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絶望への共鳴 // ERROR

深層心理へのアクセス。結城七夜の日々。徒然日記。 裏; http:// lylyrosen. xxxxxxxx. jp/ frame/ water. html

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命の価値は全ては同一である。そこに優劣は存在していない



明日からテストが始まります。なのにこうしてカードゲームを弄ってしまうのはもう仕方のない事なのかも知れませんけど……とにかく、プリントとかをやり直して、何とかこの場を乗り切りたいと思っています。さすがにテストで落とすのは拙いですから。
そんな中今週も『最上の命医』を見ているワケですけどね。これは逃す訳には行きませんから仕方ないんですけど、勉強時間を著しく少なくしてしまったので、明日の朝にまた勉強の仕上げとしたいと思います。
……そもそも、こうしてblogを更新している自体がアレですけどね……まぁ、それは昨日も更新しなかったのに今日も更新しなかったと云うのはさすがにこちらも拙いので。
それにハスミさんへの小説もありますしね。それも大きいです。

何でも、寒さのピークはもう過ぎたそうです。
今日のとくダネで言っていました。これからはさすがに凄まじい寒波に見舞われる事はないそうです。……まぁ、あくまで予報ですけどね。
本当に寒い日が続いて、昼間暖かいな、と思っていても、夕方辺りになってから陽が落ちると凄まじく寒いと云うのは良くあるので……
今日も夕食などの買い物に行く際にスーパーに行ったんですけど、凄まじく寒くて、手がもう冷たくて冷たくて、大変でしたよ。本当に、早く暖かくなって貰いたいものです。

