魔の手は日常に現れる。
衝撃と集う魔術師。そして屋上での狂乱。
始まりと始まり。終わりと終わり。
似ているようで違う此の二つ。そして始まりから始まる終わり。終りから始まる始まり。
矛盾を通り越して、今此処で真実(ホントウ)を知るのであろう――
ハスミさんに捧げる『美少女翻弄学園伝奇SFファンタジー』小説――集いのACT 8です。
-11 days
目覚めは意外とすっきりしたものだった。
……ヒナさんは居ない。
うう、昨日の額の件はなんだったんだろう? 考えすぎだと思うけど……。
兎に角、熱も下がったみたいだから部屋に戻って準備をして学校に行こう。一日休んじゃったんだからブランクを取り戻さないと置いていかれちゃう。
ベッドから出て、服を脱いでたたんでおく。今気付いたけど、これヒナさんの服だよね?
ハンガーにかけてあるわたしの制服を着て、部屋を出る。時刻は六時半。今なら部屋に戻って準備をして学校に戻れる。朝食は学食で食べよう。
一日ぶりの部屋。ポケットの中から鍵を取り出そうとする。と、何かが当たった。
「痛ッ!」
手を反射的に戻すと、手の平が切れていた。赤い紅い血が流れていた。なんで?
身長に中を探ると、一本、刃が中途半端に柄からはみ出ているナイフが出て来た。
刃の面の部分に変な文字が刻まれていて、中々洒落ているけど、問題は其処では無い。問題は、なんでわたしのポケットの中にこんなモノが入っているのか。
だって買った覚えは無いし、他のポケットを探ってもレシートは出て来ない。それに財布の中身も減って無いし別段変化は無い。
なら、このナイフは何?
部屋の扉を開けて、中に入る。一日ぶりの家は……うん変わりは無いけど、とりあえず掃除がしたいなぁ。少し埃がたまっている。とりあえず授業が終わったら掃除をしよう。
バッグの中に午前中のみの授業の教科書を入れて、わたしは部屋を後にした。
……、手の平が痛んだ。
教室に入ると、真っ先に友人が来てくれた。
「大丈夫?」とか「具合は大丈夫?」とか聞いてくる。
わたしはそれを大丈夫、の一言で片付け、自らの席に着く。
「本当に大丈夫なの?」
目の前に由香が来る。
わたしは質問に肯定の頷きで答えた。
「ふぅん。ならいいけど吃驚したよ。また小学生の時みたいになったのかと……あ、覚えてないか」
「……そうだね。わたしの記憶は中学三年からだもん」
偶に忘れちゃう。わたしが記憶喪失だって事。
どうして記憶を失って、両親の顔も解らない。そんな状態。初めて目覚めたときはベッドの上で、おじいちゃんとおばあちゃんに引き取られて、お父さんとお母さんの顔も解らずに一年を過ごして……此の学校に入った。
「あの時はねー、あんた私の事すら忘れてたもんねー」
「うん……今でも、どうして由香と友達なのか解らない」
「うぇ、それちょっとヒドイと思うし、余り本人の前で言わないほうが……」
「ははは、そうだね」
そんな他愛の無い昔の話をしていると、カレンさんと望さんが来た。
「ごきげんよう」
「……ごきげんよう」
二人の挨拶に同じくごきげんよう、と返す。
二人も机に座り、会話に入ってくる。
「何の話ですか?」
「ああ、リンの昔の話。ほら、前言ったでしょ? リンは記憶喪失だって」
「そうでしたね。確か、中学校三年生の夏以前の記憶が無いと聞きましたが……」
「ええ、そうなんです。まぁ、今が充実しているんで戻らなくてもいいんですけど……いずれ思い出すと思います」
話はそれで終わった。これ以上この話を繰り返していても意味が無いから。
あ、ポケットの中にナイフ入れっぱなしだった。
◇
「……」
歩く。
階段を上がり、そして屋上に出る。
「……っ。やっぱりね」
あー、やっぱり。結界他にも張られてる。今まではあいつ等だけだから黙殺してたけど……この形式、見たこと無いな……何処のだろう?
魔術には形式があって、私たちが使っているようなヤツは一般的な魔術だけど、例外がある。その例外とか言うのが呪術とか、そういう陰陽師が使うようなヤツね。あれは結界に優れてたっけ……まぁ『平行結界』ほどでは無いけど。
さて、如何したものか……このまま摘出して解除しようかな……。
と思い私がその結界の根源がある場所に手を触れた瞬間……
ぎゅん、と音を立てて――結界が発動した。
Interlude......
――ずるずるずるずるずるずる。
死体を抱えてごーごー。
反対にしなくても見えちゃうんだね、うん納得。
夢じゃなかったら犯罪だけど……ははははは。
――ずるずるずるずるずるずるずる。
アレ? ナニカキコエナカッタカ?
振り向いた。
「きれー」
目の前には一つのドーム上のもの。あれ、結界とかそう云うやつ? うわ、私の夢にしては非現実的ー。
いいや、面白そうだし、あっちに行って見よう、ごーごー。
――ぎちゅ、ぐちゅ、ぺと、ぺちゃり。
グチャ。
音を立てて死体を潰す。
うわぁ、逆の事情も随分成長したなー。だった生きていると言うだけで相手は“死んじゃう”んだもん。
ふふふふ、あははははは。
さぁ、もっとコロソウ。
「ね? いこ、ガヴェイン」
「ええ。アナタの思うがままに……」
我ながら、我慢の効かない体だと思う。
死体は捨てておいた。全部で、一五体。
お昼に殺すのは拙かったかな?
Interlude END
突然暗くなった。
あれ、眠くなってきたなぁ。と思ったときには遅かった。わたしの意識は、まるでスイッチをOFFにしたかの様に簡単に落ちてしまった……ぁ。
かちかちかちかちかち――ガチリ。
何処のどいつだか解らないけど、面白い事するじゃない……久しぶりに人を堂々と殺せそう。
周りの人間はこの結果で意識を失ったから問題は無い。ま、この結界は人を殺すようなヤツじゃない。ふん、やるのならとことん、殺すまでやればいいのにね。中途半端なヤツ。
ポケットの中のナイフを取り出す。
きん、と音を立てて刃を出す。切れ味は……確かめる意味も無い。あの店員、かなり腕が立つみたいだったしな、いずれ殺し合いがしたいほどな。いや、いいや。
とりあえず、リンが持っているチカラの開放を謀る。
「あん? 何拒絶してんだ? とっと死極のまじないを寄こせ」
ばち、と脳で火花が散ったような音がした。
ち、完全に意識を閉ざしやがった。
まぁ良い、魔力の保有量は完備している。足りなくなったら吸えば良い。
結界の在り処は……屋上か――となると、魔術師集合と云うヤツか。面白い。
屋上の扉を切る。
切れ味のいいナイフだ。人間が作り出すモノじゃねぇな。
外に出ると……魔術師と対峙した。
「……」
此処に、魔術師――兼、『永遠の論舞曲』の参加者、
二ノ宮凛
藤咲ヒナ
遠野由香
渡辺明日香
聖凪
雨宮カレン
那古望
斉藤カヲリ
山上耀子
この九人が集った。
それは偶然か、必然か……今此処に熾烈なバトルロイヤルの火蓋は切って落とされた。
* A L I C E *
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