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絶望への共鳴 // ERROR

深層心理へのアクセス。結城七夜の日々。徒然日記。 裏; http:// lylyrosen. xxxxxxxx. jp/ frame/ water. html

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ALICE / drive ACT 5







1/1










 
 
 少し、妙なモノを見た様な気がした。ガールズバーに行って遊んで来た川崎千裕の目に、先ず飛び込んで来たのは、何やら様々なモノを紙袋に入れて抱えている男であった。如何見ても、珍妙な格好であり、周りの視線を買っている。
 無理も無い。着ている服はスーツとは何か違う服装なのである。まるで、自らが見ているアニメーションの艦隊の艦長の様な服装である。一般にも解る様な言葉を使うのであれば、国防省の省長が着ている様な服装である。
 あの様な服装をしていて、知っている人間は一人しか居ないのであるが……それ以上に、その手に持っているモノが問題である。飛び出ているあの部分だけ見ても、あれは相当の数のスパイスなのである。恐らく、あの下に存在している物は食材であろう。玉葱、人参――等々、カレーに使われる食材であろう。
 拙い。此処であの男に見付かれば今日も餌食である。自らはこれから庭園の自室に戻って、死んだ様に眠ろうと思っていたのである。此処で捕まってたまるか。足を速めて、庭園のある国立図書館へと急ぐのであるが……生憎、男には、他人の魔力の量、流れを感知する奇異な能力を持っているのである。通常の魔術仕いには不可能な芸当をやってのけるのである。
 何か、嫌な予感がした。男を通り抜けた辺りから、何か嫌な感覚が背中を離れないのである。何か、悪霊でも、背中に居るかの様に――
 しかし、いざ後ろを振り返って見ると、そこには誰も居ないのである。考え過ぎであろうか……頭を振って、目の前を見る。そういえば、振り返った時にそこに居る筈の男が姿を消していた。まぁ大方、生物を買いに行ったのであろう。肉は生でそのまま買うには長持ちしない。本当に本格的な肉を使うのであれば、生で買って、そのまま使うのである。
 背中の嫌な感じを気にしても仕方が無い、何も居ないのである、ならば別段問題は無いであろう。それに、背中から突然襲われて、陵辱されると云うシチュエーションも、千裕であるのなら全く問題の無い事柄である。寧ろ望む所である。
 さて、気にする事の無くなった千裕は、そのまま歩の速度を上げる事も無く、只、何時ものペースで、寧ろ先程よりも遅いペースで、庭園の本部が存在している国立図書館に辿り着く。
 受付の女性に目とカードで合図をして、後ろを通り、エレベーターに乗り込む。生憎、誰も乗っていなかった。何時もなら忙しい雑務の人間が数人乗っているのであるが、珍しい日もあるものである。
 ――千裕には解らない事であるが、今現在庭園では、将軍があの夢崎の封印を解放した事により、資料の書記に追われており、それ所では全くなくなっていたのである。
 轟、と音を立てて、エレベーターが動く。下から突き上げられる様な感覚は、未だに慣れないが、良い。男に陵辱されていると思えば快楽に代わるであろう。背中を壁に預けて、一番上のロイヤルガーデンに辿り着くまで待つ。
 ……居るだろう、ロイヤルガーデンに。あそこに、あの少女は存在しているであろう。一度、話をしてみようと思っていたのである。無限書庫に閉じ込められているあの少女に何度か言葉を掛け様と思っていたのであるが、その度に任務や、死屍の討伐に当たらなければならなかったのである。
 久しぶりに解放されると聞いて、そうなればロイヤルガーデンに行くであろう。それくらいは解っている。
 目の前の扉が開いて、その場に空間が開ける。ロイヤルガーデン――マカロニ将軍が手入れをしている屋上の庭である。一体、此処の高度がどれ程あるか、解っているのであろうか? 突き抜ける風が凄まじいのであるが、その辺りは、魔術使いが張った結界によって防がれている。流石は魔術使いである、やるべき事が自然摂理を凌駕したモノである。
