アリス……それは誰もが振り向く美少女――。
アリス……それに年齢は関係なく、最早呪い類――。
アリス……それは――卵。
ハスミ林檎 様に捧げる『美少女翻弄学園伝奇SFファンタジー』小説――開幕のACT 4です。
一部、同姓表現が混ざっておりますので、苦手な方は注意してください。
がちゃん、と何かのスイッチが入った。
-12 days
時刻は一二時を回ろうとしている。
いや、既に回っているか……ふん、時間なんて関係ない。今は目の前の状況をどうするか……と云うことが先決。
それが、『私』――二ノ宮凛の決定。
『わたし』――二ノ宮リンの方は先ほど退場願った。今ではこの体の主導権は私のモノ――誰にも止めることが出来ない。
さて……
「存分に戦わせてくれるんだろうな――? 魔術師」
この夜にこの世に舞い戻った私の第一声はそれだった。我ながら我慢の効かない感情だと思う。
目の前に居る二人の形相は知らない。驚いてるのか、それとも、悲しんでいるのか……まぁ、リンがどうなったかは後にして、今は存分に楽しませてもらうわ。
長髪で大太刀を持っているヤツ……さて、ソイツは『発火』能力を持っていそうだな。私が目覚めたときに真っ先に見たのはアイツの炎だ。魔術の一種だろうが、まぁそれはどうでも良い。片や、このガッコの制服を着ている……リンと私の記憶は共有されるわけではない。知り合いかどうかは解らないがかなりのヤリ手だ。魔術が主体の戦闘スタイルをとるらしいけど……ま、戦ってみれば判ること。
私は一歩前に出た。随分長い間動かして無かったせいか、動きにムラがある。つか、武器ぐらい持っとけよな、リンは。
「――人格変貌? まさか」
長髪の女がそう言った。間違えちゃいない。確かに私はわたしの中に存在する鬼門……畏怖の対象であり、更には自分自身の欲望の塊。
「故に――」
私は跳んだ。
何も掴んでいない右腕……霊体まではつかめないが、それなりの魔力がある。もとより二ノ宮家は古くに魔術師の血がある。多少なりとも魔力がある限り、それは人知を超える存在となる。この程度のことは全く問題はない。
ただ、私の中に居る二ノ宮リンのカタチが耐えられるかどうか。
二人の魔術師は身構えた。当然だ。普通の少女と思っていたヤツが突然変貌し、突然襲ってきたのである。驚愕しないほうがおかしい。いや、魔術師なら当然のことだと一瞥するか。
――身体能力向上は望めない。望めるのは簡単な魔術の展開のみ……ならば、一点集中で威力を部分的に大きくするだけの話。それに何の苦も無い。
が、それもまた気をつけろ……それは諸刃の剣。使えば後戻りは出来ない。体か身体が崩壊するか、それとも精神が、神経が破れるか……――
そんなモノは関係ない。
「Development type …… proof …… strengthening One point concentration Destruction Inside ……」
式を組み、展開するは魔術円……即席にしては上出来。この式の意味を知りしもの悉くを葬り去り――、
「Opening!!!」
踏み込んだ足を軸に、一気に倒壊!!
刹那、屋上の床が崩れ去った。無論、全てが崩れたわけではなく、一部のみ。現段階の魔力覚醒度ではこれが限度……だが、矢張りこの身体に廻る魔力の濃度は莫迦にならない。魔力の濃度はコイツの■■■の濃度にも影響する。つまり■■■には魔力も含まれる。
「――ぐ」
それは誰の呻きか……否、もう視えている。それはあの長髪の女の呻き……ならば標的はソイツだ。
今のままの魔力では私は消える。ならば、魔力をあの女から吸い取るまで。直接■■に口を付けるわけにも行かない……ならもっと簡単な方法で頂くことにする。
崩れる足場。魔術を中心としたあの学生は何処かへ消えてしまった。全く、あの女の魔力も頂こうかと思ったんだがな。
何を思ったのか、唇が歪む。
そう、楽しんでいるのだ。私はその行為を――
Interlude......
それは全くの突然だった。
女は目撃者を消そうとその少女に刃を向けた。が、少女は失神したのか、一旦崩れた。
そこで油断したのが拙かった。女は完全に少女に心の隙を見せてしまった。
突然起き上がる少女。そこに前の彼女の面影はない。魔力の逆流のせいか、髪の毛の色は輝くような金髪に変わり、目は光るような赤に変貌した。
「……」
言葉を失った。
少女の容姿の突然の変貌に、もとい、その少女の髪の色を変貌させるほど濃度の高い魔力を持っていることに、女は驚愕した。
先まで戦闘を行っていた少女もまた、驚愕しているのであろうが、その無垢な瞳は別に向けられている。……それは何か知っているものを見るような目。
毛ほど経った。目の前の少女が動いた。
“魔術!”
