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絶望への共鳴 // ERROR

深層心理へのアクセス。結城七夜の日々。徒然日記。 裏; http:// lylyrosen. xxxxxxxx. jp/ frame/ water. html

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ALICE / drive ACT 6







1/1








 
 
 日本の富士山には、魔物が眠ると云う……庭園、そして死屍の間にはその様な噂が存在していた。事実かどうかは不明であるが、少なくとも、富士山の頂上に行った一般市民が、行方不明になったと云う報告は受けていない為に、信憑性が全く無いのである。
 そんな富士山を監視する役目を、庭園の人間であるホルス・ノーズは請け負っていたのである。京都に存在している庭園直轄支部「機関」の本部は日本の京都に存在しているのである。と、云うのも、日本の治安は安定しており、京都と云う場所は文化の保護を国から受けている。その為に、機関の施設を隠すには丁度良い場所なのである。
 その京都から突然指令の手紙が届いた。無論、機関の指令など、庭園の人間であるホルスにとっては退けられるモノなのであるが、今回の指令は機関を媒体にして、庭園から渡された指令である。文句は一つも言えない、拒否は出来ないのである。
 指令の手紙を受けて、ホルスは歌仙市と呼ばれる場所に存在している雪見町を訪れていた。現在、活動を活発化しているのは、グリン・キャットだけでは無いのである。アメリカでは、随分前から、グリン・キャットと行動を共にしていた死屍の存在を確認しているのである。
 死屍、アルカナ・リバース。運命を操る死屍と呼ばれているそれは、実際にその人物と戦闘を行なった人物は、帰還して来た後に、必ず、何かしらの事故によって不明の死を遂げると云う、妙な曰く付きの死屍なのである。
 そのアルカナ・リバースを討伐、若しくは捕獲する為に、ホルスは呼ばれたのである。加えて、この雪見町に存在している、とある人物への協力を求める事も言われているのである。何でも、その施設は、依頼があれば魔術仕いが解決するモノだと云う……今時珍しい存在である。金にもならない事業である。
 しかし、この雪見町と云う町は随分と広い。町と云う単位では解決出来ないほど広い。話では、開発の失敗と云う事も存在しているらしい。この歌仙市は、三つの町で作られており、その内の半分以上の敷地を、この雪見町が占領しているのである。
 隣の町に行くのに、電車が必要な市はそこまで存在はしていないであろう……電車の切符を買い、雪見町を後にする。元々、此処に来たのは電車に乗る為である。本来の目的の事務所は、雪見町の隣町に存在しているのである。
 五分、電車に揺られると、電車は目的の駅に辿り着いた。尚、更にこの隣町、最後の町に行くには、バスか徒歩である。電車はこのまま、東京までレールが通っている。
 そうして、辿り着いた町。場所は――と呟きながら、紙を取り出す。駅を出て、暫らく歩く必要があるらしい。大通りの一角のビルに、事務所が存在していると云う。随分と目立つ場所に居ながらも――中々見付からないものである。
 階段を上がり、ビルの五階に辿り着くと、そこには、看板が書かれている。
『W、はじめちた』
 ……一体何だ、この事務所は。額に手を当てながら、ノックをすると、暫らくの沈黙の後に、声が響いた。色々と資料をぶちまける様な音を響かせて、漸く扉が開くと、そこには、一体何歳なのであろうか? 小さな少女が立っていたのである――勿論、小さいと言っても、それは小学生などの小ささではなく――恐らく、中学生程の年齢であろう。
「ハードボイルドに決めますぜ、お客さん」
「――そうか……」
 ホルスは頭を抱えた。この事務所に存在している数人の人物が全て、魔術仕いか適応者と云う訳である。どれも、少年少女であり、成人を迎えている人物など本当に少ない。
「事務長さんは、どちら様でして?」
 そう問い掛けると、扉の目の前に存在し散るその中学生程の少女が居ないよ、と言葉を紡ぐ。成る程、事務長は不在なのである。
「でも、依頼ぐらいは受けられる」
 その向こう側で、腕を組んでいる少女がそう答えた。ナイフの様な目をして、右目に眼帯をしていると云う事は、目が見えないのか、若しくは、怪我をしているのか……。だが、一応依頼は可能だと云うのである。
 ポケットの中から庭園の協力要請所を投げる。と、もう一人、先程の少女と同じ様に、右目に今度は包帯を巻いている少年が立ち上がり、それを拾い上げる。――その少年の顔を、何処かで見た事があった。確か、庭園の要注意人物のリストに収められていた人物だった様な気がしたのである……名前は確か――
