日本のヒーローは素晴らしい。
仮面ライダーの40th劇場版を観に行って来たワケですよ。レッツゴー仮面ライダーを。
いや、感動しましたね。プリキュアの時も感動しましたけど、また違った感動を味わいました。
あの正義の心、そして人々が仮面ライダーを信じている限り、仮面ライダーは死なない。そう、まさに「親愛なる隣人」と云うのはそうなのではないのでしょうか。思わずパンフレットまで限定版のヤツを買って、「ああ、こんな作品が作りたいんだよなぁ」と、胸が熱くなりました。まぁ結果として無理ですけどね(笑。
自分の作品のネタを考える為の映画と、個人的な趣味に付き合ってくれた我が親愛なる友人C氏には感謝ですな。
力には、それ相応のアレがつきまとう。力を持つ者はそれなりの責任がある。
仮面ライダーはそうした力を、自らの為に、そして正義の為に使います。
「スパイダーマン」。彼はマスクで自らを隠して戦います。彼もまた力を手に入れたスーパーマン。
彼は正義と、愛の為に戦います。
本当に、こんな事をテーマにした日本のヒーロー、海外のヒーローは素晴らしいと思います。
―――ちなみに写真は帰りに購入した本たち。
いやぁ、リルぷりっ、最高でしたね。初めて自分りんごが可愛いと思いましたよ。まさかこんなに可愛いとは思っても見ませんでした…………オレとした事が…………見誤っていたかっ!!
番外編の名月主役のストーリーも面白くて、本当に妄想が広がりまして……ッ!! これは小説の筆が進みそうですな。まぁリルぷりっ、の小説をうつ訳じゃありませんけど、いつかもう一度、リベンジしたいものです。
今日は久しぶりにハスミさんへの小説を更新です。再開しますよ、連載を!! 一番下の追記からです。
今日のトピックス
【サンデー】人がポケモンに変身する漫画、3年も企画を温めていたらしい:オレ的ゲーム速報@刃
やっている事はかなりハチャメチャな代物ですけどねぇ(笑
森の奥地。まだ踏み入れた事の無い敷地に楽しさを感じていたのだが、あまりにも変わらない事実に落胆する。
希に出て来る野生の動物も、魔物も、あまりにも変わらない。先まで居た見慣れた場所と全く同じ代物が姿を現す。……こんな事なら、早い内にこちらの敷地にも足を踏み入れていれば良かった。心配する必要性は皆無だった。
テレシアが危惧していたのは、プレザンスの森の奥地にはさらに強力な力を秘めた生物や魔物が存在しており、それ相応の準備をしておかなければ拙い―――それだ。
しかし現実とは意外な事実を突きつけて来るものだ。全てが終わったあとには、捜索範囲をこちら側まで伸ばしても良いだろう。その為の発明品は既に量産して準備完了だ。
ちなみに、先までの森の中の無法地帯と違い、今歩いている道は舗装されている。人間の手によって、人間が通れるように整えられた状態だ。つまりこの辺り一帯は、この彼らの為に作られたのだろう。
他にも、何に使うのか解らないが、様々な棒状の、カカシに似た代物も設置されていた。
「あれは戦闘の訓練用に使っている。目の前に明確な敵が居なければ、戦闘の覚悟が出来ないと云う素質を持った者も居るからな」
なるほど、まさに木偶の坊と云う訳か。
彼が指を動かすと、カカシの一体の姿が変形し、動き出した。なかなかに俊敏な動きだったが、テレシアには止まっているように見えた。―――暴走している魔力は既に収まっている。狙いを定めてただ一言告げて、一直線に展開された魔術が射出―――直撃して、カカシは元の場所に戻り、元の姿を取り戻す。
確かに、最初の内の訓練ではあれほどの速度が適度だろう。遅過ぎても駄目だが、早過ぎても駄目だ。戦闘訓練とは難しい。やり過ぎれば体を壊す事に繋がり、しかし弱過ぎれば訓練にはならない。
飛ばされたカカシの行く末を少し眺めていた、隣のエリセは愉快そうに笑ったあとに、目の前のグレイスに目をやった。グレイスは無言でそれを眺めていた。
