今日からボカロ小説は新展開です。
此処からが再掲載でなくて、新作のほう。
てな訳で、金髪少女が登場します。
莫迦みたいな事件が起きた。
簡単に要約すれば……まぁ、なんだ、世界征服を狙う政治家が、未来のオーバーテクノロジーを使って何やら企んでいたそうです。そんな中、オレ、遠藤観光の上から落っこちて来たのは、なんと、あの初音ミクにそっくりな女の子なのでした。
……なんやかんや言っている内に初音ミクに似た少女、未来から来たアンドロイド、ナンバー09180324――呼びにくいからオレは〝ミク〟と云う名前を着け、そしてミクはオレの苗字を取って遠藤ミクと名乗る様になった。
未来から来たミクは、なぜだか落ちて来て、「冥王会」とか云う妙な世界征服を企む様な連中に襲われて……なんだかんだでオレは何やらギガ●マニアックスモドキみたくデ●ソードみたいなのを取り出して、その野望を阻止しちゃったりなんちゃったり……
兎に角、今月で一生分の非日常を体験した様な気がするけど、今オレはミク共々、何とか生きている。
その後が大変で、警察に連れて行かれて事情聴取。この事件で知り合った黒田雄介刑事の配慮により、オレはミク共に釈放された。――黒田刑事には、ミクが未来から来た事を隠さずに全て隠した。流石にあれだけの出来事が起こると、信用せざるを得なかったんだろうな……
てな訳で釈放されたオレは、テレビに出る事も無く、そのままミクと日々を過ごそうと云う訳になったとさ……はい、回想終わり。
◆
釈放されて、オレとミクが最初に向かったのが公園だった。此処でオレとミクが出会ったんだよなぁ。突然上空から現れてオレの背中に直撃したんだよな。
一昨日の夕方に任意同行させられて、そのまま事情聴取。次の日に丸一日事情聴取されて、今日の朝に釈放。……全く、これで黒田刑事が配慮してくれた結果なんだよな、配慮してくれなかった犯罪者モドキはどんな酷い仕打ちを受けるのか解ったもんじゃないな。
……そういえば未来じゃどんな仕打ちが待っているんだろうな……
「えーと、かなり酷い仕打ちが待っていると思います。レベルで認知されていまして、窃盗や不法侵入に器物損害がレベル1、金銭トラブルがレベル2、暴力などの傷害事件がレベル3、誘拐がレベル4、殺人事件がレベル5です。これに加えて、凶悪性や、更に別の事柄や規模によってそのレベルの数値に追加がされまして、それに応じた処置が取られています」
「なんか凄いな……」
「はい。未来では、指紋、声紋、インターネットアクセス記録、様々な事柄でチェックされます。重大事件の場合は、タイムトラベルも使われます」
「そりゃ嘘つけないな……」
そんな時間歩行はなぁ……だってさぁ、凄まじい電力が使われるんだろ? それにどうやって戻って行くんだよ。
「その場合は、コールドスリープですね。空間を凍結して、その中で眠る事が出来れば、後は未来の人間が時間歩行した後に凍結を解除すれば全ては完了です」
成る程、とても信じられない話ではあるな。それが未来なのか……過去の歩行は出来ても、未来への歩行は空間を凍結して、眠っていなければならない。……って事は、ミクもコールドスリープをすれば未来に戻れるんじゃないのか?
その問いに、ミクは首を横に振った。
「駄目です。コールドスリープは事前に眠る場所を決めておいて、時間になったらスリープを未来の人が解除すると云う規則になっています。なので今私がコールスリープしたところで、未来で誰も目覚めさせてくれませんから、永遠に眠る事になります」
それは拙いな……って事はやっぱり向こう側から何かしらのアクションが無い限りはミクが元の時間に帰る事は出来ないのか……
オレの言葉にミクがはい、と応える。少し困ったような顔している……くそ、可愛い……オレにどうしろってんだバカヤロウ。――何を隠そう、オレはミクに恋をしているのです、はい、相手はアンドロイドなんですけどね。
そんな事はさておき、オレとミクはベンチに腰を掛ける。本当はこんなことする前に早く帰って風呂に入りたい訳なんだけどな。幾ら冷房が効いていて汗は掻かないとはいえ、風呂に二日入っていないのは拙い。
問題は、今オレがミクに一刻も早く訊かなきゃならないモノがあるからだ。この二日間は警察だったし、無闇に出すなと黒田刑事に言われてたから言うに言えなかったんだよな。だから今みたいに、人気も無い場所で訊きたかったんだ。
オレは手を目の前に差し出して、それを取り出す。――その異形の剣は、空間の裂け目から現れて、オレの手に現れた。
「……これ、何なんだ? ミク」
確実に今の現代のテクノロジーじゃない。何も無いところから取り出せるし、あんな迫り来るモノをスローモーションで見えたりと……。オレは二日前の事件の事を思い出す。
ミクは暫らくオレの手の内にある異形の剣を眺めて、肯いたり、眺めたりと色々と物色している。そして徐にもう一度肯き、言葉を発した。
「これは「オルトソード」です。――未来世界では、警官なんかが持っています」
「へぇ……で、これはなんなわけ?」
「粒子学の具現化です。この空間に存在を溶け込ませて、使い手が必要と思えば粒子を集合させて此の世に定着させます。この世界では、これが証明されていませんから、これを解除するモノはありません。だから粒子学のエネルギー……即ち、物理現象のコントロールによって物事が遅く見えるんです。その点、このオルトソードを所持している人は粒子学を解除しますから、その様なスローモーションに左右されません」
だからあの時は最後おっさんの攻撃が凄まじく早く思えたし、あのおっさんがオレの攻撃を避ける事が出来たんだな。理解した、こんな時、アニメとかの非日常を直面しておくと結構役立つな……世の中、何が起こるか解らないな……
まぁ、人が上から落っこちてくる事はもう無いだろうけどな。
「そうですね。流石にもう無いと思います。私以外、落ちてきたら困りますからね」
「だなぁ。じゃ、明日はぶっ壊れた携帯電話を取りに行くか。多分買いなおしだと思うけどね。ついでにPCも」
「ですね」
そう言って、オレとミクは立ち上がる。……やっぱりその前に風呂に入りに行こう。
そんな事を考えながら、徐に歩き始めようと足を一歩踏み入れた所で……
「―――――ぎゃあああああああああああおす!」
……どっかで見たッ!