その向こう側、この庭の一番奥の、一歩間違えれば落ちるであろう、その場所に、目的の少女は腰を掛けて、行き場を失っている脚をふら付かせていた。同じ女として、何を訊くべきか解っているのであるが、どうも、この少女は取っ付き難いのである。
 取り敢えず、隣まで歩を進めてみようと思う。そこまで行かなければコミュニケーションを取る事は不可能である。
 そうして、隣の場所に腰を掛けると、結界も既に綻びが生まれ始めてきているのか、少し、風がこの場所はある。後ろで纏めている髪が靡く、無論、今は隣に存在している目的の少女――夢崎も、その長髪を靡かせていた。
 暫らく沈黙を保っており、この結界の中に存在している光景を見、そしてそろそろこの結界を補強する必要性があると悟る。この結界が破られれば、国立図書館の上に巨大建造物が存在している事が一般民衆に知られ、同じに庭園の存在自体も世間に伝える事になってしまうのである。
 それは、魔術仕いの存在を知らせるのと同義である。
 ――しかし、此処一〇〇年間補強が行なわれていないらしいが、一体誰がこの結界の補強をするのであろうか? 普通の魔術仕いで出来る程簡易には出来ていないであろう。それに、下手に普通の魔術仕いにこの結界を弄らせて、逆に能力を低くする事にも繋がると云うリスクも存在している。
 厄介なものである。一体何故に、この様な場所に作ったのかが疑問である。元々、地下に庭園の組織があった際に、国立図書館を建設する話が政府より来、庭園の施設を秘密裏に内部に作ると云う交渉の結果、この様な立地条件になっていると聞いた事があるが……
 政府の人間は、魔術と云うモノが御伽噺に出て来る不可能を可能にするモノだと過信し過ぎているのである。実際の魔術は、存在と云う事柄や、人間の地位と云うモノに左右されるモノだと云うのに。
 人が扱える、仕事関係の様に仕えるのは、本当に人が扱える範囲である。中にはそれを逸脱した者も存在しているがそれは本当に希なケースである。魔術とは、人間が現段階で確立している、世界と云う概念から見た、人間の地位によって影響するのである――人間と云う存在よりも地位が低い概念しか扱う事が出来ないのである。
 人類が古来より仕える様になった火の概念――そして水、等々、その様なモノは仕えるのであるが、あくまで、それは付加程度であり、完全な火の魔術を行使する、完全な水の魔術を行使する、などと……有り得ない。
 発火とは魔術で良くある事であるが、これは火の概念を滑り込ませる存在を広げただけの話である。仕っている魔術は何等変わらない。
 話が反れた、枝毛を発見し、それを弄りつつも、千裕は漸く口を開いた。
「アンタと話すのも、本当に久しぶりね。前に会ったのは……」
 記憶を手繰り寄せる。さて、一体何時頃の話であったか……
「そうだな、もう、四年ぐらいになるか。前回の時は確か、死屍の、ヴィルス・ウィルソンとの対決の時だったか……」
 ああ、その様な事もあった。千裕は四年前の事柄を思い出す。死屍の中でも、相当の指折りに入る存在であり、この庭園のシステムにIT技術を用いてハッキング、麻痺した所を一気に仕留めに来たと云う前代未聞の方法を取ったのがヴィルス・ウィルソンである。
 その討伐、阻止の為に出されたのが、当時、まだ弟子入りして間もなかった川崎千裕と、この少女、夢崎である。処分する事は出来なかったが、庭園より追い出す事は出来た。今は何処に居るのか、全く不明な所である。――死屍の問題の所は、人として死を迎えている為に、半不老不死と云う点に存在しているのである。殺されると云う事が無ければ、彼らは行き続ける――何十年も、何百年も……
 今の所、ヴィルスが討伐されたと云う報告は耳にしていない。つまりまだ生きているのであろう。
「何の様だ?」
「――ん、まぁ、ほら、同じ女って事で話でもしよーかなーって……」
「女なら、エリザベスだろうが誰だろうが居るだろう?」