―――グレイスと共に歩き始めて既に数十分が経過している。どれほどだろうか? 一時間は経過していないのは確かだが、三十分ぐらいは経過しているのではないのだろうか? とにかく、それほど歩いた。
そうしたところで、ようやく、それは視界に入り込んで来た。
高さは森の木々と同じ程度。屋敷の上の部分が丁度見えている。……造形としては、テレシアの屋敷に似ている感覚もあるが、近づくにつれてそれは全くの別物と感じる。
あれが、彼、グレイスの屋敷と云う訳だ。良いところに住んでいるではないか。
近づく屋敷の全体が見えたのは、道の先、ようやく開けて広場に出た辺りの事だ。こうして目の前にすると、やはり違う。自らの屋敷とは構造も、展開している結界の構造も違う―――テレシアの屋敷に関しては、結果に機械的な物を使用している為に違うのは当たり前であるが―――。
しかし丁寧な術式だ。相当の腕の持ち主がこの結界を展開、維持しているのだろう。魔力量などで語れる代物ではなく、自然界に語り掛ける絶対的な魔術の力―――まさに真の術師による結界だろう。
「この土地の周辺には、多くの同業者が家を置いている。魔物からそれを守る為に代々、力の強い巫女が、結界を張っている」
「……巫女……?」
聞きなれない用語に、テレシアとエリセは首を捻って復唱する。
「―――巫女は、極東の土地に存在している霊力の強い人間の事を言うらしい。我々はその方式に則って、この土地に存在する人間を守る、力を持った女の事を、『巫女』と呼ぶ。
巫女は力の強い女が選ばれ、毎年、強力な魔除けの結界を一帯に展開する。それを、一年間ずっと守り続けるのが巫女の役目だ」
まさかプレザンスの森に、そんな文化が芽生えているとは驚きだ。加えて、今の言いようでは、相当の人間がこの辺りには住んでいると取れる。
「そのまさかだ。この一帯に住んでいるのは、私のような同業者だけではない。町を追われて、家を失った人間や、迫害に耐えかねた人間も存在している。……つまり、オマエたちのように都市に住みたくても住めない人間が、ここには多数居る」
納得だ。それならば、これだけ大きな何かを展開する必要性が出て来る。一つの家だけを覆うのなら、ここまで巨大にしなくとも全く問題無いのだから。
……そうして説明を受けて、ついに屋敷の目の前に来る。全体図は先から見えていたのだが、すぐそこに来るのはようやくの話だ。
入れ、と言われて中に入る。ノックなどは必要ない。住んでいる人間が入れ、と言って入るのだから問題は無い筈だ。
扉を開けて中を覗く―――構造は、意外にも単純な構造だ。テレシアの家のように巨大なホールや階段が存在している訳ではなく、単純に巨大な空間に扉が存在しているだけの代物だ。
「何があってもすぐに出られる構造になっている」
「あ、なるほど」
確かにそれならこれほど良い間取りは無いだろう。二階が存在していない。皆が一階に住んでいる故に、何かがあっても先に入って来た扉から出て行く事が可能だ。
見渡す限りで、存在している部屋は十個……さらに、奥に空間が繋がっている為に、まだまだ存在するのだろう。
その奥の空間は、進むにつれて魔力が濃くなって行く、異様な雰囲気だ。まるで、屋敷の奥は異界にでも通じているかの如く。思わず、テレシアは唾を飲んだ。
「奥の部屋に―――今年の巫女の部屋が存在している。……私の、妹がな」
轟―――魔力の強大な奔流は風の如く、そのような音を立てた。今の奔流で屋敷に入って来た人間を確認したのだと、グレイスは説明した。全く出鱈目だ。まるで屋敷全体が体の一部のように、魔力を流すだけで理解出来るなど―――人間業ではない。テレシアでさえ、科学技術に頼って実現させている代物なのだ。
グレイスの妹、と言った……一体どのような容姿の人物なのか……少し興味があったが、恐らく世辞ではなく彼の容姿は美青年に近い、妹もそれを受け継いでいるのであろう。
魔力の流れが少なくなった。恐らく、その巫女とやらが中に入った人間を察知した為に、魔力を弱めたのだろう。
