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絶望への共鳴 // ERROR

深層心理へのアクセス。結城七夜の日々。徒然日記。 裏; http:// lylyrosen. xxxxxxxx. jp/ frame/ water. html

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IF DREAMS CAME TRUE // girl ' s butler 39





これはハヤテが歩むかも知れなかった、
運命の夜の輪廻を違えた、
別の―――『IF』の物語。

その執事編。



第39話





 
 
 桂ヒナギクの姉である桂雪路は、今日、全くもって授業の無い日を、パチンコや酒を飲む日々で過ごしてしまった為に、無一文であった。……授業が無いと聴いて一日無駄に過ごした事を軽く後悔しつつ、偶にはこんな日もあって良いだろうと、自分には甘かった。
 ……振っても埃しか出て来ない財布を眺めつつ、いつも横になっている学校の当直室。体を起こして、腹の方に目をやると、何やら鳴っている。どうやら空腹らしい。昼間から寝ていて現在の時刻は二十時頃。当直室にある冷蔵庫の中身はゼロ。周りを眺めて見れば、あるのは飲み終わった酒瓶ばかりだ。
 よっこらしょっ、と一つ声をあげて、起こした体を次には立ちあがる作業へと移行する。アルコールが中に残っているのだろう、少し視界が明るく、安定しないが……普通に歩くには事足りるレベルだ。
 そうして部屋の中に置き放しになっている酒瓶を取りあげて、一つの場所に固めて置く。……この間、自らの妹に部屋が汚いと言われ、もし次来た時に片づけておかなければ、二度とこの場所への侵入、そして実家への訪問を禁止すると言われた為に、最近はかなり綺麗にしている方だ。
 頭を掻いて、部屋から出ると、外はやはり寒い。吐く息は白く、外に散布する。暖房が点いていた室内とは違い、外に暖房などと云う代物は存在していない。寒さに震えながらも、この空腹を如何に対処するかを考える。
 述べたように財布の中身は零。給料日が近いとは言え、この状態で一週間も過ごす事は出来ない。中身の無い財布を握って、何かを食べられるとしたら方法は二つ存在している。
 ―――一つ、デパートなどの試食品コーナーにて、試食するパターン。
 そして二つ目は、実家に戻って義母の食事を貰うと云うパターンだ。
 どちらが一番楽かと言えば、後者が一番楽であろう。何せ羞恥心が必要無い。デパートなどの試食品コーナーは確実に対人戦になって来る。人の手前で、しかも無料の代物を食べ続けるのには抵抗が存在している。……空腹で死ぬ間際の人間が思考するモノではないが……
 しかし、家に帰ればそれはない。遠慮一つ、する必要が無いのである。手前に出て来た料理をどう食そうが、全く文句一つ言われずに、完食しても問題何一つ無い。まさに実家とは理想の楽園である。料理も美味い。
 そう考えると、やはり実家には帰りたくなるのだ。誰しも敬遠するようになる実家への帰還も、一度でも実家の事を考え、父親母親の事を考えると、懐かしさに胸を躍らせ、いつの間にか帰宅道を通っている。
 雪路も同じ状況であった。いつの間にか―――食事の為とは言え―――自らの家の方角へと足を運んでいたのである。
 随分前に一度実家に戻って、自室に入ったら、見ず知らずの少年が居た事には驚いたが……あとから訊いた話、未だに彼は自室にて居候しているらしい。つまり今日言っても彼は居る訳だ。自分が休む場所など存在していない。
 これから実家に帰ったとして、たどり着く時間帯が二十一時を越えたとしたら、まずまた元の当直室に戻る気力は存在していないだろう。ずっとそのまま家に滞在していたい気持ちになるだろう。
 ……しかし、その場所を考えなければ、全く問題無い。夕食を貰えるだけでもありがたいと思えば良い。
 そんな気持ちで歩く事十分を少し過ぎた頃合に、見慣れた家の目の前に立っていた。……横目で庭を見ると、灯が点いている元自室。やはり彼があそこで生活をしているのだろう。自分は追い出されたと云うのに、何とも良い待遇を受けている事か…………いや、母親はゆっくりして行けなどと良く言うか…………
 そうして視線を目の前にして、インターフォンを押すと、しばらくして、目の前に義母が出て来た。
「あらー、どうしたの?」
 いつも通りの柔らかい笑顔で迎えてくれた義母はいつも通りだ、変わり無い。少し安心するも、今は自分の腹の事情も察してやるべきだ。
「いや、その……晩御飯をごちそうになろうかなぁーと……」
 苦笑しながら頭を掻く仕草をして、そう述べると後ろから―――
「あ、ヒナギクさんの……」
 ―――例の彼が現れた。小屋の方に行っているかと思いきや、どうやら入浴していたらしい。軽く、そして湯気の出ている体がそれを表している。
 久しぶりにあった彼の体は、前会った時よりも少し、大きく見えたが……いや、しかしそれでも普通の少年クラスで考えればまだ細身で小さい方である。身長はどれほどか忘れたが、恐らく、丁度良いか、それよりも少し低いか。
「あ、ハヤテくん、頼まれてくれるかしらー?」
 