 ……それを言われてしまえばそれまでなのであるが……他所を向く、これだからこの少女と会話は長く続かない上に、嗜好が合わないのである。自らは何故この少女と会話をしようと思うのか不思議な所であるが、一応、同じ女と云う立場に居る以上、何か、通じるものがあるのであろう。無論、向こう側がその様な事を考えているかどうかは不明であるが。
 また暫らくの沈黙が場を支配するが、今度は意外にも夢崎の方から口を開いた。
「――あの少女は……」
「え?」
「あの、人格の変貌する少女は何者だ?」
 ――意外だ、この少女は他人の事など一つも気に留めない人物かと思ったが、一応、他の人間が気になると云う事はあるのか……。しかし、あの少女と云うのは……人格が変貌すると云うのは……
 そこで、千裕は一昨日の夜の事を思い出す。寝ているリンを襲った時に、彼女が突然豹変した事を思い出したのである。
 まさか、この少女が言っているのは、二ノ宮リンの事ではないのだろうか? いや、人格が豹変する人物を、自らはリン以外に知らないからこそそう思っているのであって、実際は違う人間なのかも知れないが――
 それでも、この少女が全く別の少女に、本以外に興味を持つ事は本当に希な話である。それ程、あの少女には人を引き付ける何かが存在していると云うのか……その様に考える千裕自身、その何かを感じている一人なのであるが……
 背伸びをして、夢崎の言葉に答える事にする。
「――あの子は二ノ宮リン。丁度一年前ぐらい前に、永遠の論舞曲を生き残った少女よ」
 その言葉に、少女の眉間に皺が寄せられた。矢張り、永遠の論舞曲と云うワードに反応したか。この少女は、数百年前の話だとしても、ALICEに近付いた――いや、実際になった少女なのである、興味の一つや二つ、感じるであろう。
「あの少女はALICEか?」
「いやー。あの子と、もう一人別の子が、永遠の論舞曲のシステムを破壊したらしいから、ALICEには到達出来なかったみたいよー。なんでも、もう永遠の論舞曲が起こらない様に、入念にシステムを破壊して、今でも定期的に色々としているみたいよ」
 実際に訊いた訳ではないが、少なくとも、報告書にはそう書かれていた。全く、その報告書も要領を欠く様な内容であり、日本に存在している支部も、高が知れていると云うか、若しくはレベルが低いのか……千裕は解りかねる、と呟きながら溜息を吐く。
 その様に呆れながら放った言葉であるが、夢崎の反応は違っていた。目を大きく見開いて、口を開けている。信じられない、そう云った顔である。
「……永遠の論舞曲のシステムを……破壊した、だと?」
 そこに驚いているらしい……千裕は確信に気がつくと、うん、と肯定の肯きと言葉を放った。――永遠の論舞曲に関しての資料は、多くは流石の庭園でも存在していない。故に、詳しいシステムは不明であるが……それが何か問題でもあると云うのであろうか。そのシステムは、普通では改変出来ない代物なのか――いやまて、今まで行なわれていたと云う事は、確かにそれは完成されたシステムだったのであろう。
 今、目の前の少女が驚いている様に、破壊など、出来ない様なシステム――
「有り得ない。あれは彼女が作った最強の魔術の筈なのに……」
 ――魔術は、存在と云う枠を使って具現化するモノである。存在の空を如何に生み出し、そこに式を挿入して、具現化させる、と云うのが魔術の本質である。存在の空の大きさに比例して、魔術の能力もまた、大きくなる。
 最強の魔術――つまり、信じられないほどの、世界を変えてしまうほどの存在の空を生み出し、そこに式を挿入した魔術と云う事である。無論、それは最早、魔術仕いには余る芸当である。そもそも、永遠の論舞曲とは、一体どの様なシステムだったのか……それを調べなければ始まらない。
 今目の前に、その初代のALICEが存在しているのである。だが、永遠の論舞曲の内容を訊く前に、既に夢崎は、自らの横を通り抜けて、施設の中へと戻って行っていた。自分で調べろ、と云う事であろうか……
 肩を竦めながら、千裕は、暫らくその場に留まろうと、何も無い、青い空しかない、ロイヤルガーデンの景色を眺めていた。
 
 


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