「それは違う。恐らく、私と云う存在の他に居る、別の土地の人間が居るのに不審を覚えているのだろう。……感じて見ろ、魔力を」
言われて、魔力を察知出来る特異能力を秘めたテレシアが、神経を尖らせて、辺り一帯の魔力を感じる。
―――なるほど、と呟く。確かに、魔力自身は引いているが、ごく一部、残留魔力にも近い、弱い魔力の流れが辺りを取り巻いている。もっと集中力を尖らせると、次第に、その流れが自らと、エリセの周りを停滞している事を知る。
確かに警戒している。魔力は自らの根源の魔力に触れる事も無く、見つめているだけ、感じているだけ。何も思わず、出方を見ているだけ。
神経を元に戻して、テレシアは前の光景に集中する。
「……纏ってるね、その巫女とか云うヤツの魔力が……渦巻いている」
「そうだろう。……大丈夫だ、巫女に直接会って、私が説明をする」
「そりャあ、助かるねェ」
他人事のように呟きながら、エリセは辺りの装飾品などを眺めている。
……奥の廊下を歩く……それが二分ほど続いて、グレイスの足が止まった。
どうやら、この巨大な扉の向こう側に巫女とやらが存在しているらしい。感じる限り―――いや、感じずとも、目に見える代物で解る。紐のような形をした強大な魔術の塊が、扉を覆っている。くぐり抜ければ良いのであるが、それに触れた場合どうなるか、想像出来ない。
「森に出る悪霊から巫女を守る為の代物だ」
言葉に聴く有名な『神社』を守る『しめ縄』と言われる礼装らしい。
物騒な場所だ。こんな場所に閉じ込められている巫女の気持ちが知れない。
グレイスの腕が動き、しめ縄の結界を解除すると、扉が開かれる。轟、と、一気にこちら側に流れ込んで来る強大な魔力の奔流を前にして、二人は一歩後ろに下がるものの、先に存在している巫女を拝む為に、前に出る。
……が、中に入った途端に、二人は首を傾げる。
巫女らしき人物がそこには存在していないからだ。
部屋の状況は、巨大なテーブルが一つ存在し、その周りにある数々の装飾品。剣、刀、槍―――様々な武器が並んでいる。どれも強大な魔力を秘めている。
だがそれだけ。それ以外何も無いのだ。テーブルの横に設置されている椅子に腰を掛けるように言われ、二人は腰を掛ける。……ここは本当に巫女の棲む場所なのだろうか?
巫女を呼びに行くのかと思いきや、グレイスはそのまま目の前の椅子に着席して、腕を組む。
「……巫女に会わせるんじゃないのかねぇ?」
悪戯な笑みを浮かべて、テレシアは問い掛ける。
「巫女は自分の意思で降臨する。その前に、まずお前たちに今この森で起こっている事を離さなければならない」
「それはそれは……ありがたいねェ」
確かにそれは聞きたかった事情の一つだ。異常なのは知っていても、彼らのようにこの森を管理する人間ほど、詳しく、深い情報を知っている者は居ないであろう。
しかし、テレシアの内心は、巫女の方が色々と知っているのではないのだろうかと思っていた。態々この男に語らせるよりは、自分の言葉で、自分の思ったままに語る方がどれほど楽か…………今そのような事が出来る状況ではないのなら仕方がないが……
反面、どうでも良いか、とも思う事情だ。この男が話してくれるのであれば、それで良い。
矛盾した思考だが、結果として自分たちよりも情報を持っているのは確か。何も無い情報よりも、一つでも多くの情報を持っていたい。
―――そうして、彼の説明が始まった。
「存知の通り、この森に異常が起こっている。グールが大量発生したり、膨大な魔力が逆流したりと、表向きになっていない情報も多い。……ま、貴様たちが設置した珍妙な機械は知らんがな」
「そりゃ失礼しましたねぇ」
嫌味と皮肉を込めて放った言葉。一瞬眉をひそめてそれに対する言葉を放とうとしたのだろうが、それを辞めて、さらに言葉を繋げる。