暖かくなって、花粉が飛ぶと、花粉症の方々は大変だと思いますけどね。ちなみに父親が花粉症で、毎年苦しんでいます。



今日のNEWSはお休みです。
……良いヤツ無かったんで。



以下小説です。





 
 歪んだ森の向こう側から、突然現れたものに珍しく目を見開き、舌打ちをして、浮遊魔術を行使。木の枝の上に乗る。……彼女の体重は平均以下、軋むものの、枝は強靭に彼女の体重を支えていた。
 いやしかし、まさか……これほどの規模とは思っても見なかったのである。確かに先日の事を考えると出て来ても全く不審ではない。寧ろ、出て来る事を前提でこの場所に居たのだが、如何せん、その規模が予想以上であったのだ。
 埋め尽くすほどの量。吐き気を催すほどの量のグールは、その腐った、そして呪詛をまとった体を動かして、苦痛の呻きをあげながら歩く。その様子を、テレシアは静かに木の上から見守っていた。
 いや、見守る以外には何も存在していない。下手にあの集団の中に突入してもやられるだけ。しかし、本心としては昨日の件もある、グールの一匹を捕らえて実験台として使用したいと云う念もある。調査も必要だ、如何にして人工的にグールにする事が出来るのか……どのような魔術を使っているのか、果たしてそれは本当に魔術なのか……
 考えるだけで背筋が震える。恐怖ではない、歓喜と、欲望―――本能が、彼らを捕まえて、解剖して、■■■シテヤリタイト―――
 だが同時に不可能だと、現実も内心に湧きあがって来ている。何せあの量だ。結果として量が質を勝っている限り、突入は容易ではない。せめてあと一人でも、味方に着いて、魔術を展開する時間を稼ぐか、突入してなぎ払う攻撃力があれば良い。
 ……ああ、なるほど。相槌を打つ。そうなると、あのシュタインを連れて来る事も悪くはない。剣に関しては彼ほどゲーベルで熟知している人間は居ないだろう。―――何故カメリアに入学しなかったのかが謎なところだ。
 全く、その辺にもう少し自分に忠実なパーツが欲しいところだ。完全服従、自らの実験につき合う人間が居れば、悩むなど無いと云うのに。現に、そんな人間は存在しない。
 ―――視線を目の前に戻してグールを眺める。一体彼らはどこへと向かっているのだろうか。
 懐からコンパスを取り出し、方角を確認すると、森の奥地らしい。町の方面へは向かっていない。あくまで、森の奥へ、奥へと向かって行っている。
 向こう側はテレシア自身、まだ足を踏み入れた事の無い場所だ。当然、機械も設置されていない故に科学的なサポートは一切無い。
 ……何を求めて先に行く。その先に何が存在していると云うのか。
 口を結んで先に向かう。一応、見るだけは良いだろう。戦闘を行う訳ではない。枝から飛び立つと、浮遊魔術を上手く行使して目の前の木々へと次々に足を掛けて渡って行く。
 蠢き、ひしめき合うグールの姿は滑稽だ。異様な気配を…………
 と、来たところで、また妙な、違う気配を感じた。
 思わず足を踏み外して木から落ちるところだったが、手を使って木からぶら下がると、浮遊魔術で木の上に乗り直す。
 そこで気づく。
「……おいアホ教師」
 魔力の気配と色に、感じ覚えがあったのだ。
「はいはいィ。なァんだ、気づいてたの?」
「そんだけあからさまに魔力を放っていれば、餓鬼でも解る。ははん、つまり、オマエ気配を消すやり方忘れたなァ?」
「いやァ、妙な気配をたどッていたら……まさか森をぐるりと一周してここに来るとは思ッてなかッたけどねェ」
「聞けよ、マヌケ」
 同じようなやり取りを先日も行ったような気がするが、この男の話を聴かない神経を考えれば覚えてもいないだろう。何度言っても同じだ。
 ……しかし、一周してこちらに来たとは莫迦な話だ。
「それ、何かにやられてんじゃねーんかね」
「あー……それは途中から僕も思ッてたところ」
 でもどうしようもない、とはつけ加えた言葉だ。確かに、発動しているかどうかの魔術や呪いなど、攻撃を受けていないと考えても同義だ。発動して初めて、それは自分への危害へと切り替わるのだから。攻撃をしない戦争と同じだ、表向き戦争と言っていたとしても、何もしていなければそれで平和なのだからそれで良い。
 もし何かをされてここに来たと云うのなら、これを見せる為に相手がやったと考えても不思議ではない。
「いやまァ不審な気配を感じたから途中で方向転換したんだけどねェ…………本当は、嫌な気配を追ッてたはずなんだけどなァ…………いつからすり替えられた…………」
 最後の呟きはテレシアには聴こえていなかったようだが……まずは目の前の事を知るのが一つだ。
 このグールの大群は一体何なのか。
「さぁ? 異常発生か……」
「もしくは、昨日の事を仕掛けた人間の仕業―――かねェ」
 恐らく後者だろう。二人で同じ結論にたどり着いたのは一秒も必要としなかった。
 述べたように、グールは、人間が死後の怨念や呪いによってこの世に留まる、腐った、生きた死体と云う意味だ。ここ数日、人間が大量殺人されたなどのニュースは耳にしていない。……何かしらの手段で、こうなったと考えるのが自然だ。
 自然に起こる行列ではない。人工的に起こされた行列なら、それはそれで興味深いのは、昨日と同じ思考。
「……昨日は、捕獲し損ねたしな……」
 今、隣にエリセが居る時点で、手駒は揃った。準備は要らない。魔術を使用して一気に爆砕すれば良い話。その中から、一匹でも良い、サンプルを入手出来ればすぐに撤退する。
 白衣の袖をまくって、準備をする。エリセは……眼鏡をあげて、もう準備完了とばかりに手を目の前に突き出していた。
「―――シン、」
 刹那、鈍い音が響いて、上からの圧力にグールが潰れた。エリセが放ったのだ。……さて、一体今回は誰の魔術を真似ているのか、考える時間も勿体ない。
 緑色の魔力は放たれた―――開戦。
 
