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絶望への共鳴 // ERROR

深層心理へのアクセス。結城七夜の日々。徒然日記。 裏; http:// lylyrosen. xxxxxxxx. jp/ frame/ water. html

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IF DREAMS CAME TRUE // girl ' s butler 32





これはハヤテが歩んだもう一つの『IF』の物語―――の、執事編。












 
 
 シャワールームでシャワーを浴びていた少女は、愛沢咲夜と自己紹介した。
 ああ、とすぐに頭の中に答えを見つけ出した。資産家の集まるこの白皇学院といえども、なかなかの家柄の人間だと知っていた。相当の資産家であり、三千院家の次を行くのではないかと言われている。
 聞いた話では、執事VS執事に出場したらしいが、すぐに負けてしまったとの事だ。帰ろうと思ったのであるが、試合内容が気になった為に残る事にしたが、いかんせん、汗だらけの体は嫌だと思い、シャワールームを失敬したとの事である。他の部室でも良かったのであるが、一番近くにあったのがこの部室だったと云うのは蛇足だ。
 その理由を聞いてヒナギクは安心した。不審者が居ると思っていた為に、咲夜だったと云うだけで、相当安心感があったのであるが、理由も知りたかった為にさらに安心した。
「へぇ、生徒会長さんは初戦突破したんかいな」
「ええ」
「……まぁ、突破しないとあかんけどな。生徒会長の座を奪われまうからなぁ」
 考えてみると、凄い話だな、と思ってしまう。そもそも、あの臨時理事長の毎回奇抜な想像をする頭の中身を覗いてみたいものだ。……一刻も早く、本当の理事長が帰って来てくれる事を願う。
 ――だが、もし本当にその理事長が返ってきた時、自分はどのような顔をして彼女を迎えれば良いだろうか――。少し、昔の事を思い出して、考えてしまった。あの時の事以来、全く口も聞いていないまま彼女は居なくなってしまった。どこに行ったかはわからない。ただある日突然、理事室にしばらく留守にする旨を告げて、居なくなっていた。
 ……理事長。この白皇学院の理事長。彼女とヒナギクの関係は決して遠いものではなかった事は、確かだったはず。だと云うのにたった一つの放った言葉だけで、簡単に崩れてしまうものだった事も確かなのだ。
 首を振るう。今はそれを考えるべき事柄ではない。過去よりも今を考える時なのだ。過去の事を掘り返しても、あるのはそんな事実と、幼少期の辛い思い出だけ……思い出すのはこう云う時ではなく、別の時だ。
 しばらく無言で前を眺めて歩いていたヒナギクの内心を察していたのか、間、咲夜は何も呟かなかった。気遣いに感謝しつつ、微笑すると、大丈夫の旨を同時に伝える。
「しっかしなぁ、このふざけた催しってのを思い出す理事長の顔が視てみたいわな……あぁ、今は臨時か……」
「まぁ、視てくれは悪くないんだけどね……考える事がいちいち奇抜と言うか、何と云うか……」
「あはは。こんな催しを考えるぐらいや、奇抜なんて通り越してるやろ?」
「そうかもね」
 微笑気味に、言葉を返した。
 
 
          ×          ×
 
 
 ドームの手前まで来て、もう一度後ろを振り向いて視ると、先視たメイド服にサングラスと云う格好の奇妙な少女がやはり、あの場所で立っている。……本当に何なのだろうか? この学院は本当に奇抜な人間が多過ぎる。このような事を考える理事長と言い―――資産家、いわゆる金持ちとは全員こんなものなのだろうか?
 さて、ヒナギクにはこの辺りで待っていろと言われている。何せ、ドームは広い為にあまり中に入って人ごみにまみれるよりも、視渡しの良いこの場所で待っているのが、彼女にとっても視つけやすいだろう。
 気が緩んでいるのか、欠伸が一つ出た。一粒の涙を指で拭って、肩を回す。さっきのヒナギクとのコンビネーション特訓や、模擬戦での疲れは取れている。いや、あれくらいなら良い準備運動になっただろう。
 これからの戦いでベスト8が決まり、残りは明日の二日目で決まる……嫌でも、明日の昼ごろには新しい生徒会長が決まるか、桂ヒナギクがそのまま座を守り続けるかが決まってしまう。やる以上、そして彼女の意思を尊重する為に、負ける訳にはいかない戦いがそこにはある。
 いつでも行ける万全の状態は出来ている。腕時計を眺めると時刻は十三時を回った頃合。そろそろ選手待機室に向かってくじ引きによるトーナメント表を確認しなければならないのであるが……目を細めて、見渡してもまだ彼女の姿が視えない。まだ時間があるとは言え、時間には厳しい彼女には珍しい。
 待ち続ける事、約五分。二回戦開始の十分前に、ヒナギクは姿を現した。隣に、見知らぬ少女を引き連れて、現れたのである。
「ヒナギクさん。遅かったですね」
「ごめん、ちょっとね……」
 隣に少女に視線を向けると、もう一つ、視界に入ってくるのはサングラスをかけた先のメイドなのである。
「さ、咲夜さん……」
「おお、そういやそのまんま放ってきてしもうたな。かんにんな」
 …………あれだけ気になっていたサングラスメイドが、この咲夜と呼ばれた人間の知り合いだとは思わなかったが、一体どのような関係なのだろうか? 無論、咲夜とメイドではなく―――二人は恐らく主従の関係だろう―――咲夜とヒナギクの関係である。友人だろうか。
「まぁ互いに知らない仲じゃないけど、こうして話をするのは初めて―――の、関係かな?」
「そやな」
「――、」
 ハヤテと、そのメイドは首をかしげる。
「それよりも、早く行かないと間に合わなくなっちゃいますよ! ヒナギクさん!」
「そうね、じゃあ、また後でね、愛沢さん」
 