「当然、それに対する被害はゼロではない。子供たちがグールに襲われる事件もあった。管理する我々も、森の全域を一日で回れるほどではない。巫女の結界も、森全土を全方位しているとしても、膨大な情報を一気に処理し切れるワケではない。必ずどこかで見失う点がある。
―――それに、最近巫女の力にも限界が訪れている」
「―――あ? 巫女は代々強い魔力を持った人間が勤めるもんだろうが。魔力の底が無い―――それがオッドアイの特権だろうが」
「魔力の底が無くとも、そこに注ぐ魔力が無ければただ枯渇するだけだ。……彼女は魔力を外世界からしか補給する事が出来ない。自分で魔力を……オドを作りあげる事が出来ない。外世界、つまり森の全域を魔力で感知していればいずれ外から魔力を吸い上げる必要がある、それを人は休息の日と呼ぶ。巫女が魔力を貯める一日の休息の日だ。
が、この事件が起きて以来、既に三日以上、休息の日を取っていない巫女は、枯渇の時を迎えようとしている」
つまり、森の安泰を守る巫女の力が、本来ならば魔物や悪霊が活性化している箇所に集中すれば良い。それほど力も使わない。
だが、現状況では森の全土に異常が起こっており押さえつける力も全土に全力を注ぐ事になる。
結果、魔力を補充する時間も無く、巫女は衰弱して行く。
「うーん? でも、巫女はさッき魔力の奔流を流したよねェ? それだけの力は残ッているッてコト?」
「……いや、あれでも全力だった筈だ。本来ならもっと強い奔流な筈だ」
あれ以上の奔流……テレシアの背筋が震える。自らを、そして目の前に居るグレイスと云う両眼異色の魔術師を上回る魔力の持ち主。そんな者が存在しているのか。
興味がある。どれほどの魔力の器を持っており、底なしの魔力を全て放出した時、自然界にどれほどの脅威を、精霊に対してどれほどの影響を与えるのかを実験して見たくなった。悟られぬように妖気な笑みを浮かべて、巫女がどこに居るのかは解らないが、それらしき方角を直感で眺める。
その実験をする為には当然、この事を終わらせて、巫女に充分な魔力の補充をする必要性があるが、それだけの手間は掛けさせてやろうと、もう既に実験をする策略を巡らせる。
―――実験は興味と欲望の塊。どのような構造か、先にどのような結果が待っているのか―――それを知りたい欲望が、テレシアを動かす。
必要なのは結果であり、実験をする工程ではない。結果として何が生まれるのか、破壊されるのか、変わるのか……変革を知りたい。
そんな腹の内を知らぬグレイスは、そのまま話を続ける。
「当然、ワケの解らん敵を相手にするほど、我々は莫迦ではない。情報をかき集め、何とか対抗策を取る事にした。……何せ、森全土に異常を与えるほどの強大な力を持っている人間は限られている。私たちのように、オッドアイの人間かも知れない、複数居るのかも知れない―――そう考えて調査をしていた、ある日の話だ」
彼の腕に力が込められる。
「……一つの事件が起きた。「妖精隠し」―――我々はそう呼んでいる」
妖精隠し、と云う用語に、エリセの顔が動いた。
「ははァ、聞いた事あるよ、妖精隠し。精霊の使いである妖精が、魔力の高く、自然と会話をする事の出来る強い力を持った少年少女を誘拐して、その力を奪うとか云う伝説上の話だッけェ?」
エリセの問いに対して、グレイスは頷きを返す。
「さらわれたのは、木の実取りに行った一人の少年。幸い、外傷も何も無く、力も奪われずに帰って来たのだが…………その少年曰く、精霊に出会ったらしい…………」
「夢でも見てたんじゃないのかね」
「最初は私もそう思っていたのだが……一つ、気になるのは、彼がハッキリと意識を持ったまま、森の上空を飛んだ事と、その時に見た妖精の姿が、美しい人間であった事と強大な魔力を秘めていた事。
―――信じたくはないが……私たちは、それを、伝説上に存在する魔族ではないか、と思っている」
…………突然の突飛な発言に、テレシアとエリセの思考回路は断絶して、目を点にして耳を疑う。この男は一体何を言ったのだろうか?
