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絶望への共鳴 // ERROR

深層心理へのアクセス。結城七夜の日々。徒然日記。 裏; http:// lylyrosen. xxxxxxxx. jp/ frame/ water. html

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IF DREAMS CAME TRUE // come on sweet and cool days 16




時は進んでいく、少年の日常と日々を乗せて。



これは、ハヤテが歩んだもう一つの『IF』の物語。






 ハヤテが歩の家に行ってから、五日が経過した。
 朝起きて、食卓の準備をするのは何時も通り。途中でヒナギクが起きて来、テーブルに着く事も何時も通りの光景であるが……今日のヒナギクの姿は何時も普段着ではなく制服を着ていた。ヒナギクの制服姿に、少し見惚れていたが、そういえば、と思い、食卓に今日の朝食を出す作業を再開する。
 そう、今日から白皇学院は授業が、学校が再開されるのである。生徒会長であるヒナギクである、制服も規定通り着こなし、そして部活用のバッグを持っていた。
「今日から学校ですね」
 笑顔で言うハヤテに、ヒナギクはそうよ、と言って差し出されたコーヒーを口にする。
「って言っても、今日は始業式だけで、一般の生徒は終わりなのよ。部活のある人間だけその後残って練習が出来るだけよ」
 成る程、と肯くハヤテであるが、よく考えてみれば、最近の高校は始業式の日にも授業が存在しているのが殆どである。嘗て通っていた潮見高校も、今日から授業であろう。――そう考えると、白皇学院の授業制度は中々に周りとは違うものがあるのだろう、流石は名門である。加えて、午後からの部活と云う事で作っておいた弁当が無駄にならずに済んだ。
 そんな考えを纏めるハヤテであるが、それをあっさりと否定された。
「あれよ、お金持ちの子って基本的に体力が無いのよ。だから生徒が集らないと悪いから……」
「ああ、休日になるんですね」
 確かに、金持ちの人間に幾ら学校に来る様に促しても、結局、学校になど行かなくとも生きていける資産はあるのである。集る筈が無い。ならば金の無駄である、学校をいっその事休講にした方がその日の給料を職員に払う必要は無い。
 その辺りは、上手いと云うか、若しくは金持ち集団の出し惜しみと云うべきか……悩む所である。その様な制度を作るとは、一体どの様な校長なのか、少し気になって来た。
「白皇は校長じゃなくて、理事長が統括しているのよ」
 そうなんですか、と返す。校長ではないのか、流石は資産家の通う資産家の学校である。遣るべき事も、そして規模も凄まじい。その敷地も凄かった事を、ハヤテは思い出す。あの学校のグラウンドと云うものは一体どれ程の大きさを誇っているのか……それ以前に、学校の敷地はこの練馬に収まっているのかそれが謎な所である。
 あの学校、執事と呼ばれる腕利きも存在している。――金持ち全てが執事を雇っているとは思えないが、それでも執事は皆あれ程の力を秘めていると云う事か……。体を鍛えている身としてはあの強さは凄まじいと想っていたところである。
 あそこまで執事が強くなれると云う事は、矢張り白皇学院にも執事を養成するコースでもあると云うのであろうか?
「ないわよ。白皇学院は確かに執事の入学を認めてるけど、執事だけのコースは存在しないわ」
「そうなんですか? 僕はてっきり……」
 ハヤテが考えている間にも朝食を食していたヒナギクは、食べ終えた朝食の皿を流し台に置きながら説明をする。
「野々原さんとかも皆普通に学校の授業に出ているのよ。後の執事の教育は、それは家が長男にやらせる為に教育させたり、あとは執事自身の実力とかがあるわね。だからあの学校に通ったからと言って、強い執事になれるかどうかは微妙ね」
 ……自らの実力だけであそこまで上達したと云うのか……我流で鍛えて来たハヤテであるが、とてもあの野々原と云う人物に勝てる気がしない。何やら必殺技と云うものまで身につけているのであるのだから……あの必殺技に勝つには、自らも必殺技を得とくするしか無いのであろう。
 そんな事を考える内に、ヒナギクが既に歯を磨き、準備を整えて、家を出る寸前であった。
「あ、行ってらっしゃいませ」
「行ってきます。ちゃんと家お願いね」
「はい! 任せてください!」

