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絶望への共鳴 // ERROR

深層心理へのアクセス。結城七夜の日々。徒然日記。 裏; http:// lylyrosen. xxxxxxxx. jp/ frame/ water. html

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生き続ける魂が様々な情報を統括し、人を動かす。それこそ世界の意思、人の意思



魔術仕い姉妹。まぁ実際はこれにもう一人入るんですけどまぁ、その辺は割愛と云うか、リメイクのALICEのネタバレになるので出せないと言いますか(笑。

まぁ、正直blogに昔のALICEありますし、正直ここに入る三人目が何者なのか知っている人も居るから良いと思っているんですけどね。

オリジナルキャラクターのこの二人は比較的デザインに悩んで一番思考錯誤したから描き易いキャラクターですね。ちなみに右が姉で、左が妹。ヒナさまと林檎は描き易さで言えば林檎が一番描き易い。


今日で十一月も終わりですねー。

つまり、今年ももう一ヵ月と云うワケですよ。早いですねぇ……

自分はこれから就職活動も始まりますし、もっと忙しくなるんだろうなぁ、とこれからの自分を不安に思いつつ日々を過ごしているワケですけど。……今の景気を考えると厳しいものがありますね。この年に生まれた自分を恨むべきか、それとも日本と云う国に対して文句を言うべきか、それとも世界の仕組みそのものに文句を言うべきか……

何にせよ、自分なりに頑張って見ようと思いますよ。

勿論小説とかも暇を見つけて執筆はして行きたいと思います。


特に、そろそろハヤテの小説は行けそうな気がする。原作も結構先に進みましたし、そろそろ行っても問題無いような気がするけど心配性で進まない← それにオリジナルに割いている時間が長いから全然タイミングが掴めない

