次回からは普通の日常ボカロ小説書く。
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重要なので三回言いました。
入院したと言っても、また、あの警察病院でありまして……。マスクメロンとか出ないんですかい、黒田刑事ぃ……
「そんな高級なもんがでてくるか! 阿呆!
また滅茶苦茶にやってくれて! 情報もみ消すこっちの身にもなれ!」
……オレが入院して今日で二日目。今日の昼に退院出来るとは医者の話。一昨日の夜に入院して、それから次の日は一日中寝てて――んでもって、今日朝起きたら黒田刑事がぬっ、と顔を近づけていたと云う恐怖……うう、思い出しただけで寒気がする。
「そいつはひでぇなァ。せっかくいつぞやの話をしてやろうかと思ったのによぉ。しかも、俺はもう次の事件で忙しいんだよ……」
「そりゃすみませんね」
新しい事件ねぇ。テレビじゃ結構やってるけどね。麻薬やらなんやら、騒がしいっすよね。
「こんなご時世だからな」
いやなご時世で……
それより、話してくださいよ、一昨日の事を――
「ん、そうだな。時間もないし。あぁ、そうだ、退院の時はお迎えがちゃーんと、来るらしいぞ」
その時オレは嫌な予感を感じた。
だってさぁ、もう二回目だぜ? 警察のお世話になるの。悪い事した訳じゃねーのに。むしろ貢献していると言っても過言じゃないぜ。でも初めて黒田刑事に会った先週に情報をもみ消す代わりに感謝状は出ないと言われているからな。
それはさておき、そのお迎えと云うのはまさかオレのご両親サマじゃありませんかねぇ……怖いから黒田刑事には訊かないけど、心ではやっぱりなぁ、とは思っている。流石に二回目――しかもぶっ飛ばしたのは相当資産家の家だしなぁー、別荘とは言え。
そういや、現場はどーなったんだろうな。
「あれならガス爆発でカタをつけた。元々広い敷地だからな、あまり音が聞こえなかったと云う事も頷けるしな。その辺はぬかりない。相手方としても、あんまり騒動にはしたくないんだろうなぁ」
つっても、週刊誌には、『娘の家出騒動の次はガス爆発! 疑惑の桐島家の謎!』とか書かれてたけどね。噂までは流石の警察ももみ消せないしね。
……そんな話は兎も角として、黒田刑事は一つ咳払いをして、あの後の話を始めた。
■■■
――なんでも、粒子化したらしい――
あまりの話の突飛に、オレの思考回路もいよいよ限界だっつーの。
ただ、ぼやけた中でわかった事がある。手のひらを伸ばして、何かをつかむ動作をした後に、イメージを定着させる。
「うぉ、例の剣だな」
「はい。……オルトソード……」
「それで、わかった事ってのはそれの取り出し方か?」
「それもありますけど……。なんでも、オレがちょくちょくこういう時に意識失うのって、これが原因みたいです。
ほら、人見さんを思い出してみてください。あの人、オレと一緒に居た時、オルトソードに操られているかのように豹変していましたよね?」
「ん、まぁ……そうだったような気がするな」
「ハッキリしませんねー。
まぁいいや。
兎に角、それがこのオルトソードに原因があると思うんですよ」
「つーことは?」
「このオルトソード――どうにも、こーにも、意思を持っているみたいなんですよ」
「はぁ!?」
それは本当にぼんやりとだけ覚えている粒子空間――真っ白の世界に見た、マフラーを着けた男が見えた――うむ、オレ命名KAITO――。んでもって、人見さんの持っているのがMEIKOさんってワケだな。
「俺はいまいちのみ込めてはないなぁー。兎に角、なんだその……解雇だか明光だかは未来からの新手のアンドロイドか? あんな暴走をして……何が目的なんだよ」
「KAITOとMEIKOです、黒田刑事」
オレの訂正に、どっちでも良い、と呟く黒田刑事。どっちでも良くありませんよ……こういうのが重要なんですから。
「まぁ目的は不明ですけど……害を及ぼすものじゃないと思います」
「……その根拠は?」
「あの粒子化した空間の中で……オレ、見たんです。人見さんの深層心理ってヤツを……。とても不安定で、おかしな空間。その中で見た人見さんのモノを、MEIKOが知っているから何かをしたように見えて……」
「つまりなんだ、オルトソードの意思とやらが持ち主を助けた、って事か?
