夢を見た。
少女が死んでいく夢を見た。
夢を見た。
少女が笑う夢を見た。
その笑顔を、現実にするために――少女は、何でもするであろう。
最終決戦へのぞむ、ハスミさんに捧げる『美少女翻弄学園伝奇SFファンタジー』小説、ACT 22です。
やばいほどの同性表現が存在しますので、ご注意ください。
レーティング15~17.5くらい。
つきがきれいだ。
「――ぁ」
歩くと、周りにあるのは崩れた瓦礫の世界。真赤に染まったその風景は、さながら人の血を連想させる。
――きれいなこころとからだ。きれいなからだとせいしん。きれいなせいしんとうんめい。きれいなうんめいとかお。きれいなかおと■■――
歩を進めろ。その先にある何かを探して、わたくしはこの地に降り立った。
通称『白銀の地平線』――人類が歩んだ過ちの果てに、その人が辿り着いた確かな答えと、確かな未来。オゾン層など無くなり、石油も何もかも枯渇した死の世界で、あり続けるのは、瓦礫と、白銀に光る太陽の光のみ。
ばちばちと、脳が音を立てる。
故障中……
朦朧とした意識の中、歩く足取りだけは軽い。
砕け散った世界を見つめる目は、赤い。
そして、その赤き目は、同じく、その姿を焼き付ける。
「……」
焼き付ける姿は、黒きコートを纏った、人物。
手入れの足りないボサボサの髪の毛と、血塗れの両腕。倒れる人物には、見覚えがあった。
リン。
止まっている世界には何も無い。
只砕け、消えるだけである。
血の色が濃くなる。流れる血は……赤い赤い赤い赤い赤い赤い赤い赤い赤い赤い赤い赤い赤い……………………怖い怖い怖い怖い怖い…………死にたくない、殺したくない、殺したくない、殺してない、殺してない殺していない………死なないで死なないで死なないで死なないで……
わたくしの、生きる意味を奪わないで。
故障中……
つきがきれいだ。
蠢く魔物は、背中に羽が生えていた。
それを、綺麗な少女と見たのはわたくしの目の錯覚でしょうか?
いえ、その背中に羽の生えた少女は天使の様に綺麗で、綺麗で綺麗で綺麗で綺麗で綺麗で…………………アリスのようだと、だれが思ったであろうか。
フラッシュバックする映像は全てが破壊的壊れていく壊滅的消滅消失犯罪罪世界の崩壊わたくしの崩壊精神的に侵される。
あぁ、この世界は……嫌になる。
男はそう呟いた。
この世界は何なのか……わたくしが取るべき行動は解っている。
リンを救う事だ。
だと云うのに、此処は何処なのか、解らない。
「お前にリンを助ける事が出来るのか?」
男は以前、似たような言葉をわたくしに投げ掛けた。
「耀子を見捨てたお前に、人を守ると云う事は出来るのか?」
それは確かな事。
わたくしは耀子より、リンを守ると決めた。そして、耀子を殺した。
「倒せるのか……? アレを……」
アレとは、あの女性の事を言っているのでしょう。
……倒せない。
「そうだ、アレは藤咲ヒナが敵う相手ではない。それは無論、由香にも、カレンにも言えることだ」
この男は、由香さんとカレンさんを知っている。
それはどうでも良い……わたくしではあの女性には勝てない。取り戻す事が出来ない。
「そうだ、藤咲ヒナではあの敵には敵わない。
……たが藤咲ヒナ……お前は解っているのであろう? アレを倒せる唯一の方法が、藤咲ヒナ、お前にはある」
その言葉を耳に焼き付けた。
「――覚えておけ。お前の先読みは、先を読むことしか出来ないのか? 否――」
■■■
切断。
切断。
切断。
-2 days
「……」
頬をさする。昨日殴られた痕は痣となって残っている。……本当に、痛かったわよ。
歩いて礼拝堂に訪れる。
……まだ、灯りは灯っていない。
これだけが唯一の救い。何のあれがあってか、あの女性はまだリンを殺してはいない。もし、救うのなら、今夜しか無い。
背を向けて礼拝堂を後にする。
準備はしてある。後は夜を待つだけ。『庭園』の方々は――恐らく、間に合わないでしょうね。リミッター指定のシュバリエを送るといっていたけど、待っていられるほど、わたくしは、今日のわたくしは我慢強くは無いわ。
只、あの女性に敵うものなど……只一つとしてない。
礼装も今の魔力だと、一回が限度。
……只気になっているのは、わたくしが今朝視た夢。
あれは確実に、ランスロットの後ろ姿だった。うん、声もまた、ランスロットそのものだった。
頭の中で、もう一度、ランスロットが呟いた言葉を繰り返してみる。
でも、わたくしには理解できない。
解っているはずだ……いいえ、わたくしには解らないわ、ランスロット。アナタがわたくしに言おうとしたことを、わたくしは理解していないもの、識らないもの。知らないことを識ることは出来ないし、行動に移すことだって出来ない。