突如としてオレは何かに押しつぶされた。またこのパターンか、と思いつつも、今度は何が落ちて来たかと顔を上に上げる。ミクが口を押さえて此方側を見ている。どうやらミクが飛び上がってオレの上に直撃した訳ではなく、別の何かが上空から落ちて来たのであろう。
頭を摩りながら、オレは上を見ると――
そこには、笑顔を見せながらオレの上に上がっている金髪の少女が居た。
「……鏡音……リンッ!?」
それはどう見ても、ヴォーカロイドナンバー2の鏡音リンの姿をしていた……なんとも意地悪い笑顔か……
「――みーつけた! お兄ちゃん」
「お、お兄ちゃんっ!?」
突然この子は何を言っているんだコノヤロウ! オレは年下には興味ないからな! 後ろに居る筈のミクに視線で助けを求める。
「……、あ、はい、マスター」
遅いよ、行動。ミクはリンの腕を掴んでひょい、と持ち上げる。リンは何すんのぉ、と言って暴れる。それをミクが困った顔で対応している。……顔見知りとかそんなんじゃないのか……? 普通に考えると、ミクとリンと云うのは姉妹機だと思うんだけどな……
「まさか! 私はこんな型のアンドロイドは知りません!」
リンを知らない……?
「……なぁ、お前はまさか……未来から来たのか?」
そう問い掛けると、リンは首を捻る。
「なにソレ? ……だって今って二一八五年六月一二日よね?」
――またこのパターンか……若しかしてシリアルナンバーとかあって、オレに仕えるとか言わないよなァ?
「そうだよ、おにーちゃん。まさか他にもアンドロイドを控えているとは思わなかったけどね」
ミクを見るなり、リンは目を細めて物色を始める。
「えーっと、兎に角、だ、今はその二一八五年じゃあ、ない。今は二〇〇九年だ、そこん所間違えないで欲しいんだけど……」
その言葉を聞くと、リンはきょとんとして、手を伸ばして何かをしている。多分、ミクが来た時と同じで、インターネットでも開いているつもりなのか……?
暫らくしてリンの腕が下がった。そうして不機嫌そうな顔しながら、ミクの腕を握る。……と、突然それは始まった。
「どわっ!」
電撃が走ったかの様にバチバチと音を立てて、二人の間で火花が散る。比喩じゃなくてマジ! 本当に火花が散ってる。今此処でガソリンでも近付けたら間違いなく、大爆発を起こして、この場所一体を火の海にする事が出来るだろうな……
その雷撃が終わったのはそれから一〇秒ぐらい後の話。リンが腕を離す形でその火花は治まった。
……えーと……若しかして……同調とかそんな類ですか?
「……同調完了。この世界を、二〇〇九年と認識」
リンがその様な事を言う。
「うっそぉ……まさか過去に飛ばされるなんてぇ……こんな世界の水準じゃあ帰る事出来ないし……」
随分とミクに比べて表情豊かだな……
「まぁ、いいや。おにーちゃん居るし!」
「どわっぷ!」
突然抱き付かれてオレは再び地面に倒れ込む。
「……お前、まさかシリアルなんとか持ってるのか? てか名前」
「うん。私はシリアルナンバー09180324だよ」
「……わ、私と同じシリアルナンバー……」
「同じシリアルナンバーを持ったアンドロイドって居るのか!?」
「いいえ! 存在しません!」
「何言ってんの? 私が正真正銘のシリアルナンバー09180324よ!」
どうなってんだ……こりゃ……
to be continued......
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