「久我史徒」
 そう、思い出した。死屍殺しの異名を持つ二人目の適応者。今、空白のエンペラーセブン『亜牙里』のクラスに尤も近い男……それがこの少年である。最近動向が目立つ様になっていたと聞いていたが、成る程、この事務所に所属していたからこそ、依頼で動き回っていたのであろう。
 それは兎も角、今回の自らの依頼は解って貰えると、思っている。何せ、庭園からのモノである。断わる理由など何一つ無いのである。断わるのであれば、それはそれで庭園の反感を買う事になる。
 地位とは、時に残酷なモノである。絶対的な地位を持っているモノはどうにも、この様な傾向に走ってしまうのである。
 ……暫らく、沈黙を買い、視線が集中したが、奥の事務長席に勝手に座っている少女が、笑顔で立ち上がると、ソファーに座る様に進めて、鋭い視線を投げている二人の少年少女を事務所の外に追い出した。この二人が居ると、話が進まないらしい。
 さて、そうして今この場には、五人の少年少女が残った。
「さて、申し遅れました、私は金崎茜です。今日の代理人です」
 名刺を持っている辺り、流石はビジネスウーマンと云った所である。
 ――が、その名刺を受け取った刹那に、その名刺が下に曲がった。まるで、力の無くした人間の様に……
「って! これはチラシの裏側じゃねーか!」
「ご、ごめんなさーいっ!」
 誤りながら立ち上がった茜を後ろにやって、まぁまぁ、と言葉を挟む少年が現れた。この空間唯一の――久我史徒は今頃廊下で立っている為――男であろう。その少年は微笑をしながら、髪をかき上げる仕草をする。
「全く、レディに対する態度じゃないな、それは。僕にはそれは宜しくないと思うけどね」
 肩を竦めながら、そう言う少年は、どうも、この場には不釣合いな――いや、余り宜しくない存在では無いかと思われる。この様な性格の少年が此の世に本当に存在しているとは、全く知らなかった。
 髪を再びかき上げて、流し目で此方側を見る姿は、矢張り、現代の少女を虜にしそうな容姿である。
「さ、て、何様ですかね? 庭園の依頼を受けて来たと云う訳ですかい?」
 ああ、と言葉を紡ぐ。別に隠す事は無いのである。
「ふぅむ……一体どの様な依頼で?」
「……死屍、アルカナ・リバース――と、言えば解るか?」
 しかし、誰一人それに首を傾げた。成る程、そこまでは知らない人間達らしい。顔を知らない上に、資料も渡されなかった事に不思議を感じていたのであるが、恐らく、この場に居る人物達は庭園に所属していない魔術仕い、若しくは適応者である。
 だがその刹那、扉の向こう側に存在している史徒が、扉越しに口を開いた。
「……知ってるぞ、死屍、アルカナ・リバース。あの奇妙な噂が耐えない死屍だろう? 殺し屋の世界では有名な話だ」
 ――流石は久我史徒である。その辺りの情報は熟知していると言える。庭園に所属していないとは言え、庭園の人間は良い様に利用しているのである。その辺りの情報は全て耳に入ってくるのであろう。
 知っているのであれば話は早い、今回の話はそれなのである。
「まさか、アルカナを倒そうってのか? 冗談を言うな。俺は一度アレと戦った事があるが……面倒だ」
 この少年は、あのアルカナ・リバースと戦闘を行い、死んでいないと云うのか……? 今までのモノと条件が違って来る。面倒だ、と云う事は倒す方法を知っているのか、それとも死を回避する方法を知っているのか、どちらか――
 無論、どちらでも構わない。今日は依頼と、そして一刻も早くアメリカに行く旨を伝えに来たのである。魔術仕いか、適応者であるならば、誰でも良い。その人間が役に立たずとも、指揮によっては、人は想像以上の実力を発揮するものなのである。
 その言葉で、一同が相談を始めた。一体誰を連れて行くか……他の依頼も存在している故に、余り多くの人間を投入する訳には行かない。だがアルカナ・リバースはそこまで簡単に倒せる相手では無いと云う事は、良く解っているのである。
 その間、部屋の中を見て回っているホルスは、壁に立てかけてある様々な写真を目にする事になる。金髪少年が写っている写真、他にも、誰だか解らない写真やら、様々である。
 この人の道を外れた魔術仕いでも、嘗ては普通の生活があったのだろう、そう思い、溜息を吐いた。
 向こう側の相談が終わったのか、数分の時間の後に、会話が終了した。その頃には、部屋を眺め終え、目の前に差し出された紅茶も、茶菓子も全て食べ終えていたのである。丁度良い頃合である。
「解った。じゃあ、中野と、僕が行こう」
「……気が進まないけど、ま、良いでしょう」
 中野と呼ばれた少女は、溜息と一緒にそう呟いた。この二人の能力……アメリカまでの時間で学んでおく必要がある。
 
