今年はどうかしている。
結城七夜です。
いやもう一ヵ月も無い今年に文句を言ってもどうしようもないんですけどね、ええ。そんな事を一月とかに言っていた記憶もありました。
何はともあれ、ハヤテのごとく! の劇場版に続いて、個人的に嬉しいニュースが飛び込んで来まして……
乙女はお姉さまに恋している2 アニメ化!!
なんと言う……。
これはもう見るしかないでしょう!!
……乙ボクと言えば言わずと知れたセミ百合ゲームですけど、まぁその続編である2は完璧なる百合を追求した―――(以下略
語ってると長くなりそうだ。とにかく、ゲーム自体は18禁何ですけど、かなり大好きな作品です。
いや本当に楽しみだなァ……。待ちきれませんよ。
今週も一週間が始まりましたねぇ。今週から自分は年賀状を描く作業に入りますよ。じゃないと間に合わない気がして来たので、本気でやらないと……。もうね、お世話になっている方々が多過ぎて、描く量も半端ないんですよ。十枚以上の作品をあと二十日近くで描かなきゃいけないんで、少し焦っている今日この頃です。やっぱり年賀状に何を描いてー、とか言ってくれる人が一番描くのが楽ですね。何でも良い、と言われると逆に結構難しかったりするんでねぇ。
今日は以下にハスミさんへの小説がありますー。
……いつもの朝だったが、昨日とは違った事が一つだけ存在している。
それは、昨日の出来事を前提に学院に向かうのは、何か癪だった―――それだけだ。もしくは気になっていると言った方が良いだろうか? とにかく、森にあった異変と、例のグールを、もう一度だけ、調べておく必要性を感じるのだ。
もし、自分の仮説が本当だったならば―――奥地に存在する魔族が今、再び現界に現れようとしているのであれば……
それほど、興味をそそられるモノは無い。
すると、自然に森へと足が向かっていた。学院に行く途中に森は確かに通過する場であるが、今回はそのまま通過するのではなく、奥地へと歩を進めて行くのであった。
当然、猫は途中で屋敷へと引き返した。学院に向かわないとなったら、何か危険な事態でも起こると予見したのだろうか? 屋敷へと踵を返して、走って行ってしまった。
ふぅん、と呟きながら猫の行動を後ろから眺めていたテレシアであったが、野生の勘とはあながち無視出来ない事情だ。さて気をつけるとしよう、思考して、歩き出す。
―――森の木々はいつも通りだ。端に歩を進めれば、自らの発明品が健在な事を知らせている。この辺りはまだ大丈夫なようだ。念には念を入れて、手を上にかざして魔術を展開して、発明品を全起動させる。
刹那、体中に掛け廻る倦怠感。さすがに、全起動は体に負担が掛かる。魔力も著しく消費する上に、体の移動能力すらも制限される。だとしても、自分の体の保持が第一だ。いつもと違う森へと昨日変貌したのだから、念には念を入れておくべきだ。
今のところ、伝えて来る情報の中には異常は見られない。当然、自分の踏み入れた経験のない未知の土地で何かが行われていれば、話は別になって来るが……。少なくとも、自らが足を踏み入れた土地では、何も起こってはいない。魔力の異常な増大も、魔物の動きも少ない。
しかし……感じるだけで実際に見られないのは不便だ。やはり、何か映像を直接見せるようなシステムを開発する必要性がありそうだ。これからの発明品の名目に含めておこう。設置されている機械に映像を伝える何らかの技術を搭載する急務―――メモ帳にメモしておく。
発明品を起動させる多くの魔力を吸い取られながらも、先に進む歩の早さは変えない。いざとなれば回路を遮断すれば良い話。それでも辛い事に変わりは無い。無尽蔵魔力は、回復には昨日の睡眠では足りなかったようだ。多く見ても、六割程度の魔力しか回復していない。
……歩いて数分で、昨日のグールとの戦闘場所にたどり着いた。最初の方のグール、つまりニトロを使っての戦闘を行った場所だ。大穴は健在だった。
腰を降ろして、何か無いだろうかと入念に探し出す。昨日は時間も無かった故に多くは最終出来ていない。
取りあえず、白衣の内側から小瓶をいくつか取り出して、ポケットから手袋を取り出すと、綿棒を使って砂から、埃や、石などを採取する。収納する小瓶には魔術を付加しており、中の空気を常に一定に保つ、風の魔術が掛けられている。……本音を言えば常に真空にしておきたいのだが、自らの今の魔術ではそれは出来ない。もう少し、魔力のコントロールを上手くなり、上達すれば行けるだろうが……未だに、国家保有のスペードランクの魔術師には幾ら天才でも及ばない。