魔族―――古代にプレザンスを支配していたと言われる巨大な魔力を秘めた古代生命体。しかし実際にその姿を見たと言われる文献も、人も存在せず、あくまで噂として広まる程度。完全なるフィクションの存在だと言われている非現実的な存在だ。
魔術派の人間はその存在を突き止めようと躍起になっているらしいが、目立った成果は挙げていないらしい。
傍から考えれば莫迦な考え―――だがしかしテレシアは歓喜した。
そう、彼女は既にこの事件の犯人を魔族だと、仮定していたからである。
その妖精隠しにあった少年の話が事実であれば、証明はなされる。喩え魔族で無かったとしても、両眼異色を持った人間がどのような方法を使って森全体に影響を与えるような魔術を行ったのか、大量のグールを意図的に作り出せたのか……知る事が出来る。
「……当然、その少年以外の話もあるんだろうな……」
疑問に対しての答えは、ああ、の頷きだった。予想通りの回答に、鳥肌が止まらない。
話によれば他にも多くの人間が空を飛ぶ美しい、妖美な姿を森の中で見たとの話が出て来ている。少年の妖精隠しの話は、その話の信憑性を高めるのに充分な事件だったと言う。
町の方では起こらない、ただ、この森の奥地に存在している集落にのみ起きる奇妙な事件。もし、この土地が森を守るような、警備を生業とする人間たちでなければ大変なパニックになっていたであろう。
「魔族は常人離れしている。姿は確かに人間に似ているが、秘めている魔力、扱える魔術―――様々な観点において人間を凌駕しているだろう。そんな種族のオッドアイと云うのであれば、それこそ、相当だろう……」
それも、当然、両眼異色と云う文化が強大な魔力を持っている存在となっていればの話である。人間の間での両眼異色が強大な魔力を秘めている存在と云う事が、向こう側では違う定理になっている可能性もある。何せ、体の構造も違うのだから。
「それでも確定ではない。これ以上ないほどの証拠があれば、ヤツらに対して挑む事も出来るが……」
「確かな情報が無い上に、ヤツらに勝てる計算もないってトコかなァ?」
「…………悔しいがその通りだ。
もし彼らが伝説通りの途轍も無い魔力を持っていて、強大な魔術をコントロールする術を持っているのなら、我々の勝算は低い」
だが問題なのは―――
「ヤツらが単独かどうかって、ところ、か」
―――今回、事を行っているのが魔族だとして、それを単独で行っているのか、それとも複数で行っているのか。それが解る事が出来れば、戦略は色々と変わる。それに、もし単独ならば勝機も上がる。数で押し切る事が出来るからだ。
だがもし、単独だったとして、多勢で押し入ったとしても全く歯が立たない。そんな事態も考えられる。
「解っていない、しかも戦ってすらいない敵に対して最初から最後までの状況を予想は出来ない事は解っている」
「対面しないと解らない事も多しな」
だからこそ、人は情報戦をする。相手の情報を多く入手し、そしてそれを元に戦いに挑む。情報を取られた人間はどれほどその情報を崩すかどうかを考える。
戦いとはそう云うものだ。知らない相手と、次にどう仕掛けて来るかも解らない、欺き合いをするのだから。秘匿情報を逆に流して、相手に恐怖と焦りを生み出すのも、戦略の一つとも言える。
……当然、深く考えれば、少年のさらった事も、情報戦と考えても全く問題は無いのだ。
現に見た事の無い魔族に対して様々な戦略を練り、情報の無さを痛感し……自らたちは戦いの前から、彼らに負けるのを前提に話し合いをしている。
「……踊らされているのか、それとも彼らは本当に少年をさらって何かをしたかったのか……解せんな―――」
グレイスが頭を抱えた時―――一同の神経に、何か、雷撃のような衝撃が走った。それは魔力にも似た……そう、様々な自然因子が混ざり合った、マナの奔流だ。
―――来た。
三人はいつの間にか現れている光の扉に視線を向ける。
無かった筈の白い扉が突然姿を現し、それは静かに開く。
この記事にトラックバックする