これじゃあ拙い。折角DVD付きの単行本買ったんだから……!!(関係無い話

劇場版のDVD付きの限定単行本届いたら、モチベーション上がるかも知れぬ……


そんなワケで、以下ハスミさんの作品の外伝『WONDER RONDO / ZERO /』





 
 ―――魔術は万能ではない。いつか科学がそれに追い付き、凌駕するだろう。テレシアはそう思っていた。
 無駄に必要とする魔力、体内での変換、危険度……等々。問題があるとすればかなりの数存在しており、それこそ限が無い。魔術とは、そう言ったリスキーな代物なのだ。
 しかし科学は違う。常にリスキーな魔術と違い、科学は一回のリスクで「結果」を生み出せる。実験の果てに手に入れた結果は、何事にも勝る証明になる。それ程重要な代物は無い。科学とはそう言った〝結果の積み重ね〟によって作られたものなのだ。
 が、魔術には科学には到達出来ない強みが存在している。
 それは、「概念」「根本」と云う、科学では決して触れる事の出来ない部分に、魔術は触れる事が出来るのである―――
 テレシアはそれを知っているからこそ、〝魔術でなければ勝てない相手〟と〝科学で勝てる相手〟と区別をしているのだ。
 心の中でたいした相手では無いと決めた存在には科学しか使わない。魔力を装置の起動以外にたいして使わず、科学技術を扱える方が楽だからだ。
 それなりの相手にはそれに魔術を織り交ぜて戦うが、そこにはやはり怠惰感があり、本気では無い。
 しかし、それ以上の相手……つまり、テレシアが『魔術師』として全力を出し切る、手強いと感じた相手に対しては科学、魔術の全てを使って勝ちに行く戦略を取る。
 今回の相手は、まだ、そこまでの相手とは思えない。グールを使って魔術の詠唱時間を稼ぐような相手では、全力を出すのに値しない。
 つまり現状では科学技術を使って……『科学者』として戦う相手に留まっている。それはただの実験台だ。自らが発明した科学と魔術の結晶がどのような動きを、成果を出すのかを確認する実験台に過ぎない。
 …………だが、もし、相手がそんな認識の自らの想像を遥かに凌駕し、魔術師として戦わざるを得ないと感じた時には、迷わず剣を取る。魔術師としての牙を向く。
 先ほどの魔力の奔流による竜巻だけでは判断出来ない。実際に目にして見なければ解らない。この目で見るまで信じない。それがテレシアの考えだ。
 で、あるのだが……先ほどからそちらの方面に向かっているのだが、一向にそこにたどり着く気配も無く、辺りを貪っていたグールの数も少なくなっていた。しかも現象は著しい。
 そこに不信感を覚えて、テレシアは一旦脚を止めて、辺りを見渡す。そこに広がっているのは先と変わらず、木々たちがひしめき合い、互いに風で擦れ合って乾いた音を立てている状況だ。一足先は暗闇に塗れており、見えない。そろそろ夕暮れも近くなって来ている。
 やはり、この辺り一帯にグールの気配は感じない。それは愚か、人間の気配すら感じないのだ。魔力の奔流も、あの時の竜巻以降影を顰めており、時折多少の魔力が流れて来るに留まっている。
 そうやって、そこで辺りを確認していると、後ろを歩いていたグレイスがようやく追い付いて来た。彼は辺りを念入りに警戒していた為に、少し遅れて歩いていたのだ。
 彼としては、一足先を急いでいた筈の彼女が目の前に現れて驚いているであろう。先に相手がたどり着くならまだしも、こちらが追い付くとは、一つも思っていなかったに違いない。
「どうした?」
 そう言った念を込めて言ったのだろうその一言を、テレシアは無視して辺りの気配に意識を集中する。彼の言葉に集中している暇など無い。
 一瞬不審に思ったものの、だがグレイスはその気配を感じ取ったのだろう、警戒の念を抱いて辺りを見渡す。……そしてテレシアと同じ結論にたどり着いたのである。
 グールの極端な減少と、異常なまでに減少した魔力。それに気付いた。
「……何かがあるな……」
 そう呟くと―――
「……結果が張られているな?」
 ―――珍しく、彼女の方から質問をして来た。
 それに驚きながらも、グレイスは、ああ、と頷きを返す。
「恐らく、この辺り一帯に強力な結界を張っているんだろうな……」
「だろうねぇ。先を進んでいる筈のわたしたちが一向にたどり着けない上に、魔力の減少、グールの減少……それが理由だと思うね。ははん、相手も考えているってワケか……」
 愉快そうにそう言うが、グレイスにとっては愉快では居られない状況だ。
「魔力を時折感じるのは、それこそ、隙間風みたいなもんかね。
 ―――どこから流れて来ているか、上手く隠してやんの」
 それにも嬉しそうだ。テレシアはまるで相手の実力を一つずつ、テスト、評価しているようにも見える。
 しかし、そうなれば、このまま先に進んでいたとしても、その結界で上手く道を誤魔化されてしまうと云う訳だ。……いや、既にそうなっている可能性も高いのだが……何にせよ、そのまま歩いても無駄なら、ここで立ち止まる。ようやく、グレイスはテレシアの完全な意図を知る。態々相手の術中にはまる必要は無いと云う訳だ。