                      ■■■
 
 重圧に押しつぶされたグールの中に、浮遊魔術を使って綺麗に降り立ったテレシアは、白衣の裏側から発明品を取り出す。
 ―――形は、小さな剣の印象。瞬間に鈍い音を響かせて刀身のみが伸びる。ただし、柄の部分はあくまで小さいまま。
 構えている印象、指の隙間から爪が伸びているような……武器で言えば『クロウ』に近い。しかし一本ずつが独立している為に、やろうと思えば投げつけて使用する事の出来る汎用性の高い武器として開発した代物だ。
「セイ―――ッ!」
 掛け声一閃、空気を切り裂くが如く。
 中心に居るテレシアを基点として、一気に円上に切り裂かれたグールは、腐ってしまった血をその場に飛び散らせて落ちた。
 刹那、気づくだろうグールの集団がこちらを向く。解っているのだから逃さずその剣を投擲すると魔方陣を描く。
Set―――」
 ……詠唱は必要ない。これら剣の刀身に全て詠唱用のルーンは刻んである。あとは刻んだルーンを発動させる魔力を一気に一帯に流すだけ……
 流された魔力は中に入っているプログラム通りに軌道を変更し、動き出す。流した魔力には、浮遊魔術に加えて他にも軌道を描く式を挿入しておいた。
 つまり、それは突然物理法則を無視して、別方向に動き出す。
 無造作に投げられた剣は軌道を変更して、襲い来るグールに対して顔に向かって直撃する。腐っているグールの顔を容易く貫き、貫通した。
 貫通した剣をそのままに落ちたグール。しかし、行進する彼らの数は異常だ。まだ、安心出来ない。次の武器を取り出すラグを―――エリセがフォローする。
 緑色の魔力―――テレシアいわく、エリセの魔力の色―――が編まれて、一気に魔方陣へと変貌する。刹那に魔術へと変貌して発射される。真直ぐ飛ぶそれらは、槍の如く―――
 流れる場所を焦土と化して行く。
 轟、と音を立てて燃える大地。その中でテレシアが武器を取り出して、今度は槍に近い形のそれを握って、投擲する。
 ―――基本、今回テレシアが持って来たのは投擲用の武器しか持って来ていない。と、言うのは、得体の知れない敵に対して無駄に接近をすれば拙いと解っていたからである。故に、投擲武器ばかりを収納し、接近戦用の武器は最小限に備えた。
 当然、それだけではなく、魔術に関しても戦力に加算される。単独でも多くの敵と戦えるが、しかし、戦力が多いに越した事はなく、保険にもなる。エリセは後方支援としては最高の人間だろう。
 掛け声一つ、一気に投擲された槍の軌跡上に存在していたグールの集団が一気に殺害された。上半身を持って行き、下半身だけを残して行く。脚の方は残って、まるでスプリンクラーのように腐った血が飛沫をあげる。
 次―――、息を吐く暇も無く、次の行動へと入る。次の武器を選択する暇も無い。手に取った武器をいかに使うかどうかを一瞬思考すれば良い。
 浮遊魔術を適応して一度上空に跳びあがったテレシアが次に取り出した武器は丸型をしている代物だ。鉛色のそれらは、見ればただの爆弾にしか見えないのだが―――
 地上に落ちるその前に、地上に向かって丸型のそれを投擲すると、着弾、爆発。中身を一気にその場に出現させる。
 中身は、冷気に近い。ドライアイスのように煙をあげて、停滞する。
 地上に降り立ったテレシアは舌打ちした。……なるほど、これは確か煙幕の代わりに作り出した代物だったな、と額に手を当てる。
 いや、丁度良い。ここで時間を稼いでいる内に、次の武器を自らが選択して取り出す事が出来るのだ。
 取り出したのは、この場に最適だと思われる代物だ。一つの場所に留まりつつ、かつ、遠距離攻撃が可能であり、威力のある代物を、彼女は一つしか思い浮かばなかった。
 取り出した二つのそれは、手に収まるほどの大きさだ。手で握れるグリップ、外れないように調整された代物……長くされた体は、標的をロックする為にある。
 ―――銃。あまり多く普及されていないが、それは、殺傷能力だけなら魔術でも全く問題無いからだ。銃を使うのは、魔術を上手く扱えない人間か、科学推進派ぐらいのものだ。
 しかし、テレシアはどちらでもない。だが効率的な物を好む故に銃をチョイスした。
