間違いではない。確かに、恐怖の意識は欠落しているのだろう。
 …………そんな事を考えながら歩いている内に、少々見慣れた光景に辺りが変わって来たのに気づく。この辺りは確か、良くテレシアを迎えに行く時に入る辺りの場所だ。
 つまり、ここから彼女の家は近く、即ちゲーベル学院とも近い、と云う事である。遂にそこまで来てしまったのだ。
 彼女の家は安全だろう。彼女の事だ、セキュリティは万全であり、得体の知れない発明品か、魔術が掛かっているだろう。それを考えれば心配する必要性は皆無だ。……問題なのは、もう一方の方にある。
 ゲーベル学院は他の学院と違って、科学革新派が多い。魔術を扱う人間は限られており、防衛出来る施設も限られている。つまり何か起きた時には、科学を用いて応戦するのだが……テレシアを見て忘れる人間も居るだろうが、実際この時代であのような万能兵器は存在していない。魔族や、あの量のグールに侵略されれば、ひとたまりも無いだろう。
 魔術は万能ではない。しかし、精霊の力を借りている以上、その神秘の力で守られている。自然界の力で、見えない何かで守られているのだ。
 が、科学にはそれは無い。科学は人が生み出した代物。人工物。そこに何か自然の強力な力が宿っている訳でもなく、人的に電力や何かを補給してやらなければ、そして準備して、設置して、操作してやらなければ機能しないのである。そんな事をしている間に、ゲーベル学院は壊滅するだろう。成す術無く、何も出来ずに。
 先を歩くシュタインは、その歩く速度を少し速める。後ろに着いているエリセも、そのまた後ろに着いている二つの正体も、またそれに合わせて歩幅を、速度を、調整する。
 急げ、時間は無い―――シュタインはそんな脅迫観念にも似た何かに突き動かされて、先を急ぐ。
 

to be continued......

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