昨日の零時から今日の五時に掛けて、創作活動をしている物書きの方々と語らいをしまして……
いや本当に充実した時間でした。互いに考えている事や、執筆スタイル、ネタの交換―――これら全て、自分とは違った代物に触れられて自分のこれからの作品にも良い影響を与えると思います。
一番は刺激ですよね。「この人はこれだけ頑張っているんだ、オレも頑張ろう」みたいな感覚があって、凄く刺激されます。モチベーションが上がると云うのが一番良い表現かも知れませんね。何にせよ、このような会はもっと開いて行きたいですなぁ。
その過程の中で、自分の小説を見せる中で『ALICE』の更新頻度もうちょっと上げたいなァ、と云う事から第一歩で、取りあえずキャラクター紹介ページを変えようかと思いまして、そのイラストを上にペタリ。取りあえず気長に書いて、更新したいとは思っていますけど……これからどれぐらい小説とかイラストに費やせる時間があるかどうか……
ちなみに学校は四連休です。―――まぁ実は学園祭の準備やらなんやらで授業の暇が無いから、四連休になっているワケですけどね。
お陰で鳥さんのキャラクターを使わせて貰った作品も完成しまして、鳥さんから許可を得次第公開できそうです。
以下は、例の如く、ハスミさんへの小説です。
資格の勉強で全然更新してなかったな……
―――確かな理由をテレシアに提唱された一同は、なるほど……、と関心をする。確かにそれならば、彼がこの場所を守る事、そして出られない事も納得が行く。
全く頭の切れる人間だ。まさに天才と言えよう。グレイスは苦笑しながらテレシアを見る。
当のテレシアはそれに対して当然と言ったような顔をしつつ、これからの作戦を練っている。機械を操作して何やら計算しているようだが、戦闘では時に、数字では表せない何かが起きるものだ。
彼女の仮説通りだとすれば、例の魔族はあの場所から当分動かない。目的の人物を見つけるか、もしくは自信が保有している魔力が切れるまで、あそこに居続けるであろう。現に、ルチアの話によればあれから一時間、微動もしない。そうして動かなければますます、テレシアの仮説は現実味を増して行くのだ。
とにかく、動かぬのだ、今の内にやるべき事はやっておく必要があるだろう。特に、これからどうするかは大方の話し合いは先の内についている。ならば、その先にある結果を手繰り寄せる為に、練るのは一つ……戦略だ。
何も考えなくてもあのまま放置は出来ない。戦いになるのは解っているのだから、その戦いに勝つ戦略を立てるのは特にこのプランサスロンスの人間は日常茶飯事だろう。
一同はまずはテーブルに座り直して、ルチアも交えて、紅茶を淹れて今度は作戦会議に入る。異常があれば、テレシアの発明品を使っているグレイスか、入口付近を監視しているルチアが知らせるシステムで、すぐに出動出来る状態にはしておく。
さて……、と開口一番、グレイスが言葉を放つ。
「テレシアの仮説は確かに解った。彼が動かないのも事実だ。だが、この場で止まっていては真実を知っていても仕方がない。まずは行動しなければ……」
彼の言葉に頷く。確かに、このまま何も行動しなければ、いつかはあのグールの大群等々が一般市民に露呈するであろう。
やるのであれば今の内に、一斉に排除か、説得をする必要性があるのだ。……説得と云うのはシュタインの意見であるが、正直、話が通じる相手とは思えない。同じ意思のある人間の良き隣人だったとしても、それは拭えない。
長い時間の間で、人間と魔族の溝は深くなったと言えよう。交わる時も無く、何百年も生きて来たのだ。繋がりなどある訳が無い。
話を元に戻し、あのままグールを放置しておいた場合、最悪のケース、国に見つかった場合を考えると、こうして作戦を練っている暇は殆ど無いのである。