瞬時に理解した。
この世存在を司る“魔力(マナ)”を自らの魔力に変換し、魔力を生成する。口から零れるは魔術を展開するために必要な式……所謂、詠唱(スペル)。
瞬時、少女が動いた。
走る。速さ事態は無いものの、その足にトレースされた魔力は濃度を増し……刹那開放。
「――ぐ」
女は漏らす。
床が崩れたのである。
“そんな――! 出鱈目!!”
一部ではあるが、コンクリートを破壊するほどの破壊力を司ったその魔術は、乱暴な暴力以外何物でも無い。少なくとも、女にとってそれは魔術と呼ぶには雑すぎた。
先ず、式と証明が歪な形である。展開された魔術が破壊に転じたのはそのためであろう。
が、万が一、それを知ってでの出鱈目な魔術式なら目の前の少女は明らかに強敵である。無論、目の前にいる少女はその様なことは少しも考えていないのであるが……。
先ほどまで自分と戦っていた少女は、魔術を展開し、瞬時にこの場を脱出した。流石、と言うべきである。
“――先の戦闘で魔力が枯渇したか……。でもまだ!”
足に魔力をトレースし、強化。一時的に人間の足ほど大のバネと見立てた足が、崩れ行く瓦礫を踏み台にして跳ぶ。
右足だけ上がり、他の体の部分は下がっていると云うなんとも見っとも無い姿ではあったが、逃げ切るには恥を捨てるべきである。
そのまま一回転した体の体制を建て直し、再び地面に足を付く。
刹那、
「■■■■――――ッ!」
奇声をあげて、少女が疾風の如く現れる。
「――な」
に、と言う前には遅かった。少女は女の体に馬乗りになった。
魔力をトレースしようにも、体中の魔力は先の強化魔術行使で枯渇している。水に例えるのなら、既に一滴も残っていない。
右手に持っていたはずの大太刀は無い。よく見れば、大太刀は屋上のフェンスに引っ掛かる形であった。
まさに万事休す。
「――」
少女は何も言う事は無く、その赤い目を女に向ける。その視線に、女の背筋が凍る。
――それは、女が見たことも無いほど、恐怖と……悲しみに溢れた目――
「な――に、を」
女が嗚咽を漏らしながらそう呟く。
少女は答えない。
変わりに、行動で示した。
少女はその自らの唇を、女の唇に重ねた。
Interlude END
「く……ふぅ」
女の嗚咽が、私と重ねた唇の間から漏れる。
「や――ぁ」
女らしい言葉も漏らす。それだけで、私の背筋は興奮に痺れる。
口の中は、私の液と、女の液が混ざり合い、べとべとする。舌と舌が絡み合い、時折、酸素を補給する際に唇を離したとき、唾液が糸を引く。
女は失神したのか、何回目かの行為の後、虚ろな目を浮かべたまま動かなくなった。
……ち、イッちゃったか――。
私は舌打ちをして、濡れた唇を拭い、女の体を蹴り飛ばす。
ガシャン、と、フェンスにぶつかる女の体。
「ふん」
私は最後に大太刀を取り、その場を後にする。
イッちゃった人間を殺すのは趣味ではない。
階段を下りる。この時間帯に人などいない。こっそりと寮に戻って、この大太刀を仕舞っちまったら、後はリンに任せるさ。
そう思い、私が最後の階段を降りようとしたとき……
「こんばんわ――リン」
そんな声が響いた。
長髪で、その整った顔。
「こんなところで会うなんて奇遇ね。そんな物騒なものをもって……」
記憶に焼きついている。
……リンのヤツ、私にも影響を及ぼすほどこの女を慕っている。
答えない私を見て、女は、
「初めましてかしら? 貴方、リンじゃないでしょう?」
知ってやがる。
知ってやがる。
この女は、私のことを知っている。わたしではなく、私を……
「改めて――こんばんわ、そして初めまして。
わたくしの名前はヒナ……藤咲ヒナ」
月の光に照らされた女、藤咲ヒナは、私の心を虜にするほど、キレイだった――。
夜はまだ……続く。
◇
揃ったのは一二の駒。
その内、七つは既に確定。
一つ目は、自らの欲望を人格とする二重人格破綻者
二つ目は、原罪を贖罪しようとする孤独な者
三つ目は、完全であるが故に、不完全を求める矛盾者
四つ目は、平和を望む性格安定者
五つ目は、世界を担う一人の者
六つ目は、欲求を同姓に求める性的聖者
七つ目は、欲しいものを暴力で手に入れる性格破綻者
かみ合った運命は始まったばかり、
聖なる壁で守られた聖域でキミを待つ――
運命の夜に
* A L I C E *
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