 ―――そう、ここに居る二人は共に両眼異色なのだ。魔力だけなら、二人合わせれば凄まじい量であろう。それこそ、魔術で言えばこの場で出来ない儀式は殆ど無い程だ。
 同時に、魔術とは膨大な魔力があれば、その展開されている魔力量を超えていれば、破壊出来る代物でもあるのだ。
 二人が結託すれば、この結界の基点を見付けて、破壊するのも可能だ。それなりのプロセスを踏んで、様々な魔術を使用する必要性は当然あるだろうが。
 ……しかし、相手が結界を張ったと云う事は、それなりに外界に対する配慮があるのであろうか……? いや、グールを大量展開している時点で、その考えは危ういものだ。少なくともそれなりの理由があったと言うのは確実に言える事だろう。
 一番に考えられるのは、自分が行っている作業を妨害されたくないからだろう。人避け、幻惑の類の結界とは主にそのような用途として使われるのだから。恐らく、戦闘目的に張った代物では無い。それならば、膨大な魔力を使った魔術によって駆逐すれば済む話なのだから……やはり、結界を張って、根本的に見付かりたくない理由があるのだろう。
 その理由が一体何なのかは現状では想像もつかないが、それをいつまでも考えていたとしても仕方がない。とにかく、この結界を破壊しない限りには始まらない、先に進まないのだ。
「……お得意の発明品で何とかならないのか? 結界破壊の発明品とかあってもおかしくないように思えるがな……」
 今まで常識外れの代物を見せられて来たのだ、それぐらいあったとしても不思議ではない―――グレイスはそう思っていた。遠く離れた場所の映像を移すだけでも随分驚いた。
 だが、回答はNoであった。
「一度発動した魔術をディスペルする発明品は無いね」
 加えてその理由を言う。
「一度交わされた精霊との契約を破棄するのと一緒さ。それなりのプロセスを挟む必要がある上に、手間が掛かる。コストパフォーマンスも良くない上に、魔術で相殺した方が早い」
 なるほど……精霊との契約の話を持って来られると、一気に納得度は増す。確かに、精霊と一度交わした契約は余程の例外が無い限りは破棄するのは不可能と言われている。
 彼女は発明品ではディスペル出来るような代物は無いと言った。では、通常にディスペルする術はあると言う訳だ。
「考えた通りさ。魔術を破壊するには、それを越す魔力をぶつければ良い。……全く持って面倒だが、オマエの力を借りた方が楽なんでね」
 それはテレシア苦渋の決断と言うべきか。それとも単に楽をしたいだけなのか。どちらでも良い。彼女は今グレイスの魔力を必要としている。
「自分の想像以上の実力者だったか? 魔族は?」
「はんっ! まさか!」
 テレシアは鼻で笑って、それを否定する。
「魔力、結界……魔術―――それらの構造何てのはとっくの昔に解ってるさ。問題は、それが既に発動してしまった点にある。―――しかも、わたしの保有量と同じぐらいの魔力をねぇ……」
 彼女によれば、自分自身の魔力量を超えるのには時間が掛かる。両眼異色の最大の特徴である強大な魔力の器を、それ以上にするには、当然ながらマナを吸収するしか他は無い。それに時間が掛かると言うのだ。
「それで逃げられたとあれば本末転倒でねェ。わたしとしては、魔族は生きたまま捉えたいしね。それに訊きたい事もある。
 だからとっととここを突破したいワケ。ワカル?」
 手段を選んでいる暇は無い。その方針に対して異論は無い。
 グレイスは、そうだな、とだけ返して、彼女の言い分に納得する。捉えると云う部分は横に置いておくとして、魔族と言う代物が本当に存在しているのなら、それを隠匿するべきかどうかを考えるのには、彼自身と面と向きあって話す他ないだろう。
 ……ちなみに彼女が自らの非を認める筈がないと、グレイスはこの短い期間の間で彼女の事を大体は理解していた。そして同時にその実力も高く評価している。これぐらいの結界なら、彼女にとっては造作も無い代物だとも思っている。
 グレイスが……シャルルが……そして果てにはシュタインもまた、彼女の本当の実力を知らない。まだ底を見せていないのだ……
 結論ならもう出ている。彼女に力を貸す。それだけだ。シャルルには彼女について気を付けろ、とは言われていたのであるが、どうにもグレイスはテレシアの事を憎めないでいた。そこにどのような感情が存在しているのかどうかは解らないが……
〝久しぶりに両眼異色の……同類の人間に出会ったからな。少し感情移入し過ぎているのかも知れないな……〟
 そう思って、苦笑する。
 しかし、今はどちらでも良い。とにかく彼女の作戦に従って、結界を破壊する事だけを考える。互いに考えている結果は違うものの、最終的に二人のやるべきは変わらないのだ。
 テレシアは魔族に関して興味を示している。それを確認する為にこの結界はどうしても破壊したいと思う。
 グレイスはこの結界の内側に居るだろう仲間たちを助ける為に、どうしても破壊したいと思う。
 やはり、この二人の考えは一致しているのだから。
 良いだろう……グレイスはもう一度頷いて、彼女に力を貸すとする。