スペードランクの魔術師は、テレシアのような天才資質に多くの努力を重ねたエリート集団。テレシアのように、道を外れて魔術ではなく科学に走った人間ではない。考えてみればテレシア自身も、科学ではなく魔術に全てをつぎ込めばスペードランクには当の昔になっていたであろう、もっぱらの四学院内での噂だ。
それも含めて、テレシアは変人なのだろう。本来出来るべき事を、自分の才能から外れて、別の道へと進んで行く―――彼女の変質を現している。
―――さて、多くの情報を採取した。瓶を白衣の裏に仕舞い、歩き出す。次は、あの時最後、グールと魔術、科学を融合させた異質生命物体と戦闘を行った場所へと向かう。あそこにも多くの証拠が残っているだろう。
時刻、既に授業が始まろうとしている。しかし知った話ではない。まずはこちら側が優先される事情だと思っている。
全く、と呟く。あの学院の人間たちは頭が堅過ぎる。授業やらをする前に、実践でするべき事が多く存在しているのを知らないのだ。だから格差が生まれる。逆に自らは自分の調べたいと思った事柄に対して実践、考察を交えて行っている。結果はついて来ているだけの話。誰でも出来る。
しかしそれらを認めたくない人間が、誰しも天才だからと、格差をつけたがる。面倒な種族だ。
結果、人間は上下の明確な格差をつけておきたい生物なのだ。
面倒な種族だと例えたあとは、嫌な生命物体だ、と考える。
―――そんな瞬間に、体中に雷撃が奔ったかのような衝撃が異変として現れる。
口を開いて、呆けたがすぐに戻し、感覚を研ぎ澄ます。どこかの機械に異変があった。機械には番号をつけてある為に、番号さえ解れば場所もおのずと解る。
……問題は、それが本当の異変かどうかだ。魔力の異常な増大による異変ではなく、物理的な異変なのだ。一度それで、小動物がそれを壊してしまい―――その時は、強度はあまり良くなかった―――誤作動、無駄足を踏んだ。
冷静になって考えるとしよう。白衣の裏側から何やら機械仕掛けの代物を取り出すと、一つ手のひらで叩く。刹那、機械音で録音されている鳥の声を放って、金属羽をはばたかせて飛んで行った。あれが現状を調査して、より鮮明な情報を自らに伝えてくれる役割を担っている。映像を送れない現状を打破する為の処置だ。
異常はあれの報告を待つとして、ではこちらは当初の目的を達成するとしよう。昨日と同じ道を歩んで、森の奥地へと歩を進めて行く。
放たれた発明品は、金属の羽をはばたかせて、空を飛んでいた。
いや、厳密に言えば気流に乗っていると言った方が良いだろうか? 金属の羽を鳥のように動かしたとしても本当に跳べるはずはない。それはテレシア自身が試した結果だ。浮遊魔術で飛ばす事も考えたが、あまりにも魔力コストが高過ぎて手が出せない。配慮として、気流を最小限の魔力で見つけて、それに乗る設計をした。
『発明品シリアル007χ:タカ』―――それが正式名称だ。
タカは録音されたタカの声を放ちながら気流に乗り、飛び続ける。声が録音されているのはただリアルを求めた結果だ。他に意味は無い。
さて先を急ぐタカがインプットされた機械の場所を統計して、異常のある場所を発見したのは、テレシアがタカを放ってから二分後の話であった。ずれてしまった軌道を修正して、一旦旋回して、元の場所へと戻ると、軌道を変更する。……少々予想外れのところへと飛び、修正に時間が掛かるのも、問題の一つであり、改造の余地があるところだ。これはテレシア自身も解っており、今のところは支障が無い為に放ってあるが、いずれ改良しようと思っている機能の一つだ。
金属の羽をしまい、降りる時、それは目的の場所にたどり着いた故だ。ちなみに、再び気流に乗る時は、異常の無い機械の射出口より発射する必要がある。つまり少しの時間が掛かる。単独で飛行する事は不可能だ。
木々の上に不時着すると、首を動かして辺りの様子を情報として取り入れる。この映像を送られれば、どれほど便利かは先も述べた通りである。出来ない故に、辺りの様子をデータ化して、断片的に簡単な信号で現す。
―――まず、確認するべきは……物理的異常のあった機械の様子だ。交信は出来るのか、情報の共有は出来るのか、射出口より機体を発射出来るか―――チェックには一分ほど必要とされる。
誰に呟く訳でも無く、一応、異常の言葉を放つ。……ガー、と呟くだけの簡単なモノだが……
次に何があったのかを調べる必要性がある。如何にして、どうしてこの状況に陥ったのか……ワンアクションで木々から降りて、地面に降り立つと、足を器用に使って機械の場所に向かうのだが―――
「―――ぎっ」
刹那、首部分をもがれて破壊される事となる。