 
 敗退していない人間と云う旨を受付に伝えて、控室に入る。敗退していない人間の顔写真をファイリングされているようで、すぐに通してくれた。……こう云うところに人員ではなく、金を使っての高価な機械を使うべきではないのだろうか、とハヤテは思う。金銭の使いどころを間違えている。
 ドームの直下に控室は存在しており、わざわざ階段を使い上にあがらなくとも、エレベーターで直接ドームの中央に設置されているフィールドにせりあがる仕組みになっているらしい。
 待機室には自分たちと、一足先に向かっていた康太郎と楓の二人しか存在していなかった。他にも予選を勝ち抜いた他の選手が集っているものかと、緊張して扉をノックした自分たちが馬鹿のように思える。何も緊張する必要のない面なのだから。
「他の人は居ないんですか?」
 設置されているベンチに腰を掛けて問い掛けると、ええ、と返ってくる。
「私たちの戦力は完全に分析し終わったのか、それとも、来る必要がないとわかっているのか―――どちらにしろ、姿を現さないのでしたら仕方がありません。試合前に姿を現すかもしれませんよ?」
 いつもの笑顔を絶やさずに言う楓の言葉に、ハヤテは頷く。―――一回戦が終了した時、指を差されて視つめた先には、棄権者が多く存在していた。既に、ベスト8が揃っていると考えても不思議ではないと云う事である。残っているのは、腕に自身のある一流の執事だけと云う訳か……ネクタイを締め直して、モニターを眺める。
 理事長代理の、そのまた代理の人間が、モニターの向こう側で抽選をしている。抽選をする人数は残っているのか……顎をさする。
 三十秒後、二回戦、第一試合のカードが決まる。
『レッドコーナー―――桂ヒナギク・綾崎ハヤテペア!』
 最初からの自分の出番に、気合いが入る。アイコンタクトでヒナギクと準備の確認をして、頷くと、レッドコーナー用のエレベーターに乗り込む準備をする。……その間に、対戦相手のアナウンスが入るのである。
『ブルーコーナー―――三千院ナギ・執事仮面ペア!』
「へっ?」
 思わずアナウンスに耳を疑い、素頓狂な声をあげてしまった。今の、三千院ナギと云う言葉にもそうであるが、次にアナウンスされた、執事仮面、と云う名前に対しての声と言った方が正確だろう。
 あの三千院ナギがまさかこの大会に出て、しかも生き残っているとは全くもって予想外だった。有能な執事であった姫神を失っている為に、絶対に勝ちあがってくる事は不可能だと思っていたのだが……他の有能な執事を視つけたのか――? それならば、わざわざ本名を隠して執事仮面などとする必要性はないと思うのだが。
「誰が相手だろうと、負けません……」
 色々と考えるヒナギクに対して、ハヤテがそう言う。
「……そうね。
 行きましょう―――」
 はい、と返ってくる言葉に心強さを感じて、エレベーターのボタンを押す。閉まる扉の向こう側から、康太郎と楓の激励の言葉を受けて、親指を立てる。
 機械音が響いて、上にあがっていく、下から突きあげられるような感触と揺れ。体感する事十秒ほどで、揺れと音がおさまり、扉が開く。
 …………………煙の向こう側――――存在しているのは、本当に仮面を着けた、男だった。
 
 



               </-to be continued-/>

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