 その答えを聴いて、テレシアは嗤った。思い通りに行った事に関する嗤いか、それとも滑稽なものを見た事に関する嗤いか……どちらにしろ、テレシアにとっては楽しい展開になっているのは事実だ。
 彼女はそのまま手を目の前に持って来て、目を瞑ると、頭の中に設計図を展開する。魔術設計を行い、そして伝達する。それがトリガーとなって、辺り一帯に巨大な結界が展開される。
 ―――この辺り一帯は既にテレシアの管轄内だ。至る場所に発明品である代物が鎮座しており、それらを起動する事で、科学的に魔術的要素を持った結界を展開出来る。
「要はオマエに、この結界を展開し続ける膨大な魔力を補って欲しいってワケさ。―――何せ規模が規模だ、凄まじい魔力が必要になるってワケさ。まぁ、普通にこの規模の結界を魔術的に展開すればもっと掛かるのは……解っているよねぇ?」
「ああ……しかし相当な範囲に展開したな。そこまで必要だったのか?」
「相手が用意周到なら、こっちも相当の範囲を頭の中に入れておいても問題無いと思うけどね。……意外な場所に置いてある可能性も、零じゃあ、ない」
 なるほど……、相手はどこに結界を仕掛けているか解らないのなら、こちらの知り得る範囲を全て作適する必要があるとの考えだ。
「維持している間に基点をわたしが探す―――そしてそこにハッキングを仕掛ける」
 ……作戦はこれで互いに理解した。あとは実行に移すだけだ。
 やり方を教えて貰い、それに頷きを返すと、すぐに実行に移す。彼女の魔力ラインに接触して、そこにグレイス自身の魔力を流す。このまま馴染ませて、同化を始めて行く。
 逆にテレシアは徐々に魔力の量を減らし、テレシアの作り出したラインに、グレイスの魔力が流れて行くように……調整を繰り返して行く。ここに展開された結界の基点に触れて、構造を理解する。
 そうして、作業が終わりを告げる。ここからは次の作業に移行する。魔力の注入は安定ラインに入ったが、ここからはテレシアが許可した魔術の基本構造にアクセスする事になる。
 その辺りはさすがテレシアと言えよう。魔術の経路を用意しており、そこをたどるだけでたどり着けるようになっている。スムーズに次の工程に進むのが可能だ。
 接続が完了したのを告げるように、辺りに赤い光が点滅を始める。その様を、グレイスは横目で見ていた。相当な量の機械が設置されているらしい……ここからでも解る。至る所に設置されている機械類の起動を確認して、この工程も終了となる。
 述べたように、テレシアは自らが足を踏み入れた場所の至る所に発明品を設置する。それは今のように結界を展開する培養にもなれば、自立で辺りを警戒する装置にもなる。……元々は、様々な実験台を探す為に設置した代物とは、前述した通りだ。時には道の目印にもなる。
 どれも彼女の実験をスムーズに行う為に設置されたものだ。この森の通る道全てに設置されているのだから凄まじい量だ。
 ……この装置に魔力を注ぐだけは簡単だ。何の法則性もなく、ただ魔力を注ぐだけなら、魔術に関して素人の人間でも出来る。
 問題なのは、今回使っている発明品は精密機械であり、テレシアの発明したものである点にある。これがグレイス自身の発明したものなら話は別だ。自分のものなのだから勝手が解っている。……が、生憎テレシアの発明品であり、少しでも魔力を注ぎ込む量を間違えれば発明品がオーバーヒートしてしまうらしい。細心の注意を払わなければならない。
 作業をするグレイスは気が気ではない。この作業をするのだから、より一層、慎重に行わなければならない。
 …………そんな彼の手慣れていない作業に多少の不安を感じつつも、壊れたとしても直せば良いと思えば気楽なものだ。次はより強力に作るとしようと、内心で設計図を片手間で開きつつ、結界内の映像を探す。発明品が起動したのだ、その様子が映像として流れて来る筈だ。
 もし届かなかったとしても、機械を設置してある場所は殆ど覚えている。その光景も、似たような場所だったとしても、設置されている機械のパターンで覚えている。ならば、イメージに存在していない場所が怪しいと思えば良い。
 結界内の発明品が起動しているかどうかは解らないが、していようが、いないが……場所は特定出来る。
 ……しばらくすると、脳裏に様々な映像が機械から発せられた魔力波長のパターンによって送られて来る。位置情報、視界情報、状況情報―――様々な状況証拠が送られて来る。
 常人であれば、その膨大な量の状況情報を前にして、処理を諦めるだろう。明らかに、人間が扱い、処理する数を超えているのだから仕方がないと言えば、仕方がないのだが……
 が、テレシアは違う。彼女は正真正銘の天才であり、脳内で行える情報処理能力も常人のそれでは無い。難なくさばく事が可能だ。
 その膨大な量を一つずつではない……幾つも同時に処理して行く。テレシアにとっては造作も無い事だ。様々なものを行いながら別の作業をすると云うのは、必要なスキルの一つだと思っている。
 そうやって照合する事数分。後ろで魔力を補給し続けるグレイスも今かと待っていた頃合に、テレシアの目つきが変わった。
 照合している映像の中に、返って来ない映像が存在していたのだ。