 ――三人はそのまま、近くのビジネスホテルで、二つの部屋を取って泊まる事になった。明日には、飛行機に乗り、アメリカまで行く必要があるのである。何時までも此処に留まっている訳には行かない。
 部屋の分割は、存知の通り、女性である中野が一つの部屋を、そして男性である残りの二人が一つの部屋に入る事になったのである。
 但し、先ずは話し合いから始める為に、一旦一つの部屋に集る事になった。アメリカでの行動、そして討伐に行く為の注意点などを確認しなければならないのである。生半可な気持ちで行けば、確実に殺されるであろう。
 アルカナ・リバースの個体能力はそこまで高い訳ではない。問題にすべきは、未だに良く解っていない能力の事である。ホルス自身、アルカナ・リバースの詳しい能力は知らない。只知っているのは、先も述べた様に、帰還して来た人物が謎の死をとげる事だけである。
 それが敵の能力だとしたら、時限爆弾の様に、何かの強い暗示を掛けて、一定時間が来た時に、勝手に死ぬ様にすると云う事が通常の考え方であるが……果たして。
 そこまで考えて、一旦その話を止めて、自ら達の能力を知る事にする。あの面子の中で知っているのは、史徒の持っている惨殺眼「ボルグ」のみである。それ以外の人物は、姿も、名前も全く知らない人間なのである。
「じゃあ、先ずは中野からどうぞー」
 少年の言葉で、中野と呼ばれる少女が話を始める。
「――私はそもそも魔術仕いじゃない、魔術遣いだ。契約によって成り立っている疑似的な魔術仕いだよ」
「……そういえば、俺、キミの名前知らないんだよね」
 ホルスの言葉に、中野は短く答えた。
「中野耀子だ」
 下の名前は耀子と言うらしい。
「因みに旧姓・山上ですよねー」
「五月蝿い」
 昔は山上耀子だと言う……しかし、何処かで聞いた様な名前である。――以前、何かの資料を分けている途中でこの様な名前を見た様な気がするのである。確か、死亡者リストの中に存在していた様な気がしたのである。
「だからだよ。私は公式では死んでいるのよ。だから、苗字を変えて、命を救って貰った人に尽くしているだけよ」
 ――理解した。
 魔術に関しては、魔術遣いの為にそこまで大掛かりな魔術を行使出来る訳では無いが、仮に耀子が魔術仕いだった場合は、召喚の魔術に優れていたと云う予想がされていると云う。つまり、膨大な魔力を使い、存在の空を作り出し、そこに何かの物体を具現化させると云う、一種、大掛かりの連結魔術と云うモノになっているのである。
 元々、連結など才能が無ければ出来ないモノである。通常の人間でも出来る様に庭園が研究した結果、神代の時代に存在していたと言われる召喚魔術を基礎にして、疑似的な連結を仕える様にしたのである。
 以上が、恐らく、山上耀子が遣うであろう魔術である。
 そうして山上耀子の紹介を終えて、次にそこに座っている少年の方に視線を向けると、少年はああ、と手を上げて微笑しながら自己紹介を始めた。
「僕の名前は早乙女相馬。使う魔術は……そうだね、実体の無いモノをつかむ、と考えてくれても過言じゃない。幽霊なんかはつかめないけどね」
 ……霊術師、と云うことであろう。幽霊をつかめない霊術師――なら、この少年は一体なにをつかむと云うのだろうか……? ホルスは顔を顰める。
 実体のない代物とは魔術などのモノや、零体、体に取りついた〝プラズマ〟の事をさす。熟練した人間であれば、魔術の根本である魔力をつかんで、魔術を殺す事が出来る。
 勿論、それは熟練した霊術師の話であり、基本は、零体に関しての干渉が主になる。零体にダメージを与える事――それが本来の彼らの仕事だ。概念――それこそ零体。
 人の根本に存在する魂は、死後どうなるかはわからないが、少なくとも人が人である為の魂が存在している事はわかる。魔力でそれを固体化して、干渉する事は、これまで多くの偉人が行ってきた悪魔払いと言われるものだ。
 何らかの原因で魂が具現化した代物が、現世をさまよう事を、人々は幽霊と云うが――仮説では、幽霊など実際には存在していない。ただ、静電気が偶然を重ねてプラズマ化して人間の中に入り込む――それを、脳がもう一人人間が居ると誤解し、異常を起こす。古来の人間がその現象を死人の仕業と思っただけ。