だけど、一つだけ解ったことがある。
「――少なくとも、わたくしには何かがあると云うことね……」
それだけは胸に秘めて置くわ。
寮に辿り着く。リンの部屋をノックもせずに開ける。
昨夜の件で、望さんは病院に運ばれた。かなりの怪我で、当分は動く事も出来ないらしい。
「それで? ヒナさんは今夜にもリンを助けに行くと?」
由香さんが真剣な顔でわたくしに言葉を投げ掛ける。
「ええ。もう、今夜しか無いわ。これ以上待てば、リンが殺されるかも知れないわ」
わたくしのその肯定の言葉に、
「でも、わたくし達はゴルディアン・コフィンの恩恵を失っていますし、あの女性が何処に行ったかも解りません。それなのに、一体如何すると言うんですか?」
カレンさんが問うた。
「その件は大丈夫……わたくしにはわかるから」
その言葉に、
「それは何処よ」
由香さんが返す。
「――商店街の外れ……公園――」
誰の記憶かは解らないけど、わたくしには、そう断言できる確かな何かがあった……
■■■
切断。
切断。
切断。
時刻は夕刻を回ろうとした。
「……問題は、魔力ね」
唐突に由香さんが言い始めた。
「あんな出鱈目な女性と戦うのよ。今のままの魔力じゃ確実に殺されるわよ」
それはそうだ。
でも、魔力はそう簡単に生成されるものでもないし、もてる魔力保有量を完全に満たすまでには、数週間は掛かる。それ以下の期間では完全回復は難しい。
「でも、私達の誰かが、あの女性に勝てると云う保障はありませんし……」
カレンさんが呟く。
確かに、リンを助けに行くと云っても、この三人のうち誰かがあの女性に勝てると云う保障も無いわ。それに、問題はあの女性だけが敵かどうか、と云うこと。もし、他にも居るのだったら、わたくし達に先ず勝ち目は無い。
「私が思うに、あれはヒナさんの方が倒せる確率高いと思うのよね」
……それは何故?
「私達は確かに、戦闘に向いている魔術は会得しているわ、ヒナさん以上にね。だけどあの女にはそんなもの通用しないでしょ?
でもヒナさんなら、ある程度相手の攻撃を予測して、避ける事が出来る。
なら、ヒナさんがあの女を翻弄して、その隙に、私たちが礼装をつかばいいのよ、OK?」
「……無茶苦茶な作戦ですけれども……その場合、あなた達も魔力を残さなくてはならないのではなくて?」
「それはそうよ。でも、私の礼装は魔力ゲージ二桁で済むから」
……随分な表現の仕方だけれども……まぁ、いいでしょう。
「私の礼装は魔力を使いません」
カレンさんはそう言った。
「嘘! そんな礼装が存在するの!?」
「――正確には、私の礼装は此の場にはありません。詳しい事は諸事情で言えませんが、兎に角、私の礼装行使に魔力は必要ありません」
カレンさんのその態度は気になったけれども、言いたくない事を無理に言わせる必要もないので、わたくしは次の話題に行く事にした。
「それは置いておいて、本題に入ると、手っ取り早い話――
私達の魔力を、ヒナさんに吸わせると云う事よ」
思考停止。
………………………………え?
ちょっ、ちょ……待ってくださ――! 魔力を相手側に移植することは、不可能で、それにそんな芸当、吸血鬼にしかできるはずが……勿論、只一つの例外を除いて。
まさか、その例外を、しししし、使用するとは言いませんわよね!!!?
顔が真赤になるわたくしとカレンさんを放っておいて、由香さんは時計を見た。
「七時半か……時間も無いわね」
徐に立ち上がって、部屋の鍵をがちゃんとしめて、部屋の窓の鍵を全て……閉じていく。
……ほほほほほ!! 本当に……すすす、する気ですの!!?
「当り前よ! 私だって出来ればしたく無いわよ! でも、リンを助けるにはそれしかないんだからっ!」
一つに纏めていた、ポニーテールの髪の毛を、由香さんは髪ゴムを取る事によって崩した。
「さぁ――あんた達も………………服、脱ぎなさい――」
思 考 停 止 … … 。
■■■
切断。
切断。
開放。
商店街のアーチ。
時刻はもうそろそろ日付が変わろうとしている。
わたくし達は、商店街のアーチに立っていた。
この向こう側には、リンが居るのでしょうね。
足が重い。
行ったら、帰ってくる保障は無い。
「引き返すなら、今のうちよ」
由香さんが、言った。
――そんな事は、するわけ無いじゃない。
だってわたくしは、もう誓ったもの。
リンを、もう離さない、と――
ポケットに入れておいた、凛のナイフを手に取る。
そして、アーチを潜った。
「――良くぞ来た。
この因果捻じ曲がる空の世界へ……――」
悪夢
そこで待ち受けていたのは―――――上川強気と云う……少年だった。
* A L I C E *
この記事にトラックバックする