 そこだ―――恐らくそこに、結界の基点が存在している。詳しい位置情報を探る為に目を今一度つむる。
 記憶とは曖昧でありながら、一種机の引き出しのようなものなのだ。探せばどこかに存在している。無意識の海の中に埋もれているそれらを探す作業こそが、人間の記憶なのだから……忘れる事は無い、ただ、見付けられなくなるだけだ。
 今彼女は膨大な知識の海の中をさまよっている。手探りで、目的の代物を探している状況だと考えても問題無い。いつ見付かるかどうか解らない状況だが……テレシアの海とは、常人とは違う。そこにあるのは透明な海で、見渡しが良い。
 故に、それらはすぐに見付ける事が出来る。そのイメージの記憶を見付け出して、テレシアは目を開く。
 そこにあったイメージは、つい最近どこかで見た事のある光景であったのだ。足を踏み入れた……
 すぐに閃いた。
 突然結界を解いて走り出したテレシアを見たグレイスは呆気に取られて一瞬で遅れたものの、彼女を追い掛けるべく走り出す。
 どうやら、彼女はそのイメージにたどり着けたようだ。どこに結界の基点が存在しており、その正確な場所も把握したらしい。……思ったよりも早くて安心した。と、同時に、彼女は一体どこに向かうのか……考える。
 確か、この方角は出口―――入口―――とは違う方向の筈だ。魔族はその出口の方に陣取っているのではないのだろうか? ……グレイスはルチアの言葉を思い出す。確かに魔族はあの時の映像で出口を陣取っていた筈なのだ。しかし、目の前の彼女はそこではなく、違う方向に向かって走って行くのだ。
 ―――彼女を信じよう。グレイスはそう思って、彼女の背中を追い掛け続ける。
 走る事数分でたどり着いたのは、グレイスにとっては馴染みの無い場所であった。が、テレシアにとっては違う。
 そこは、先日テレシア、シュタイン、エリセの三人が武装グールと戦ったそこであった。
 広いそこは、その時の戦闘によって空いた巨大なクレーターのようなそれ、そしてなぎ倒された木々がそのままになっている。勿論、グールが放った銃弾のあとも、そのままだ。
 なるほど……ここならば確かに納得の行く話だ。
 どうしてあの時、あの場所に巨大な武装グールが存在していたのか。何の目的でここに現れたのか……疑問だった部分が一つずつ、解答を得て、納得へとたどり着く。
 恐らく、あの時ここに存在していた武装グールは、囮だったのだ。魔族がここに結界を展開する魔方陣を、式を埋め込む為のカモフラージュだったのだ。
 ここで巨大グールが暴れれば、武装グールが暴れれば、常人は近寄らない。テレシアのような人間でない限り、そのような場所に態々飛び込むような愚かな人間は居ないだろう。喩え、国の手によって―――この森で言えば、プランサスロンスがそれに当たる―――排除されたとしても、武装グールによって滅茶苦茶にされた場所、戦闘によって魔力が拡散した場所で、結界の基点を見付けるのは難しいだろう。
 ……そこまで計算された策だった訳だ。それも、こうしてテレシアに破られてしまったが……
 しかし、当のテレシアは自分の迂闊さに、自分自身に対して嗤う。近い場所に、簡単な所に答えはあったと云うのに、それに気付かなかったのだ。嗤いたくもなる。自分に対する嘲笑……
 少し遅れていたグレイスがテレシアのすぐそこに来た辺りで、テレシアは作業を始める。
 空いているクレーターの中に飛び込むと、その中央に立つ。結界によって場所は、イメージは解っている。あれは確かに地面よりも下にある場所にあった……つまり、ここだ。抉れて地面よりも下がった場所にあるこここそが、結界の基点なのだ。
 徐に手のひらを中央に置くと―――詠唱を始める。
「Destruction, destruction, destruction―――One to break, two, and three」
 ……摘出作業だ。地面に埋め込まれている魔術を発動する魔方陣を取り出そうとしているのだ。
 莫迦な―――グレイスは思った。通常の魔術師でそれを行おうと云うのなら、それこそ大魔術並みの準備が必要となって来る。しかし、テレシアはそのような準備一つしていない。ただ、手のひらを基点があると思われる場所に着けて詠唱しているだけなのだ。
 だと言うのに…………彼女の手のひらの下からは、見た事も無い形式で作られた魔方陣が姿を現していたのだ。
「―――っ」
 改めて、この少女の出鱈目さを痛感する。……ただの両眼異色では無い。この少女は正真正銘の天才なのだ。
 不可能を可能にする魔力を保有出来る両眼異色の魔術師。しかし、保有する魔力を自由自在に扱えなければそれは宝の持ち腐れ。しかし、彼女は自分が保有している魔力を無駄なく運用する術を持っているのだ。
〝たいしたヤツだ―――〟
 それは心からの感心の言葉であった。
 摘出が終了した魔方陣を見て、テレシアは苦笑すると、それに魔力を多少流すだけで破壊して見せる。
 結界が崩壊する。


 to be continued......

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