 霊術師はそれを知っている。そしてそのプラズマを破壊する事が出来るから、崇められた。
 他にも零体と云う代物に関して――
 零体は、0に存在する代物の事をさす。この世界に存在している概念が生み出した――それこそ幽霊に近い――英霊に近い――それをさす。
 「零体」=「概念」「魂」をさす。霊術などは、大方、呪いの類が多い理由として呪いは魔術と違い、この世に存在を定着させるものではなく、霊的――魂に処置を施す代物だからこそ、霊術と呼ばれる。
 概念を処置する、魂を処理する――すなわち、零体を処置する。
 魔術仕いとしては、いちいち面倒な事を覚える事を億劫だと思っている人間。以上の仮説を信じない――幽霊の存在を信じている人間も存在しているからこそ、霊術師は、零体を幽霊などと云う事がある。
 相馬は一通り説明して、部屋にある湯を沸かす為の電子湯沸かし器のボタンを押して、上にある小皿に水を入れて置く。部屋に常備されている紅茶のティーパックをカップの中に入れて、ほどなくして沸いた湯を注ぐと、皿で蓋をする。……彼の霊術に関して、色々と訊くべき事はあるのであるが……あとは実践で見るのみだ。
 二人の魔術は一通り理解した、あとは……
「お前の魔術を教えてもらおうじゃない?」
 ベッドで横になっている耀子が問うた。
 ゆっくりと、ホルスは歩いて……
「火を中心にした、宝石、石とかを媒体にした零体魔術。それが俺の魔術なんだけどな……、ちょっと、相馬と被るか……」
 ほほぅ、と相馬が唸る。彼の魔術に関心を示したようである。
「じゃあ……」
 一例を見せてやるとする。ポケットの中から、先ほどホテルの前で拾った綺麗な丸の石を取り出すと、目をつむり、念じるように魔力を込める。
 先ほどホテルの前でしゃがみ、何をして居たのかと思えば。耀子はなるほど、と言いながらそのような事を思考した。
 石を手に持って、魔術式を展開。魔術を行使して――――それを、ホテルの扉に叩きつける。乾いた音が響いてその扉が振動した。本来だったら、爆発するか、壊れるか……威力的には充分だったが、破壊されなかったと云う事は……。そしていつの間にか、彼の手からは石が消えていた。良く見ると、扉にめり込んでいる――このホテルから出た後、店員はどのような顔をするだろうか……?
 他には何も起こらない。火を中心にした魔術と言っていた為に、扉が炎上するものかと思っていたがまったく。
「――何をした?」
 微笑しながら相馬が扉を触ると――
「ああ、なる……。
 山上、ちょっちこの扉、なぐってみ」
「……だから、私は、今は……中野だ!」
 勢い良く、魔力で強化した拳で、渾身の一撃を扉に加えた。貫通するのが常……この扉も確実にそうなると思っていたのであるが……
「……」
 腕を戻す。
 そこには、無傷の扉の姿があった。それだけではない、耀子の拳が突然炎上を始め、体中を焼き尽くす―――前に、ホルスが壁にめり込ませた石を取り上げ、魔力を暴走させて崩壊させる。すると、媒体を失った炎が収まる。
「こんな感じだな。勿論、これは防御にしか使えない魔術だ。こうやって、ホテルとかに泊まるときは扉とか、窓とかに同等の処置を施す。
 あぁ、扉は……中野さん、アンタの連結で一時止めておけばいい。明日帰る前に処置を施しておけば、一日持つだろう? 次に泊まる人間がやったと思わせれば……」
「さらりとヒドいな……」
「魔術隠匿さ」
 その言葉を出されると、魔術仕いの人間は納得せざるを得ないのだが……
「とにかく、明日にもう備えたほうが良い。アメリカに行くのにも、相当の時間がかかるし……」
 そう言って、話を始めた張本人は、一番早く、部屋を後にする。眺めていた相馬も追いかけて部屋を出ると、一人取り残された耀子は、ため息を吐いて、とりあえず、シャワーを浴びる事にした。
 
 



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