その理由の一つが、この国、プレザンス王国の現女王が打ち立てている政策の一つ「情報開示主義制度」である。これは政府が持っている情報を国民に開示する政策であり、魔術の存在もこの政策によって明らかになった。当然これらは良い例も存在しているのだが、悪い例も存在している。近年では魔術革新派と科学革新派の争いが一つの例として挙げられる。時には開示され続ける情報に対しての批判も噴出しているほどだ。
当然、今回、グールの大群の情報がこの制度によって表沙汰になれば、必然的にそれを率いている魔族の存在も露呈する。結果、国民に包み隠さず公表し、混乱を招き入れるのは解り切っている。
さすがに、女王もそれほど愚かではないだろうが、魔術情報の例もある。念には念を入れておいて正解だろう。
加えて現在の情勢である。魔術革新派と科学革新派の両者が緊張状態にある中で、魔族の存在が表沙汰になれば、さらに拙い事態になる。想像もつかないほど、プレザンスと云う国が混乱に陥れられる。悪化する情勢の中で、国民の不安、不信感が漂い、中には国を出る者も現れるだろう。
視点を、革新派両者の方に向ければ、強大な魔力と魔術を持っている彼らに対して科学革新派は黙っていないだろう。一触即発の状態になり……争いが始まるのも考えられる。
一方の魔術革新派の方はそんな魔族たちを優遇し、自らたちの傘下に入れると云う可能性もある。
どちらにしろ、最悪の展開が待ち受けている。
戦争。その一文字が一同の脳裏を過る。ここで冷静に考えられる時間を持っている自分たちだからこそ、この国の情勢、そして危機を感じられるのである。女王は一体何を考えているのであろうか?
以上の事から、魔族の存在を伏せておくのに越した事は無い。無駄な争いをプレザンス王国で起こしたくは無い。死人を出したくは無い。それは万人が思い、願う事柄だ。
故に戦う。あの魔族を何としても、表沙汰にしない。それが、自らたちが下した決断だ。
「……表沙汰になれば、わたしの実験も続けるのが面倒になるな。情勢が変われば学院の施設もどうなるか解らないしな……」
テレシアは相変わらず自分の事しか考えていない様子であるが、どちらにしろ、協力してくれるのであれば意思は問わない。
「元々、森に面倒なヤツが居る時点でわたしの実験の妨げになってる。……ぶっ潰す」
思い切り顔を歪めて嗤う彼女の顔は、狂気であり、しかし不思議と優美である。
だが、妥当魔族を打ち立てたとしても、彼に敵う力を自らたちが持っているかどうか……それが一番の問題である。勇気と無謀は違う、戦うべき相手を間違えられない。
戦闘集団であるプランサスロンス一族ですら、魔族相手に単独は危険と判断している。周りの小隊隊長を眺めていれば、これから戦いに行く敵がどれほど強大かを窺う事が出来る。
相手は正真正銘の化け物だ。人間の常識を超えた、化け物である。寧ろ、現在この場に居る人間だけで立ち向かえるかどうか謎なところである。
が、シュタインは一人で立ち向かった。魔族と云う尋常ではない、人間とは思えぬ能力を持った人物と戦い、こうして生き残って来たのである。それでも奇跡―――あの時、グレイスが介入しなければ命は無かった。
小隊を幾つかぶつければ、さすがの魔族といえども圧倒出来るかも知れないが、そうした場合、この村の守護や、周りから来る魔物の対処が難しくなる。つまり、全戦力を投入する事は出来ない。
「出来たとして、こちらの限界は三小隊ほどですな」
ざっと、十五人だ。十五人で、あのグールの大群と魔族を全て止められるかどうか……解らない。だがやるしかない。
「それで良い。残りは村の警備に当たって貰う」
「了解です」
これで大まかな戦力は決まった。あとは……
「魔族にどれだけ人員をぶつけるか、だな」
それが一番の問題である。
グールは、喩え魔族によって様々な兵器、もしくは魔力を付加されているとしても所詮は腐った人間だ。だがしかし、魔族は別だ。確固とした意識と、肉体を持った兵なのである。並大抵の人間をぶつけても返り討ちにあうだけだ。
最低でも、三人以上、彼にぶつけなければならない。しかも、隊長級の力を持っている実力者が必要だ。