 銃はアナログ故に、魔術のような面倒な、式を一つずつ組みあげるような、詠唱を必要とするようなものではない。シングルアクションで扱う事の出来るのだ。―――それに、魔術師故のアレンジを加える。
 述べたように、弾丸を込めるのはアナログ、魔術のような面倒を弾くが……アナログだからこその弱点は、〝果て〟が見えている事にある。
 弾丸は持つ量に限りが存在する。特に今の状況のような、敵が何人かも解らない状況では弾丸は幾つあっても足りない。尽きてしまえば銃は玩具と対して変わりはない。中に込める代物が無い以上は空気を打つだけの代物だ。
 それを解決する術はある。存在している。認めている通り、魔術は確かに万能だが、面倒だ―――そして面倒をアナログで解決するのが銃や剣のような代物―――それらを融合させて使うのが、テレシアだ。
 現代、魔弾と云う代物はあまり普及していない。当然のように、まだ魔術派と科学派に分かれている以上、二つの融合はあり得ないのである。
 だがテレシアのように、魔術や科学の両方を突き詰める異端の人間には、それは関係ない。全ては、より良い成果を求める為……
 結果として、テレシアは二つの弱点を補う事に没頭した。つい、半年前の話だ。銃の使い勝手に目をつけた彼女が研究し、一つの発明品を作り出したのだ。
 ―――乾いた音を響かせて銃から弾丸が飛ぶ。一直線に奔るそれらがグールに直撃すると、グールの体内で炸裂して、内側から壊して行く。
「エグイねェー」
 フォローに入ったエリセが率直な感想を述べるがお構いなしだ。殺しの方法に卑劣など存在していないのと同じで、使う兵器にも卑劣な代物は存在していない。勝てばそれで良い。甘い感情は一つも要らない。
 弾丸を使い果たした刹那、リロード作業。詠唱は要らない、だがトリガーとなる言葉は必要となる。……トリガーとなる言葉を紡いだ瞬間に、弾丸は生成され、指の隙間から放たれて装てん。
 ―――そう、彼女の必要とした魔術は、無機物を何も無い場所から生成する―――錬金術の一種である。魔力を編み、武器とする方式は不可能ではない。だが手間が掛かる上に、強度などは完全にその人間の魔力の濃度、設計、様々な要因が絡んで来る。大きさが大きければ大きいほど、繊細な代物なら繊細な代物ほど、それは難しくなって来る。
 一方、彼女が生成するのは手のひらサイズの、しかも本当に小さな弾丸である。設計図など必要ない。リボルバーの中に装てん可能で、かつ、放ち爆発すればそれで良いのだ。生成にそこまでの魔力は必要ない、それに時間もそこまで必要としない。
 ただ一番の問題としては、このリロードをわざわざ手のひらに生成する必要性があり、直接リボルバーの中に生成する事が出来ないのにある。……座標を計算している暇があれば、手のひらに直接生成して直接装てんした方が早いからだ。
 鈍い音を響かせて、リロード完了。乾いた音を響かせてリボルバーを収納、回転。トリガー、オン。放たれる炸裂弾は魔力が尽きる前にグールに直撃する。魔力の限度が来れば消えてしまう産物も、銃の早さよりは遅い。
 ち、と舌打ちをしながら何回もその作業を続けるのだが、一向に彼らが少なくなる感覚は無い。木々の上に一旦跳び、浮遊魔術を使いもう一段、高い木々に乗ると、辺りを見渡す。
 際限が無い―――再び舌打ちをする。今彼女の視界に収まっているグールの数を数えるだけで五十前後。恐らくまだ居ると思われる。これだけのグールのを、一体ずつ銃を使って倒すなど……莫迦らしい。自分から始めておいて迂闊さを呪う。
 手のひらに収まっている銃を眺めて、もう一度、地面へと降り立つ。しかしこれしか安心な方法は無い。上からこの弾丸を使って撃ったとしても、途中で魔力が尽きる。なるべく地上でなければならない。
 二丁拳銃で足りないのなら数を足したいところだが…………横目でエリセを見ると、彼は手を振る。―――出来ない、の合図だ。
〝クソ教師が〟
 手を振るって、銃をもう一度握り直すと撃つ作業へと戻る。手を休めれば、敵はすぐにでも押し寄せて来る。
 ……際限無く奥から溢れて来るグールを前にして、疲れが来始めたのは、戦闘を行ってから十分を過ぎた辺りの話になる。