 夕食にはたどり着く事が出来たが、しかし、自らの母親の料理ではなく、居候の彼の料理であった。
 しかし予想以上に素晴らしい出来であり、口に運んだ瞬間に驚きを隠せなかった。……これが彼の料理だと云うのか……? あり得ない。
「僕、料理とか家事全般が好きなんですよ」
 食事を行っている雪路の後ろで、先に洗い物を済ませている彼の言葉。一瞬信じられないとばかりに目を細めて、眉間に皺を寄せた。
〝女かよ……〟
 そうしてそんな事を思考した。
 だが、近年料理や掃除などの家事に関心を示すのは何も女性だけではない事を言っておこう。現に、料理人には、料理などに関心のある女性よりも男性の方が多いとの話だ。手先の器用さ、繊細な動きは、男性の方が向いているとも言われている。
 ちなみに、雪路本人は料理こそ出来るのであるが……出来ない訳ではない、のレベルに留まっており、あまり達者ではない。そもそも人に料理をする機会も無く、食事事態も、自分で作るよりは買って食べた方が美味いとの認識だ。寧ろ、逆に男性が作ってくれれば良い、とは思っていたのは確かだ。
 その点考えると、ハヤテほど彼女に合っている人間は居ないだろう。……当然、現時点での話であるが……
 しかし、歳の離れている彼を恋人にしたいとは思っていない。年齢を気にするようにはなったものの、まだ恋人を作ろうとする念よりも楽しく酒を飲んで、学校で生徒たちに授業を教えて居た方が有意義と考えているのだから。
 食事を終えて、背伸びを一つすると、部屋のソファーに横になる。食事を終えるとどうにも睡魔が襲って来る。……昼間まで酒を飲んでいただけあり、まだアルコールが残っているのであろう、眠気は仕方の無いものだ。
「あの……そのままだと風邪をひきますよ……?」
「あんー? 良いのよ大丈夫! 今は眠いから寝かせて…………」
 ……数分もしない内に、彼女は寝息を立てて寝始めた。
 ハヤテはそんな彼女を見て少しため息を吐くと、リビングから出て、二階の押し入れから毛布を持って来て彼女に掛ける。
「お姉ちゃん帰ってたんだ」
 ―――と、そこに、ヒナギクが姿を現して今気づいたと言わんばかりに、そう言った。
「え、あ、はい。今夕食をお食べになりまして……」
「もー、お母さんはちょっとお姉ちゃんに優し過ぎるのよねぇ」
「あはは……でも、丁度今眠ってしまったみたいですよ、お姉さんの方は」
 ソファーで横になる姉に対してため息を一つ吐くと、ヒナギクは背中を向ける。どうやら部屋に戻るらしい。
「……ハヤテくん……明日もよろしくね」
 階段を登る前に、彼女はそう言って……
「はい」
 そう答えた。
 
 就寝。ヒナギクはいつも通り、勉強をして二十三時には就寝した。ハヤテも、日課を終わらせたあと、二十三時少し前に明日に備えて就寝した。……義母の方も、二十二時半頃には部屋の電気が消えていた事から、その頃合には就寝していたのであろう。
 時刻一時十五分。そんな中途半端な時間に、雪路は目を覚ます。欠伸を一つして、暗闇の部屋の電気を点けると、その中途半端な時間を見る。
 ……上に掛けられていた毛布は寝ている途中で落としてしまったらしく床に落ちている。自らは落ちなかったようだ。
 寝ぼけた頭を叩いて起こすと、トイレに向かう。
「―――?」
 そこで、妙な気配を覚えて、トイレのドアノブから手を離して、鍵を開けて外に出る。外は寒く、風が強い。……また雪でも降るのだろうか? と嫌な考えを起こして首を振る。
 そうして外に出ると、庭の方に足を運ぶ。早い内に、気になる事は終わらせて、家に戻ろう。寒い。しかも履いている靴がサンダルの為に尚寒い。裸足のまま寝てしまい、そのままトイレに行こうとした故に、靴下など履いて来る暇が無かった。
 寒さに堪えながら、庭に足を踏み入れると、小屋に電気が点いていた。
 ……おかしなものだ。彼はまだ起きているのであろうか? 聞いた話では、現在学校で行われている行事にヒナギクも彼を連れて参加しているとの話。こんな時間まで起きていて、明日動けないなど言ったらヒナギクに何て言われるか解っている筈だが……
 気になって、そのまま足を運んで行くと、小屋をノックする。小さく、それこそ本当に聴こえたかどうかが解らないぐらい小さくノックした。
 当然のように反応は無かった為に、そのまま扉を開けると―――
「……へ?」
 ―――そこに、どこかで見た事あるような少女が、立っていた。
 声をあげようとした瞬間に、その少女の体が動いて、雪路の口を手で塞ぐ。
「黙っていなさい」
「ふぉが! ふぁがふぁが!?」
 それでもなお動こうとする彼女に対してしびれを切らせたのか、舌打ちをして、彼女の目を視る。
 刹那、それだけで雪路は体から力が抜けたかのように崩れて、その場で目を閉じる。……それを確認すると、少女は最後にもう一度、彼の顔を見たあとに、雪路を外に引きずり出したあとに、庭を抜け、道路へと行く。
 そこにあった車に乗り込むと―――逃げるように、立ち去って行った。
 
 雪路がどうして外に寝ていたのか、本人すら知らなかったようだ。しかし、おかげで彼女は風邪をひき、現在は義母の部屋にて療養中である。
 しかし、それにつきあっている暇は無いと言わんばかりにヒナギクは彼女に対しては何一つ言わず、朝の日課をこなし、そして―――執事VS執事の、最後の戦いに赴く。
 
 


to be continued......next week

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