 ――ハヤテの日課は、先ず朝食作りから始まり、そして部屋の掃除、そして風呂掃除と続く。流石に洗濯物を干すのは引ける為に、その辺りはヒナギクの義母親に任せている。加えて、ヒナギクの部屋の掃除もしない。その辺りはヒナギク自身がしている。
 しかし、この家もそれなりに広い。庭の真中に存在する自らの部屋を掃除しながら、ハヤテはそう考える。此処に居候になってから暫らく経つが、未だに良く解らない部屋も存在している。――特に、ヒナギクの義父親の部屋である。あの部屋は一度も入った事も無い。無論、掃除しなくても良いと言われているに加えて、許可なしに人の部屋に入る事は出来ない。
 自分の部屋の掃除を終える。ベッドのシーツを取り上げて、洗濯機に持って行く事にする。枕はシーツが外せ無い為に陽の光に当てる事にする。
 籠にシーツやらを入れ、ハヤテは家の中に入り、洗濯機の中にシーツを入れる。電源を入れると、音を立てて洗濯機が動き始める。
 溜息を一つ吐き、ハヤテは時刻を見る。……そろそろ一一時を回ろうとしている。始業式は終わり、部活が始まっている頃合であろう。やるべき事を終え、昼食の準備に取り掛かろうと、再び台所に脚を運んだハヤテであるが……
 その台所、流し台の横に四角の包装に包まれた何かを発見した。――何処かで見た事があるカタチであるが……と、考えた所で顔面が蒼白になって行く事を感じる。
 そこに存在しているのは、ヒナギクの為に作った弁当であった。

          ■■■

 竹刀を置いて、肩に掛けたタオルで汗を拭くと、スポーツドリンクを一口飲む。スポーツをしている中では、水分補給が重要な位置付けになってくる。体が乾く事により、人のパフォーマンスは著しく低下するのである。
「桂さん、スポーツドリンクのおかわり入りますか?」
「あ、おねがいするわ、東宮くん」
「はい!」
 内心でガッツポーズを取りながら康太郎は横においておいたスポーツドリンクを取り出し、ヒナギクのカップの中に注ぐ。……その姿を、野々原楓は、微笑しながら、背中を壁に預け、見つめていた。
 ――それにしても、あのヒナギクの隣に居た少年は、矢張り執事ではなかったのか、姿を見せない。あの少年とは、今一度手合わせをしたかったのであるが……残念である。
 それにしても――
「坊ちゃま……」
「なんだ、野々原?」
「さっきから練習してないで……スポーツドリンクばっかり渡しやがってゴラァあああああああッ!」
「ぎゃやああああああああああああああああああああああああああッ!」
 剣道部は今日も平和なのである。


 弁当を持って、自転車を漕ぐ。この間、ハヤテの部屋の後ろに存在している小さな倉庫の中に存在している使われていない自転車を見つけていた為に、それを自分の所有物にしても良いとの達しを受け、色々と整備をしていたのである。
 が、矢張り資金上の問題と、整備用品が桂家に余り存在していなかった事から、整備は難航しており、余り宜しくは無い状態である。
 漕ぐ度にチェーンは妙な音を立て、タイヤは直ぐにパンクをして、走るたびに音を立てて上下する。加えて馬力が出ない。この状況下でチェーンの段階を変更すれば、確実にチェーンが外れる。
 腕時計は一一時半を示している。……桂家から白皇学院へのルートをまだ覚えていないハヤテは、兎に角行ける所を走り、地図を見つけるなり進路方向を変えると云う強硬手段に出ていた。
 一二時までに部室に着かなければならない――ハヤテの後ろでは、何やら、効果音を立てて、カウントダウンが始まっていると云うドラマの様な展開が起きていた。空腹の中で活動をする事がどれ程大変な事か、ハヤテは良く解かっていた。
「ああ! くそ! どうして僕はこう……」
 何時も肝心な所でしくじるのか……いや、別段肝心なところでもなければ、この程度なら良くあることであろう。只、ハヤテにとってはかなり拙い状況だと云う事である。
 ――そうして、坂道を登り、下る向こう側に、漸く白皇学院の時計塔が見えた。文字盤までは見えないが、腕の腕時計を見ると、残り一五分を切った……この坂を全力で漕げば、後先考えなければ、何とか間に合う可能性もある。問題は、正門の所に存在している警備員の存在である。真正面から行き、ヒナギクの知り合いだと信じてもらうのは至難の技であろう。
 だが考えている暇は無い。自転車を全力で漕ぐ。幸い、目だった交差点も無く、車に轢かれることも無く、そのまま直進する。
 ――しかし、現実はそう甘くは無い、途中で、脱輪した。
「へ――?」
 加えて、チェーンが妙な音を立てて外れた。
「は――?」
 不幸は続き、ブレーキも故障した。……打つ手無し、ハヤテはそのまま坂を転げ落ちる。
「――だっ! け! どぅっ! ユニバァアアスッ!」
 そうしてハヤテは白皇学院の正門の横に存在する壁に直撃して止まった。良く生きていたな、と、ハヤテ自身、頭を擦りながら立ち上がる。どうやら軽症で済んだようである。只、目の前に存在している自転車は重症であるが……
「って、今はそれどころじゃない!」
 弁当を取り上げて、ハヤテは敷地内に入ろうとするが……
「――不審者発見――」
 当然、そう処理されてしまうのである。



          to be continued......


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