 テレシアの魔力のコントロールが利かなくなって来たのだ。魔力が暴走し、弾丸が希に手の上で爆発する事が増え、次第にリボルバーに装てんする弾丸の数が少なくなり、リロードする回数が増える。
 エリセの方も同一だが、彼はテレシアのように両眼異色の膨大な魔力を誇っている訳ではない故に、単純に魔力の底が見え始めただけの話だ。……魔力のコントロールは上手く行っている。単に、節約を始めただけ。
 魔力が多い魔術師は―――特に、テレシアのような両眼異色の魔術師は―――魔力の心配は殆どない。純粋に、魔力を保有している枠が巨大なだけではなく、生み出し、コントロールする魔力もそれに比例して多くなる彼らは、眠りで完全回復する事は無い。それでも充分過ぎる魔力を保有しているからだ。だがしかし、今のテレシアの状況のように、膨大な魔力の泉からパイプを使って魔力を取り出す工程に、徐々にズレが出始めると、魔術師は正確にその魔力の量を測る事が出来ずに暴走する。
 これが、魔力の暴走である。天才故の、リスクだ。凡人には無い贅沢な悩みである。
 魔力の暴走によってもたらされる代物は、正確な魔力のコントロールを失うだけではない。他にも、それらの暴走によって精神的にも、肉体的にも疲労が増し、蓄積されて行く。
 しかし、もっとも恐れるのは、魔力の暴走の果てのオーバーロードと、逆流の二つ。これを起こせば魔術師本人の魔力を扱う力は破壊され、再起不能となる。中には、死亡する例も少なくない。
 ―――そんな状況を、彼女は解っている。だからこそ、今は撤退に力を注ぐのである。
 だと云うのに、このグールはそれをさせない。彼の攻撃は疲れを、痛みを、際限を知らぬ無限の代物なのだから。
 ここで彼らの動きをもう一度、再確認する必要がある。
 グールは、述べたように死んだ人間が何らかの呪い、思念の類でこの世に留まり続ける『リビングデッド』である。フィクションの存在で例えるなら、ゾンビと云う代物が一番近い。彼らは、その生前の器によって能力を左右される。……当然、スペードランクの魔術師がグールになった場合、その能力はマイナスされて、具現化する。スペードのAクラスの魔術師がグール化した場合、スペードの「A--」として魔術が作用する。
 ちなみに、テレシアが感じるに、目の前のグールはどれも、クローバーか、ハートランクの魔術師―――自らの足元にも及ばぬ存在に、さらにマイナスした存在だと云うのに…………
 彼らはそれを、数によって補っているのだ。痛みを知らない彼らだからこそ出来る芸当。
 恐怖。死んでも溢れて来る同じ存在に、圧倒的な恐怖を感じるのは普通の人間の感情だ。生憎、テレシアは普通ではなかった為にその感情は現れなかった。
「だーッ! 畜生ッ!」
 銃を戻して、魔方陣を展開する。
「おいクソ教師! 援護しな!」
「へィへィ…………将来キミと結婚する子は苦労すると思うなァ…………」
 あえて何も言わずに、テレシアは無言で魔方陣を生成する作業に移る。こうなれば、一瞬で蒸発させる―――そんな感情があったのだ。やはりこのグールを実験台として探す以前の問題があった。今は自らの身を優先する。
「こンのクソがッッッッッ―――――――ッ!
 ―――Inside my works !! Understand your mind!! OPEN――――――――――――!!」
 暴走する魔力。
 コントロール出来ない魔力。
 膨大過ぎる魔力を一気に流し込み、その膨大過ぎる魔力と凄まじい勢いに、エリセすら、眼鏡を直して口を開けてしまったほどだ。完全に、破壊だけを目的にした、魔術に、体中鳥肌が立った。
 複数の魔力が中央に向かい収縮すると、回転、収縮、回転、収縮―――繰り返す。加速によって威力を増すそれは、もはや殺戮兵器に近い。
 魔方陣が刹那に破れて、奥から収縮された青い魔術が、一気に、直進する。破壊する事だけを前提に組まれた、彼女の魔術―――木々に直撃すれば、それらは崩壊し、跡形も残らないだろう―――は、グールに向かって放たれた。
 添付オプションは、『破壊』『雷』『水』の三重属性。ベースの破壊系統に、さらに破壊の系統を重ねて、水で封印。水には、水に良く流れる雷を付加する事で破壊力を増す。当然、加速も着く。
 