桐島人見は自由を求めていた。下級の人間を見下す自分の父親に対するコンプレックスを持っていた彼女の深層心理を代わりに実行した――俺の言葉、間違えているか?」
「話が早くて助かります。そうです」
「かぁーーーー。駄目だ、おっさんには理解できん」
そう言うと、黒田刑事は最後になって手に持っていた袋を手前において、背中を向けた。
「時間だ。じゃあな。――あー、それ、退院祝い」
袋を手前に持ってきて中身を開くと、中身は普通のおにぎりだった。……これ、セ●ンイレブンの百円セールのじゃないですか! どんだけせこいんですかい! でもありがたく、頂戴させていただきます。
× ×
退院のお迎えにガタブルしているオレを安堵させてくれたのは、ミクの笑顔だった。
「マスターっ」
よ、よかったぁ、てっきり母さんが来るのかと思っちゃったじゃないか! ミクで安心したぁ、と思ったら、その後ろからリンとレンがひょい、と姿を現した。お、三人でオレのお出迎え?
「そうだよぉー、もう、おにーちゃんに一生会えないかと思ったのにぃ!」
ぐりぐり、とオレのお腹の辺りに顔をうずめてくるリンちゃんはこの上なくカワイイ――いかんいかん! あぶねぇ、一線を踏み外すところだった……このままの展開でハグするところだったぜ!
「それに、マスターも今日退院なんです……」
……、って事は、この病院に人見さんも!? ぜんっぜん気づかなかった。つかオレ自分の病室からこの二日間出たことないし……知らないのも当たり前か。考えてみれば、同じ現場でぶっ倒れてたんだから同じ病院に運ばれるのも普通だな。
でも今日退院出来るって事は、そんなに大変な怪我じゃなかったんだな、うん。じゃあ、人見さんがくるの、待つか。
「はい、マスター」
「おにーちゃんが言うなら……それに、レンも居るしね」
ぎゅう、とリンがレンに抱きつくと、顔を赤くして照れているレンきゅん。……一線じゃなくて、道を踏み外しそうになったぞ、おい。
そんなこんだで待つ事になる。この少し熱くなった、外で。
◆
「お大事に」
そんな当たり前の事を言われて、彼女は病院を後にした。
……結局あの後、両親からの連絡は一切ない。あんな事をした後だ、ある方がおかしい。辛うじて、祖父からの電話はあった。行く所がないなら、自分の家に来ないかと誘われたが、丁重に断った。
大丈夫、やっていける。そんな事を心で呟いている自分の心は晴れやかだ。あの時じゃない、言いたい事を言って暴走して――全部出し切れたのかもしれない。おかげで今は新しいスタートが切れそうである。
『ふーん、それより、どうすんの、住むところ』
新しい友人も出来た。
人見命名MEIKO。オルトソードに封印されていた人格で、今は覚醒している。彼女にも眠りの概念等が存在しているようであり、覚醒している時はこうして言葉を交わす事も出来る。
「兎に角、早く物件探さないと……安い物件、ないかなぁ……」
と、病院から外に出たところで、仲良く話をしている四人の少年少女を見た。
◆
「あーっ! きたーっ!」
指をさすリンの先には確かに、オルトソードを握ったままの人見さんが姿を現していた。
「どう、して?」
「いやぁ、なんつーか……OTK仲間として、今日退院するっていうなら待っていようかと思いまして……」
「私、遠藤くんに、酷い事したのに……」
「そんなの、お互いさまですよ」
結果、止める為にオレも多少手荒くしましたしね。
「マスター……」
「レンくん……」
よかったよかった。
――それよか、どうするんですか? これから。それと、リン、お前も。
「私、おにーちゃんと一緒が良い! レンと離れるのはちょっとさみしいけど、おにーちゃんと一緒が良い!」
壊れる壊れる、ふひひ、壊れる、理性が壊れるだろうが……
「私は――あ、そうだ、観光くん!」
み、お、く、ん?
「私も当分置かせてくれない? 実は家を探さなきゃなんだけど、住所がないと契約出来ないし……」
――――――はぃ?
「ね、お願い」
その次の瞬間、人見さんのやわらかーい、胸と唇が、オレの体に……顔に……
「ま、ますたぁ!?」
「おにーちゃんっ!?」
「ふふ、ねー」
「ちょ! ま!」
「大好き、観光」
「えーーーーーーっ!」
「ちょっと、MEIKO! 私の体で……っ!」
「だってさぁ人見、この子、良い子じゃん!」
「え! 人見さん!? MEIKO!? どーなってんの!?」
とんだ、最悪の事件が今、幕を閉じた。
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