誰がぶつかり、誰がそれまでの経路を作り出すか……考えている中で、一人、手をあげる。
「ぼ、僕が行きます!」
思わぬ立候補に、一同の視線が集まるが、小隊長の一人の男が口を開いた。
「……先の戦いは運が良かっただけだ。子供は引っ込んでいなさい」
「そうだな。戦いは大人に任せて、キミはここにいたまえ」
「だがしかし、運も実力の内と云う言葉もある。それに、彼はグレイスが来るまで魔族と互角に渡り合ったではないのか?」
「喩えそうだったとしても、子供を戦場に連れて行くワケには行かん」
確かに、今回の戦いには命が掛かっている。子供が首を突っ込むべき代物では無い。
だがシュタインは居ても立ってもいられないのだ。目の前で誰かが苦しむ要因が存在していると云うのに、それを放っておくなど、彼には出来なかった。だからこそ、立候補したのである。魔族との、危険過ぎる戦いに。
「彼は確かに、魔族と互角に立ち向かった……だが確かに実力不足は否めない」
黙って彼らの話を聴いていたグレイスが口を挟み、言葉を放ち始める。
「だが……こちらも人員が不足している。いや、不足、と云うよりも、今までにない強大な敵に人がどれだけ居ても問題無い状況だ」
そう言うと、彼はシュタインの目の前に来て―――
「私がサポートする。存分にその力を振るってくれ」
「あ、あ、ありがとうございますっ!」
思わず声が裏返ってしまったが、礼を述べつつ、シュタインはグレイスに頭を下げた。
その後ろで、テレシアも頭を上げ、口を開く。
「私も参加させてもらうよ。そっちと違って、私はオッドアイだし、魔術の力も断然、お買い得だと思うけどねェ」
確かに……。同じ年齢のテレシアに対しては、周りに居る小隊長の人間たちは反対など何一つしなかった。自らたちの主であるグレイスと同じオッドアイの持ち主なら大丈夫だろうと思っているのであろう。それに、この目の前に展開されている妙な機械類を見せられれば、何か策を持っているのではないのかと、思ってしまうのは仕方がない。
ちなみにエリセは大人だ。戦闘参加に反対するのは誰一人居ない。彼の能力は、未だに良く特性が見えていないのであるが、どのような戦いをするのか、少し楽しみでもある。
……ちなみにグレイはと言うと……この村に残るのを選択した。
もし、この村に魔物が攻めて来た場合や、異常が起きた時は、彼はこの村の為に戦う事となる。
「俺だって、勇気と無謀ぐらい……解るさ」
シャルルに肩を叩かれて、頼むぞ、と言われる。するとグレイの顔は、決意の瞳になるのであった。
誰かに頼りにされるのは、彼にとってはなかなか無い経験であり、心の底から歓喜した。
―――そうして、一同がこれより行う魔族に対するコンタクトの作戦と、人員が決まる。
まず、グールの対処だが、量が多過ぎる。全方位の魔術を扱えるテレシアとグレイス、そしてシャルルと一つの小隊で対処する。
それだけで大丈夫か、と思われる構成だが、考えて見れば、オッドアイの人間が二人戦闘に参加するのだ。充分過ぎる。
「それに、シャルルにはアレがあるからな……」
アレ、とは……? 良く解らなかったが、シャルルにはどうやら隠された能力が存在しているらしい。それなら安心だ。
……そして問題の魔族への対処だが……一度戦闘を行い経験したシュタインと、エリセ、小隊二つとその隊長で挑む事となる。
本来なら、エリセはグールの方に配置されるはずだったのだが、本人の希望により、魔族の方への戦闘に参加する。何やら、秘策があるらしいが、あとになったら教えるとの話だ。
戦いの準備は整った。あとは、魔族が待ち受けるプレザンスの森の入口に向かうだけだ。
数では圧倒的な差がある。問題は、魔族の強大な魔力と魔術、常人を遥かに超えた代物が、さらに予想を上回る力を誇っていないのを祈るだけである。もしそうなるのであれば、これは負け戦だ。
神に命運を任せた―――戦いとは、常ではないが、そう云うものが左右する。