 ―――だが、それが―――グールを貫く事は無かった―――
 
 …………静寂が辺りを包む。蠢いていたグールが動きを止めた。と、同時に、魔術を放ったテレシア自身も、傍観していたエリセも、その動きを止めたのだ。
 全ては、目の前の光景を見る為に。互いに、見合いの状況になっている。
 何が起きたのか、本当は理解出来なかった。それは完全なる破壊の一文字に限る魔術であった。以外は存在していない、破壊だけ。目の前の敵をなぎ払うだけの魔術だった。
 だが結果はどうだ? 目の前のグールは―――
 無傷、とまでは行かないが、ダメージは殆ど無いように見えた。寧ろ、先ほどまで行っていた物理攻撃の方が、効果があった。
 どう云う事なのか…………魔力の出し惜しみはしなかった。当然、魔力のコントロールが利かなくなって来た故に、完璧ではなかったのであるが、今出せる八割の魔力は注いだ筈だ。なのに……
 無言であったエリセが眼鏡をあげて、観察を続ける時間、それ十秒。
「あー……なるほど、ね」
 理解した。
 同時に、テレシアもそれには気づいた。
「……魔術封殺の刻印……かッ!」
 しかしそこまで強力な魔術封殺の刻印が存在しているのか……。天才である彼女の魔術を、完全に封殺したのだ。本当にあれは、魔術封殺の刻印なのだろうか……?
 ―――魔術封殺の刻印は、いわば、同じ魔術師を相手にする場合、特定の属性魔術に関しての耐性、能力の軽減を狙う、お守り程度の代物だ。
 例えば、火の魔術は水や、強力な風の前には無力だ。火の使い手の魔術師がそれを解決するべく、気休め程度に二つを半減させる、魔術封殺の刻印を刻んだマントや、グローブを着用する例はある。
 しかし封殺の刻印と言いながらも、完全なる封殺はあり得ない。スペードのAランクの魔術師でも、完全なる封殺の刻印を作成するなど出来ない。それに、魔術封殺の刻印は、相手の使う魔術が解らなければ作れない。
 では、このグールは、自分が破壊の魔術を使うと踏んで、その刻印を刻んだのだろうか? ―――自らの、体に。
 あり得ない。
 考えたエリセは、魔術を展開して、放つ。あらゆる工程を飛ばして、体が馴染んでいる魔術を放ったのだ、一瞬して、完成された魔術が一直線にグールに向かうも……四散する。
 つまり破壊の魔術だけではない。様々な魔術に関しての封殺刻印が刻まれているのだ。
 厄介、の一言では片づけられない。もはや異様の領域。
 だから―――
「にッげろォーッ」
 ―――エリセの判断にテレシアは反対しなかった。
 


to be continued......next week

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