破壊された場合、相手が何らかの敵意を持っている可能性もある為に、緊急発煙を行う。赤い煙を小さく放ち、テレシアに異常を知らせる。
さて、その一方のテレシアは、十分掛けてようやく、例の場所にたどり着いた。意外にも早かった。昨日は様々な場所を迂回してこの場所に来た為に、直進で来れば十分もあれば充分なのか、と呟く。
額の汗を拭って、先ほど見た大穴よりもさらに一回り大きい穴を眺めて、我が事ながら派手にやったものだと思う―――いや、実際にはあのエリセがやったものなのであるが、基本の魔術は自らの代物だ。彼はそれにアレンジを加えて、押し出したに過ぎない。威力自体はテレシアの魔術なのだ。
小瓶を取り出して、綿棒を使い同じように色々な物を採取して行く。
―――そんな中、赤い発煙が見えた。
「ああッ!? やられたァ!?」
舌打ちして珍しく激昂した。すぐに冷静になってもう一度舌打ちすると、考える。まさか、壊されるとは思っても見なかったのだ。酷くても、何かをぶつけられる程度だと思っていたのだが……まさか破壊とは。
はっきりしたのは、異常は人間の手によるものだと云う事実だ。動物にしても、かなり巨大な動物だろう、魔物でも同義。そうでなくとも人間以上の代物が破壊したと考えるのが自然だ。
ははん、と冷静になった目つきで口にすると、小瓶を白衣の裏側へと収納する。こうなれば一刻も早く向こう側へたどり着くとしよう。案外早めに動きがあり助かる。考えようによっては数日掛かる持久戦になると覚悟していたからだ。
走ると体力を使う。今は魔術を使うとしよう。精神的に倦怠感はあるだろうが、肉体が疲労するよりは戦闘中に支障は無い。
腕を動かして、命令を下す。詠唱は三つ。これ以上扱えばもっと良い魔術へと昇華出来るが、戦闘前の消費もあまりよろしくない。
引き出された風の精霊の力により、白衣が上にあがったかと思えば、テレシアの体自身が上空にゆっくりと浮遊して行くのだ。
これぞ、浮遊魔術。人間程度の質量であれば何とか空を飛べるのが、精霊学の研究成果だ。精霊の質量は人間の質量の遥か上を行っている故に、精霊よりも質量の低い人間は宙に飛ばせる。
円を描くように渦巻く風が少女の躯体を飛ばし、一気に木々よりも高く飛ぶ。
目を細めて辺り一帯を確認すると、赤い煙が出ている場所を発見する。飛んでいる体を動かし、横に……まるで横棒のような格好になると、再び浮遊魔術を展開、正面へと飛ぶ。
―――浮遊魔術は説明した通り、風の精霊以下の存在質量のモノを浮遊させ、動かす事の出来る魔術である。あまりにも多くの魔力を消費するのだが……テレシアの場合それは当てはまらない。しかし今日は魔力が充分ではない為にそこまで高くは飛べないが……
一般の考えでは、浮遊魔術は建築や、運搬業などに多く使われる魔術であるが、その魔力消費コストと、一般人の魔力で持ちあげられる代物が割に合わない為に、敬遠されている。結果として、数年前に空中浮遊の魔術よりも、馬などを使うのが適切だと判断された。
現在、運搬業では馬車の方が多いだろう。建築業は高いところに機材を運ぶ手間を考えて浮遊魔術を使っている。
しかしこれら浮遊魔術が犯罪に使われるケースや、その他の魔術がそれらに使われる事も解っていた事で、最近では法律に街中に特殊結界を張る法案すらも掲げられている―――
当然、この辺り一帯の法案は存在しない。浮遊魔術を使っても問題は無い。……それに、これほど広大な森になると、場所を確認する為に使う人間も多い故に法案が成立したとしてもこの辺りは免除されると言われている。
強烈な風を顔に受けながら最低限のスピードで一気に直進すると、目的の場所を少し過ぎたところで着陸シークエンスに入る。
……これも浮遊魔術が敬遠される一つであり……着陸が難しいと云う点だ。降りる場合は、地面側に風のクッションを作り、かつ、降りて行く魔力を別々に用意、コントロールする必要がある。結果として、失敗する人間は少なくない。スペードランクの魔術師でも失敗する事があるのだ、確かに浮遊魔術は敬遠され、皆馬車に行きたくもなる。現代の人間はスリルよりも安全を求めるのだ。
その点テレシアの着地は上手い。風のクッションが勢いを遂に殺し切った。全く無重力に近い状態で、地上へと降り立った。
ため息を吐いている暇は無い。発明品を破壊されたのであればたまったものではない。一体どこの誰だか知らないが―――
「出て来いよ」
呟くように、森の向こう側に投げ掛けた。
刹那―――テレシアの肢体が跳んだ。
to be continued......next week
[0回]
PR