村の入り口から行くと相当時間が掛かるのは解り切っている。しかし、ここで何かしらの移動手段を使ったとすれば、向こう側に感づかれる可能性がある。正面から突入するにしろ、出来れば直前までは気づかれない方が良い。
何か動きがあれば村に居るルチアが思念でグレイスに知らせてくれる。それならば安全だ。すぐに急いで対処出来るからだ。
一方の村に残るグレイたちは、その背中を見送る役割を担っている。それも、立派で、重要な役割だ。
「大丈夫だ。こいつは友人の為に戦える肝の据わったヤツだ」
シャルルが行く間際に村人にそう説明してくれたおかげで、残った小隊の人間ともすぐに打ち解ける事が出来、背中を叩かれて、笑顔で見送る。その様子を見て、シュタインは安堵する。
負けられない戦いが目の前にある。この国の混乱を招くか招かないかは、自らたちに掛かっているのだ。この戦いは負けられない。
シュタインが村を出ようとした時、後ろからグレイスに襟を引っ張られ、思わずそこで転んでしまうところであった。
「な、なんですか?」
体勢を立て直して向き合うと、今の行動に対する疑問を投げ掛ける。
「何って……これから巫女の加護を受けるんだよ」
「みこの……かご?」
そうだ、と続けられて、説明を受ける。
「巫女の加護は、この村大一番の仕事の時に、その年の巫女から戦士に与えられる加護だ。―――本来は、小隊長などにしか与えられないが、今回はルチアがやると言ったんでな」
いわゆる、まじないのようなものなのだろう。
取りあえず従うとしよう。この森の習わしなら、この村に現在いる自分もそれを受けよう。折角やってくれると言うのだ、ありがたく受け取るとする。
ルチアの目の前に立ったシュタインは、周りを見渡す。他の人間は既に儀式を終えたらしい。
「ルチア、頼むぞ」
「はい」
手のひらを向けられて、そこに座るのだと思いシュタインは座ろうとするが、後ろの小隊長から、立ち膝を着く事を教えられて慌てて直す。
「慌てなくても大丈夫です」
微笑する彼女の笑顔は、美しかった。
テレシアとは違う、また違った美しさ。テレシアが妖美と言う言葉が似合うのなら、彼女は可憐と言う言葉が似合う少女であった。
と、それまで彼女に見とれていた自らに気づき、シュタインは眼鏡を直して、ようやくいつもの顔に戻る。
それを待っていたかのように、ルチアが手のひらをシュタインの顔のところに持って行くと、白く、美しい、透き通ったような肌の中に存在する、ルージュの、繊細で美しい唇から言葉を漏らす。
「―――ソナタは我が運命と共に。領地プランサスロンスを、御身に預ける。力と共に、真なる名と共に、其はシュタイン・プレッサ。
ご武運を、シュタイン……」
最後に、唇が額に当たって、儀式は終わる。
…………後ろでその様子を眺めていたテレシアは、舌打ちをしながらその場を一足先にあとにした…………
そのまま目を開けて、額に手をやると、少し頬を赤くする。予想していなかった出来事に、胸の鼓動を早くする。何せ、目の前に居る美しい少女に口づけをされたのである。誰でもそうなる。
これが儀式。戦いに赴く前の神聖の儀式だと感じると、そのような感情はすぐにでも落ち着く。
「終わったようだな」
後ろから現れたグレイスは、手元に一振るいの剣を持っている。
剣に関して、質問を投げ掛けようとしたところで、彼の手が自らの胸元に突きつけられた。
「これをやろう。魔力で剣を作っていては手遅れになる可能性もあるからな」
「あ、ありがとうございます!」
「それと―――」
剣を受け取ると、グレイスはシュタインをこちらに寄せる。
「―――本来、儀式に口づけはない」
凄まじい形相と、目つきで、シュタインはそう呟きを掛けられた。
自らの妹に手を出すな、と言わんばかりの殺意に満ちた目つきに、苦笑しか返せなかった。
そうして……一同は村をあとにする。
to be continued......
この記事にトラックバックする